私にとって今期一番よかったドラマは『ハヤブサ消防団』だった。地方の過疎化やカルト集団を題材として、現代人の心の中の闇をあばいていく作品であった。とはいえ、難しい展開にはならずに、事件がつぎつぎと起こる中で次第に真相が見えてくるという構成になっていた。原作がしっかりとしているからであろう。しかもその原作を丁寧に描こうとしていた。
役者もバラエティに富み、みんながそれぞれ自分の役柄を演じきっていた。中村倫也と川口春奈の主役のふたりはこまかな心の動きをしっかりと演じていた。麿赤兒や村岡希美の「怪優」が存在感を示し、ドラマにアクセントをつけていた。
そして何よりも生瀬勝久、橋本じゅん、満島真之介、岡部たかし、梶原善の消防団員がよかった。今はもう無くなった、田舎のめんどくさい男の集まり。その雰囲気がよく出ていた。面倒だけどああいう人間関係って実はよかったんだよなと感じてしまう。自分の居場所がそこにあるのだ。
居場所を見失った人間は居場所を求める。そこにカルト集団がつけ込んでくる。孤独な人間を生み出す現代社会の病理を見事に描き出すドラマだった。