山形県の酒田市に「グリーンハウス」という映画館があった。当時酒田市にはいくつかの映画館があったが、邦画の映画館と洋画の映画館に分かれており、洋画の映画館はグリーンハウスだけだった。その映画館は華やかな雰囲気のある映画館で、しかもこだわりがある映画館であった。酒田市民に愛された映画館であった。
私が中学2年の時に「酒田大火」と呼ばれる大火事があった。酒田市は冬になると強い季節風が吹く。当時も秒速20メートルを超える暴風が吹いていた。その日、グリーンハウスが火元になり、火事が発生した。その日は暴風のせいで次々と延焼した。酒田市中心部の商店街約22万㎡を焼失してしまう大火事になった。しばらくして火事の後を見に行くと、街の中心街がすべてなくなっていた。ものすごい喪失感であった。
そのグリーンハウスと縁のあった人たちがグリーンハウスの思い出を語るドキュメンタリー映画である。私にとってとても感慨深い映画である。おそらく当時酒田市に住んでいた人々にとってみんななんらかの思いのある映画であろう。
地方都市は今と違って活力があり、みんな地元の文化を大切にしていた。今地方は活力を失っている。個性を失っている。地方に活力がなければ国の活力もない。
失ったものの大きさを感じさせる映画だった。