ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

岩屋戸ダム

2021-10-29 16:05:21 | 宮崎県
2021年10月18日 岩屋戸ダム
 
岩屋戸ダムは左岸が宮崎県東臼杵郡椎葉村下福良、右岸が同村松尾の二級河川耳川上流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、1929年(昭和4年)の西郷ダム・田代発電所(現西郷発電所)を手始めに山須原ダム・山須原発電所、塚原ダム・塚原発電所が建設されました。
そして同社が最後に手掛けたのが岩屋戸ダムですが、完成直後の1941年(昭和16年)に日本発送電に接収されたのち、1951年(昭和26年)の電気事業再編により九州電力が事業継承しました。
ここで取水された水は岩屋戸発電所(最大出力5万2000キロワット)に導水されダム水路発電を行います。
 
国道327号線の尾平トンネル手前で左手の旧道に入ると左手に岩屋戸ダムが姿を現します。
残念ながら左岸が姿を隠したままですが、右岸の導流壁に沿って流下する放流水が白糸のような美しさです。
すり鉢状の減勢工など当時の発電ダムの典型的スタイルとなっています。
 
フェンスと草木に阻まれ下流面はこれが限界。
 
ゲートをズームアップ
ダムカードの文章を借りれば『斜めに整列しているピアが美しい』
 
水利使用標識とバス停。
残念ながらバス停名はダム名ではありません。
ダム便覧では有効貯水容量は635万8000立米となっていますが、堆砂が進み現在は362万3000立米。
2005年(平成17年)の台風14号の影響が大きいようです。
 
天端入り口にチェーンが架かり立ち入り禁止。
 
上流面
塚原ダム同様、取水口がクレストゲートと並んでいます。
 
取水口をズームアップ。
 
ラジアルゲートをズームアップ。
 
総貯水容量は635万8000立米。
 
こちらは戦後に増設された第二取水口。
 
施工は塚原と同じ間組。
完成後に日本発送電による接収が決まっていた中で九州送電(株)の意地で建設された岩屋戸ダムです。

2811 岩屋戸ダム(1727) 
左岸 宮崎県東臼杵郡椎葉村下福良
右岸         同村松尾 
耳川水系耳川 
 
 
57.5メートル 
171メートル 
8309千㎥/3623千㎥ 
九州電力(株) 
1938年

塚原ダム(古園ダム)

2021-10-29 08:23:35 | 宮崎県
2021年10月18日 塚原ダム(古園ダム)
 
塚原(つかばる)ダムは左岸が宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山、右岸が同郡美郷町西郷三ヶの二級河川耳川上流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、1929年(昭和4年)の西郷ダム・田代発電所(現西郷発電所)、1931年(昭和6年)の山須原ダム・山須原発電所に次いで1938年(昭和13年)に完成したのが塚原ダムです。
ここで取水された水は塚原発電所に導水され最大6万7050キロワットのダム水路発電が稼働しました。
塚原ダムを始めとした耳川水系の発電施設は日本発送電の接収を経て、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しました。
 
塚原ダムの施工は『ダムの間』と称された間組(現安藤ハザマ)が担い、可動クレーンなどを用いた当時の世界最先端レベルの機械化施工が行われるとともに、玉石モルタルに替えて日本で初めて硬練りコンクリートによる打設が行われました。
また堤高87メートルは戦前着工ダムとしては最高を誇り、塚原ダムの成果が戦後の佐久間ダムへとつながったとも言われています。
これらの点を評価して大ダムとしては小牧ダムに次いで登録有形文化財に指定されるとともに、経産省による近代化産業遺産、Aランクの近代土木遺産にも選定されています。
 
諸塚村中心部から国道327号を西へ3キロ超走ると左手に半身の塚原ダムが姿を見せます。
『早く全景を見てみたい』と心が急かされます。
 
次のコーナーを曲がると期待に違わぬ景色が目の前に現れます。
クレストにずらっと並ぶラジアルゲートと戦前のダムでは珍しい直線状の導流壁
何よりも87メートルの堤高がこれが戦前のダムであることを忘れさせます。
 
2005年(平成17年)の台風14号では下流で大規模な山体崩落が発生し天然のダム湖が出現、塚原ダムのゲート近くまで水位が上昇したそうです。
 
クレストに並ぶ8門のクレストゲート
2009年(平成11年)にかけてゲートの改修が行われました。
 
クレストゲートに並んで設置された取水ゲート
凹凸になった天端高欄は万里の長城を模したと言われていますが、ゲート脇の小塔はむしろ西洋の城壁にも見えます。
一方恐竜の手のような逆S字の二本の空気孔が、ダムの堅牢な表情をほぐしています。
 
宮崎あるあるのダム名のついたバス停がここにもあります。
古園は塚原ダムの別名、でも円堤じゃなくて堰堤でしょ?
 
ダムの敷地は立ち入り禁止
管理事務所の背後にあるのはバットレスのバッチャープラント跡。
 
門扉には近代化産業遺産と登録有形文化財のプレート。
 
水利使用標識
ダム便覧では有効貯水容量は1955万5000立米となっていますが、その後堆砂が増え現在は1763万3000立米まで減っています。
 
上流面
奥にゴミや流木を取り除く作業船、手前に巡視艇が繋留されています。
 
発電用ダムと言うことでほぼ満水。
ダム湖の総貯水容量は3432万6000立米。
 
こちらはダムの下流2キロちょっとにある塚原発電所
Bランクの近代土木遺産です。
 
閣下と呼ばれる上椎葉ダムの下流にあるため、どうしても前座的な目で見られがちな塚原ダムですが、このダムの成果が戦後の佐久間ダムや黒部ダムへと続いたことを鑑みれば大ダムで2基しかない登録有形文化財指定も納得です。

2808 塚原ダム(古園ダム)(1726)
近代化産業遺産
左岸 宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山
右岸      同郡美郷町西郷三ヶ
耳川水系耳川
87メートル
215メートル
34326千㎥/17673千㎥
九州電力(株)
1938年

諸塚ダム

2021-10-28 23:54:19 | 宮崎県
2021年10月18日 諸塚ダム
 
諸塚ダムは宮崎県東臼杵郡諸塚村家代の耳川水系柳原川にある九州電力(株)が管理する発電目的の中空重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編で誕生した九州電力は戦後の復興や高度経済成長による電力需要拡大に対処するため積極的な電源開発を進めます。
耳川水系では1955年(昭和30年)に上椎葉ダムと上椎葉発電所、翌1956年(昭和31年)に大内原ダムと大内原発電所が稼働、そして1960年(昭和35年)に同社初の揚水式発電所として諸塚発電所が完成します。
諸塚発電所と同時に建設されたのが諸塚ダムで、当ダムを上部池、既存の山須原ダムを下部池として最大5万キロワットの混合揚水式発電を行っています。
完成当時は揚水発電所としては日本最大出力を誇り、豊水期に一般水力、渇水期に一般水力および日周期揚水発電を行います。
諸塚ダムは九州で唯一の中空重力式ダムですが、通常中空ダムでは上流面に『タコ足』と呼ばれるスリットが施されます。しかし当ダムは下流面にも5本のスリットが入った下流面開放型を採用した希少な中空ダムです。
 
国道327号線から県道50号新塚原高千穂線に入り柳原川に沿いを約8キロ北上すると諸塚ダムに到着します。
一番の推しが下流面のスリットなんですが、木の枝が邪魔になって…
 
左岸の取水設備と管理事務所
1960年(昭和35年)竣工ということで取水設備はずいぶん大掛かり。
 
ダム名のついたバス停、宮崎あるあるです。
しかし付近に住宅もなく一体だれがこのバス停を利用するのか?
 
堤頂部を真上から俯瞰
ゲート部分がクランクになり下流側に張り出してます。
ダム湖は総貯水容量348万4000立米に対して有効貯水容量は104万1000立米とかなり堆砂が進んでいます。
 
上流面
水位が高く『タコ足』は確認できません。
 
ゲートはラジアルゲート1門。
 
低い位置から下流面を撮ってみます。
相変わらず木が邪魔。
堤体、導流壁、ゲートのハウジングの傾斜が統一された、ユニファイなデザイン。
 
スリット
正面から見てみたい。
 
中空ダムらしく堤頂部からスロープが始まっています。
 
天端
実はこの手前にゲートがあり、この先は立ち入りできません。
 
九州唯一の中空ダム、しかも下流面にスリットがあるのはここだけ。
ダムツーリズムに積極的な九電さんなら、せめてもう少し下流面が見えるように樹木を何とかしていただければ!

2824 諸塚ダム(1725)
宮崎県東臼杵郡諸塚村家代
耳川水系柳原川
HG
59メートル
149.5メートル
3484千㎥/1041千㎥
九州電力(株)
1960年

宮の元ダム

2021-10-28 16:35:50 | 宮崎県
2021年10月18日 宮の元ダム
 
宮の元ダムは宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山の耳川水系七ツ山川にある九州電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編で誕生した九州電力は戦後の復興や高度経済成長による電力需要拡大に対処するため積極的な電源開発を進め、耳川水系では1960年(昭和35年)に同社初の揚水式発電所として諸塚発電所を建設します。
同発電所は諸塚ダムを上部池、山須原ダムを下部池として最大5万キロワットの混合揚水式発電を行いますが、併せて支流七ツ山川に建設されたのが宮の元ダムです。
当ダムは諸塚発電所の発電効率を高めるため、本来同発電所下流で耳川に合流する七ツ山川の水を諸塚ダムに導水するための取水ダムとなっています。
また当ダムは堤高18.5メートルとアーチダムとしては徳島県の高西ダムに次いで日本で二番目に低いダムとなっています。
 
諸塚村家代の国道327号線から国道503号線に入り七ツ山川沿いを約8キロ北上すると宮の元ダムに到着します。
ダムの敷地に沿ってフェンスが設置され、さらに草木が伸びているため堤体の撮影は困難、さらに堤体半分が影になる悪条件。
堤高18.5メートルは基礎地盤からの高さのため、見た目はもっと低くなります。
越流部には切れ目があり、また減勢工には副ダムが設置されていますがいずれうまく撮影できません 。
 
上流から
堆砂がひどく堆砂率は100%近そう。
手前の取水口から約4キロの導水路で諸塚ダムに導水されます。
 
さらに対岸上流に支流の川内川からの導水路吐口があるはずですが、これまた確認できませんでした。

2825 宮の元ダム(1724)
宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山
耳川水系七ツ山川
18.5メートル
87.4メートル
141千㎥/62千㎥
九州電力(株)
1960年

山須原ダム(元)

2021-10-28 08:23:24 | 宮崎県
2021年10月18日 山須原ダム(元)
 
山須原ダム(元)は左岸が宮崎県東臼杵郡諸塚村家代、右岸が同郡美郷町西郷三ヶの二級河川耳川にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、1929年(昭和4年)の西郷ダム・田代発電所(現西郷発電所)、に次いで、1931年(昭和6年)に竣工したのが山須原ダム(元)です。
ここで取水された水は山須原発電所に導水され最大4万1000キロワットのダム水路発電を行います。
当ダムを始めとした耳川水系の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編により九州電力が事業継承しました。
同社は戦後の電力需要増加に対応して1960年(昭和35年)に耳川左支流柳原川に新たに諸塚ダムを建設、同ダムを上部ダム、当ダムを下部ダムとする同社初の揚水式発電所である諸塚発電所(最大出力5万キロワット)を完成させました。
完成当初は揚水発電としては日本最大出力を誇り、豊水期に一般水力、渇水期に日周期の揚水式発電を行う混合揚水式発電所となっています。
 
しかし2005年(平成17年)の台風14号により耳川水系では大量の土砂が河川および貯水池に堆積し、流域の浸水リスクが高まるとともに河川環境の悪化が危惧されました。
これを受け県・九州電力などは耳川の『総合土砂管理』に取りかかり、西郷ダムおよび山須原ダムの『通砂運用』機能付加のための再開発事業に着手します。
事業は2011年(平成23年)に着工され、2018年(平成30年)にまず西郷ダム(再)が誕生、当ダムの再開発も2022年度中に竣工予定です。
再開発事業では、台風などの出水時にダムの水位を下げることで貯水池を本来の川のような状態に近づけ、上流から流下する土砂を下流へ通過させる『通砂運用』を可能にするため、ダムの一部が切り下げられ新たに大型洪水吐ゲートが設置されます。

国道327号線諸塚トンネル手前から山須原ダムを遠望できます。
 
ズームアップしますが、ダムの一部が見えるのみ。
 
場所を変えると、再開発で堤体を切り下げ新たに設置された大型ラジアルゲートが見えました。
 
工事中のため、天端への立ち入りはできません。
中央の大型ゲートを挟んで左右に3門ずつラジアルゲートを備えます。
堤体直上には戦後増設された第二取水口が隣接します。
 
第二取水口をズームアップ。
 
こちらは1931年(昭和6年)の第一取水口。
 
再開発事業は2022年(令和4年)に竣工予定です。
西郷ダム(再)では新たにダム展望広場が設置されましたが、山須原ダムでもぜひ同様の施設が設置されることを期待します。

2807 山須原ダム(元)(1723)
左岸 宮崎県東臼杵郡諸塚村家代
右岸      同郡美郷町西郷山三ヶ
耳川水系耳川
29.4メートル
91.1メートル
4194千㎥/1261千㎥
九州電力(株)
1931年
--------------------
3672 山須原ダム(再)
左岸 宮崎県東臼杵郡諸塚村家代
右岸      同郡美郷町西郷山三ヶ
耳川水系耳川
29.4メートル
91.1メートル
4194千㎥/1261千㎥
九州電力(株)
2011年~
2022年 再開発事業竣工予定

西郷ダム(再)

2021-10-27 23:30:57 | 宮崎県
2021年10月18日 西郷ダム(再)
 
西郷ダム(再)は宮崎県東臼杵郡美郷町西郷小原の二級河川耳川中流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、水系最初の発電施設として1929年(昭和4年)に西郷ダム(元)と田代発電所(現西郷発電所)が建設され最大8000キロワットのダム水路式発電が稼働しました。
西郷ダムを始めとした耳川水系の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編により九州電力が継承、同社は田代発電所を西郷発電所と改称するとともに、戦後の電力需要増加に対応して発電能力を3倍以上の最大2万7100キロワットまで増強しました。
 
しかし2005年(平成17年)の台風14号により耳川水系では大量の土砂が河川やダム湖に堆積し、流域の浸水リスクが高まるとともに河川環境の悪化が危惧されます。
これを受け県・九州電力などは耳川の『総合土砂管理』に取りかかり、当ダムおよび山須原ダム『通砂運用』機能付加のための再開発事業に着手し、2018年(平成30年)に新生西郷ダム(再)が誕生しました。
再開発事業では、台風などの出水時にダムの水位を下げることで貯水池を本来の川のような状態に近づけ、上流から流下する土砂を下流へ通過させる『通砂運用』を可能にするため、ダムの一部が切り下げられ新たに大型洪水吐ゲートが設置されました。
 
西郷ダム(再)は国道327号線沿いにあります。
『永遠の鐘』と名付けられたホイストクレーンのカバーがダムのシンボル
中央のローラーゲート2門が堤体を切り下げ新たに設置されたゲートです。
出水時にはこのゲートを開放して、川底に近い位置で放流することで土砂も併せて流下させます。
いわば、主ゲートが巨大な排砂ゲートです。

 
アングルを変えて、
ゲートは計5門、左奥に見えるのは取水ゲート。

 
左岸の魚道
河川維持放流はこの魚道を使い行われています。

 
同じく左岸には低水放流用のバルブがあります。


再開発に併せて国道沿いの右岸ダムサイトがダム広場として整備され、ダムのシンボルである鐘型クレーンカバーである『永遠の鐘』のモニュメントが置かれています。
この鐘は自由に鳴らすことができます。

竣工記念碑。
 

広場のベンチには同じく再開発事業で切り出された山須原ダムのコンクリートが使用されています。


九州電力のダムとしては珍しく、天端は開放。

  
『永遠の鐘』をズームアップ。
実際にはホイストクレーンのカバーで鐘が鳴らされることはありません。


ダムの下流。


貯水池の総貯水容量245万2000立米ですが2018年(平成30年)現在の堆砂量は74万1000立米。


右岸に取水口が二つあります。
右が1929年(昭和4年)からの第一取水口。左手が戦後の発電所増強により増設された第二取水口。

左岸の魚道。


全国で初めてとなる『通砂運用』機能を付加する、再開発が行われた西郷ダム(再)で、上流の山須原ダムでも同様の再開発が2022年(令和4年)に竣工しました。
山梨県の雨畑ダムで堆砂による浸水被害が問題化するなど、ダムの堆砂はダムの寿命や流域の河川環境にもかかわる重要なテーマです。
西郷ダムの成果は今後多くのダムでフィールドバックされてゆくに違いありません。

2804 西郷ダム(元)
宮崎県東臼杵郡美郷町西郷小原
耳川水系耳川
20メートル
84.5メートル
2452千㎥/1222千㎥
九州電力(株)
1929年
----------------
3671 西郷ダム(再)(1722)
宮崎県東臼杵郡美郷町西郷小原
耳川水系耳川
20メートル
84.5メートル
2452千㎥/1222千㎥
九州電力(株)
2018年 再開発竣工

大内原ダム

2021-10-27 16:06:21 | 宮崎県
2021年10月18日 大内原ダム
 
大内原(おおうちばる)ダムは宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代の二級河川耳川下流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編で誕生した九州電力は戦後の電力需要拡大に対処するため積極的な電源開発や既設発電施設の再開発を進めます。
耳川では1955年(昭和30年)に日本初の本格的アーチダムとなる上椎葉ダムと上椎葉発電所が完成、次いで翌1956年(昭和31年)に竣工したのが大内原ダムで大内原発電所で最大1万6000キロワットのダム式発電を行っています。
同発電所は耳川水系では唯一のダム式発電所です。
 
日向市から国道327号線を西進、美郷町との境界線すぐ先に大内原ダムがあります。
ダム全景を望めるスポットはなく、下流からはこれが精いっぱい。
写真ではゲートが3門しか見えませんが、全部で6門のローラーゲートを備えています。

 
ダム直下からもチャレンジしますがここまで。

 
ダム・発電所構内はすべて立ち入り禁止のため国道からフェンス越しの撮影となります。
こちらはダムに隣接した大内原発電所
耳川水系では唯一のダム式発電所です。


発電所を上流から
直上に開閉所があります。


手前2門が取水ゲート、奥にダムのピアが見えます。

 
取水ゲートを上流から。

 
ダムの上流面。
右手が除塵機がついた取水口。

 
ズームアップ
ピアにはアーチ状の鉄骨トラス製管理橋が架かっています。
同じようなトラス橋は中部電力名倉ダムでも見られました。

 
水利使用標識。

 
大内原ダムの標柱。

 
(追記)
大内原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2817 大内原ダム(1721)
宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代
耳川水系耳川
25.5メートル
152.6メートル
7488千㎥/1239千㎥
九州電力(株)
1956年

木之川内ダム

2021-10-25 16:14:04 | 宮崎県
2021年10月17日 木之川内ダム
 
木之川内(このかわうち)ダムは宮崎県都城市山田町山田の大淀川水系木之川内川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
都城盆地は広く霧島の火山堆積物で形成され、透水性が高く水利に乏しいため零細な畑作営農を余儀なくされていました。
1987年(昭和62年)に農水省による国営都城盆地かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2009年(平成21年)に完成したのが木之川内ダムです。
事業全体も2012年(平成24年)に完了し約4000ヘクタールに及ぶ畑地の灌漑設備が整備され農業経営の大規模化や採算性向上が図られています。
管理は都城市が受託しています。
 
県道42号都城野尻線に木之川内ダムを示す案内板があり、これに従うとダムに到着します。
下流から
堤体越しに霧島連峰の高千穂峰が頭を出しています。

 
左岸から下流面
堤高64.3メートル、堤頂長409.7メートルと西日本の農業用ロックフィルダムとしては相当のスケール。 
完成から10年ちょっとしかたっていないのにリップラップにはかなりの草が生えているのはちょっと残念。

天端は徒歩のみ開放。

 
ダムサイトの水利使用標識
流域面積23.5平方キロのうち8割弱の18.4平方キロが水利権のある庄内川からの導水に依ります。
かんがい面積は4000ヘクタール弱の畑地で、年間を通して水利権が配分されています。

 
総貯水容量は627万立米
貯水池越しの高千穂峰は本当に絵になります。
この眺めが見たいがために、当ダムの訪問は快晴を選びました。

 
ズームアップ。

 
右岸から下流面
洪水吐導流部が長く伸びます。

 
減勢工と放流設備・調圧水槽
受益地への供給はパイプラインが使われます。

洪水吐。


横越流式洪水吐。
 

上流面。


左岸の管理事務所、斜樋。

 
洪水吐を上流側から
白い敷石が青空に映えます。

 
ダムからの高千穂峰の眺めは秀逸です。
これだけの眺望なら観光スポットとしての活用法もあるんじゃないかと思うんですが、農業用施設だけいろいろ問題があるのでしょう。
でも本当にいいダムです。
 
(追記)
木之川内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2848 木之川内ダム(1715)
宮崎県都城市山田町山田
大淀川水系木之川内川
64.3メートル
409.7メートル
6270千㎥/6010千㎥
都城市
2009年
◎治水協定が締結されたダム

綾南ダム

2021-10-25 08:35:13 | 宮崎県
2021年10月17日 綾南ダム 
 
綾南ダムは宮崎県木林市須木下田の大淀川水系本庄川(綾南川)にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、本庄川(綾南川)の洪水調節、宮崎県企業局綾南発電所南機での最大1万3000キロワットのダム水路式発電を目的として1958年(昭和33年)に竣工しました。
 
小林市中心部から国道265号線経由で約21キロ、30分のドライブで綾南ダムに到着します。
ダム湖南岸を通る県道26号線沿いに展望スポットがあり、ダムを俯瞰できます。
クレストにラジアルゲート2門を装備、左岸が屈曲しています。
注目すべきはゲート巻き上げ機を被覆するコルゲートパイプを利用したチューブ状のシェルター
同じ宮崎県営ダムの松尾ダム渡川ダムでも同様のシェルターが設置されています。

左岸が屈曲。 
 
アングルを変えて 
対岸に管理事務所があり、宮崎県ダムではおなじみ民間委託の管理人さんが住み込みで駐在されています。 

天端親柱の『綾南堰堤』の銘版。 
 
 
こちらは諸元プレート。
 
奥に巡視船繋留用の浮桟橋が見えます。
さらに右奥、白い点が見えるところに綾第一発電所への取水口があります。
 
天端は車両通行可能
コルゲートパイプのチューブ状シェルターは巨大な猪用の罠のようです。
このシェルター、ダム完成直後からあったものではなく平成に入ってから後付けされたようです。
 
天端から減勢工
水中に没していますが副ダムが見えます。
 
ダム湖は『小野湖』
ダム湖は縦に長く続き総貯水容量は3800万立米。
 
管理事務所。
 
左岸から下流面。
 
ダム下から見れる場所がないなど見学スポットは少ないのですが、右岸高台からの屈曲したダムの俯瞰は個人的には非常に好みのアングルでした。
 
(追記)
綾南ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2819 綾南ダム(1714)
宮崎県小林市須木下田
大淀川水系本庄川
FP
64メートル
194.2メートル
38000千㎥/33900千㎥
宮崎県県土整備部
1958年
◎治水協定が締結されたダム

浜ノ瀬ダム

2021-10-24 23:42:57 | 宮崎県
2021年10月17日 浜ノ瀬ダム 
 
浜ノ瀬ダムは左岸が宮崎県小林市須木島田町、右岸が同市東方の大淀川水系岩瀬川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
西諸地区は火山活動による火砕流台地であるシラス台地が広がり、地味は豊かながら水利に乏しく、生産性向上のため灌漑設備の整備が強く求められていました。
1996年(平成8年)に農水省による国営西諸地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2014年(平成26年)に竣工したのが浜ノ瀬ダムです。
事業全体も2018年(平成30年)に完了し西諸地区約4100ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されました。
ダムの管理は西諸土地改良区が受託し、ダム完成に合わせて河川維持放流を利用した浜ノ瀬ダム発電所(最大出力1790キロワット)の小水力発電も稼働しています。
 
小林市中心部から国道265号線経由で約25キロ、40分のドライブで浜ノ瀬ダムに到着します。
左岸高台に展望台があり、ダムや貯水池を俯瞰できます。
このダムもシラス地帯に位置するためか?ダムを囲む山留にかなりの苦労がうかがえます。

 
同じ位置からカメラをずらすと
クレスト自由越流頂7門と漸縮型堤体導流壁といういかにも農水省のダムらしいフォルム。
総貯水容量は1030万立米と西日本の農業用ダムでは屈指のスケール。
左岸に大きな駐車場があります。
気になるのは写真右手、湖岸の地滑り。

 
新しいダムですが、上記地滑りの影響で濁水が発生しており導流部がかなり汚れています。

堤体から減勢工に続く導流壁のデザインがちょっと愛媛の志河川ダムに似ている。

 
水利使用標識
かんがい面積は4162ヘクタールとかなり広大
受益農地の大半が畑地のため年間を通じて水利権が配分されています。

下流面。

 
左岸から減勢工
高台の建屋は調圧水槽、下段右手が放流設備で左が浜ノ瀬ダム発電所。

上流面と四角い取水設備

 
天端から下流を見下ろします。
減勢工はシュートブロックとエンドシルの組み合わせ
右手手前が放流設備で奥が小水力の浜ノ瀬ダム発電所
小水力とはいえフランシス水車2基で最大1790キロワットの電気をたたき出します。
右手高台の建屋は調圧水槽。

 
総貯水容量は農業用ダムとしては屈指の1000万立米越え。
正面で地滑りが起きています。

天端は徒歩のみ開放
左岸には管理事務所と繋留施設
管理事務所には職員さんが常駐され管内は立ち入り禁止ですが、裏側のきれいなトイレは開放されています。

 
右岸から
特徴的な堤体導流壁に目が向きます。
やはり志河川ダムに似てる。

 
ダム周辺の山留や湖岸の地滑りなどを見ると厄介な地盤のダムであることが伺えます。
総貯水容量1030万立米ですが、農業用ダムとしては大きな2080万立米の堆砂容量が設定されているのも、そのあたりの事情を受けてのものなんでしょう。
 
(追記)
浜ノ瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3231 浜ノ瀬ダム(1713)
左岸 宮崎県小林市須木島田町
右岸     同市東方
大淀川水系岩瀬川
62.5メートル
183メートル
10300千㎥/7500千㎥
西諸土地改良区
2014年
◎治水協定が締結されたダム

大淀川第二調整池

2021-10-24 15:30:01 | 宮崎県
2021年10月16日 大淀川第二調整池 
 
大淀川第二調整池は宮崎県宮崎市高岡町浦之名にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
大淀川では電気化学工業(現デンカ)及び同社傘下の大淀川水力電気により電源開発が進められ、1925年(大正14年)の大淀川第一発電所に次いで1931年(昭和6年)に高岡ダムおよび大淀川第二発電所が完成しました。
併せて第二発電所の上部調整池として同年完成したのが当調整池で、大淀川の高岡ダムで取水された水がいったんここで貯留されたのち発電所に送られます。
一連の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しています。
 
大淀川第二調整池には九州電力関連企業のリサイクルセンターが隣接しています。
同センターも含めて敷地全体が立ち入り禁止。
 
これがダムの堤体。
 
さらにズームアップ。
放流ゲートの操作バルブが見えます。
 
リサイクルセンターも厳重にガード
ダムで捕捉した流木などの処理を行うようです。
 
フェンス際に建つ『第二調整池ダム』の標柱。

2805 大淀川第二調整池(1712)
宮崎県宮崎市高岡町浦之名
21.8メートル
149.1メートル
242千㎥/230千㎥
九州電力(株)
1931年

広沢ダム

2021-10-24 07:29:11 | 宮崎県
2021年10月16日 広沢ダム
 
広沢ダムは宮崎県東諸県郡綾町南俣の大淀川水系浦之名川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
大淀川左岸地区の農地は火山灰土壌で形成された畑地帯と沖積平野の水田に二分されますが、共に水利に乏しいため生産性が低く灌漑設備の整備が強く求められていました。
1978年(昭和53年)に農水省による国営大淀川左岸地区土地改良事業が着手され、その灌漑用水源として2000年(平成11年)に広沢ダムが完成しました。
土地改良事業も2005年(平成17年)に竣工し、3市町村にまたがる約1300ヘクタールの農地に灌漑用水が供給されています。
またダムは運用開始後、宮崎市・小林市・綾町が受託管理者となっていますが実際の管理は宮崎市に委任されています。
 
宮崎と小林を結ぶ国道268号線えびのスカイラインに広沢ダムへの案内板があり、これに従って浦之名川沿いを北西に約7キロ進むと広沢ダムに到着します。
堤高62.7メートル、堤頂長199メートルと農業用ダムとは思えない立派な堤体。
クレストには自由越流頂11門がずらっと並び、農業用ダムでは珍しく両岸に堤趾導流壁を備えています。

 
ダム下の調圧水槽。

 
左岸から
逆光で露出が難しい

 
天端親柱の不思議な彫刻?
何をモチーフにしたんでしょう?

 
左岸ダムサイトの水利使用標識と水神。

 
上流面
巨大な四角形の取水設備。

 
天端からダム下を見下ろすと
減勢工にはバッフルピアが2列、さらにその下流に副ダムがあります。
よく見ると背の高い副ダムの向こうにもう一つ副ダムが。
その下流には河川維持放流を利用した小水力発電所があります。


大淀川左岸土地改良区が管理する広沢ダム発電所
利水放流を利用する小水力発電所ですが、有効落差55.8メートルを生かし最大出力640キロワットと小水力とは思えない出力を誇ります。


高台の管理事務所。

 
天端は車両通行可能。 
右岸の林道へと続きます。

農業用コンクリートダムでは堤体導流壁が多いのですが、ここは堤趾導流壁。

 
右岸から上流面
11門のクレスト自由越流頂が並びます。

 
ダム湖は総貯水容量510万立米
ダム便覧では水上スキーのメッカと記されていますがその気配はなし。


 (追記)
広沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2838 広沢ダム(1711)
宮崎県東諸県郡綾町南俣
大淀川水系浦之名川
62.7メートル
199メートル
5100千㎥/3800千㎥
宮崎市(小林市・綾町より管理を委任)
2000年
◎治水協定が締結されたダム

瓜田ダム

2021-10-23 23:08:09 | 宮崎県
2021年10月16日 瓜田ダム 
 
瓜田ダムは宮崎県宮崎市高岡町小山田の大淀川水系瓜田川にある宮崎県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、瓜田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的として1998年(平成10年)に竣工しました。
ダムのある宮崎市高岡町には17世紀初頭に島津氏が建設した天ヶ城址があり1994年(平成6年)に模擬天守が作られました。
瓜田ダムも模擬天守建設と同時期のためか?管理事務所は城郭風、天端は石敷き、高欄は石垣風の化粧型枠が施されるなど色をテーマにした意匠が多くなっています。
またダム直下には夏季限定営業ですが100メートルのウォータスライダーなどを擁する瓜田自然プールが開設され親子連れの人気スポットになっています。
 
ダムの下流面
クレスト自由越流頂4門、自然調節式オリフィス1門のゲートレスダムです。

 
ダム左岸にある城郭風の管理事務所
城郭風というよりもこれはもう『城』。
宮崎県営各ダム同様、当ダムでも住み込みの管理人さんが常駐しておりこちらはさしずめ『城主』。

 
左岸ダムサイトは小さな公園になっており、各種石碑が並びます。

 
天端は徒歩のみ開放 
照明や高欄も凝ったデザイン、足元も石敷き風の化粧型枠が使われています。 
 
石碑は九州ではおなじみ金箔文字。 
 
 
上流面
これで常時満水位


減勢工と放流設備。

 
アングルを変えて
放流設備も武家屋敷風
写真正面奥に夏期限定営業の瓜田自然プールがあり営業期間中はダム下にも立ち入れるようです。

 
貯水池は総貯水容量74万立米
治水ダムですが目的がFNなので不特定利水及び堆砂容量分が貯留されています。

 
右岸から。


天端越しに
こちらから見ると本当の城跡の様。


上流面。
取水設備が見当たりませんが、どうやら城の向こう側にあるようです。

 
城郭風の管理事務所はもとより天端の意匠にも結構お金をかけています。
ダム建設着工は1992年(平成4年)なので、バブルの余韻が残り無駄なことにお金を使う余裕があったんでしょう。
 
(追記)
瓜田ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2841 瓜田ダム(1710)
宮崎県宮崎市高岡町小山田
大淀川水系瓜田川
FN
42メートル
160.4メートル
720千㎥/620千㎥
宮崎県県土整備部
1998年
◎治水協定が締結されたダム

東原調整池

2021-10-23 17:06:17 | 宮崎県
2021年10月16日 東原調整池
 
東原(ひがしばる)調整池は宮崎県西都市穂北、右岸が同市茶臼原にある灌漑目的のアースフィルダムです。
農水省による国営一ツ瀬川かんがい排水事業の農業調整池として1980年(昭和55年)に竣工、運用開始後は一ツ瀬川土地改良区が管理を受託しています。
自己集水域を持たない河道外貯留方式の農業調整池で、一ツ瀬川の杉安ダム湖にある杉安取水口及び支流の瀬江川頭首工で取水された水をいったん当調整池に貯留したのち、約3500ヘクタールの水田・畑地に灌漑用水を供給します。 
ダム建設地点は透水性の高い火山灰土壌となっており、建設に際しては透水対策として貯水池全面を難透水性材料で被覆するブランケット工法が採用されました。
 
ダム下流から
ここから見る限りは普通のアースフィルダム。

下流面は上段と下段で草刈り時期を変えているのか?緑と茶色のツートンカラー。

天端からの眺め。

右岸ダムサイトから
堤体は貯水池の南側から東側にJの字に盛り立てられ堤頂長は303メートルに及びます。


右岸ダムサイトに建つ竣工記念碑。
輪切りのダクタイル鋳鉄管が使われています。

天端
調整池の周りは舗装された周回路になっていますが天端から東部分は車両進入禁止。
周回道路は公式の自転車ロードレース会場として使われます。


貯水池は総貯水容量99万8000立米ですべて一ツ瀬川および瀬江川からの導水で賄っています。
透水性が高い地盤のため貯水池全面が難透水性材料で被覆されています。

用水管理センターを兼ねた土地改良区事務所。


土地改良区事務所入り口わきのモニュメント。
幹線水路で使用された実物のダクタイル鋳鉄管が並びます。

 
右岸にある一ツ瀬川からの杉安導水路流入口。
山の西側の中原ポンプ場から揚水して貯留されます。

 
こちらは調整池北側の瀬江川導水路流入口。

 
調整池の西850メートルにある中原ポンプ場
東原調整池と標高差が約120メートルあり、ここからポンプアップして調整池に貯留します。

河道外貯留ダムのためか?洪水吐は見当たりませんでした。

2836 東原調整池(1709)
左岸 宮崎県西都市穂北
右岸     同市茶臼原
一ツ瀬川水系一ツ瀬川
21メートル
303メートル
998千㎥/910千㎥
一ツ瀬川土地改良区
1980年

松尾ダム

2021-10-23 10:02:41 | 宮崎県
2021年10月16日 松尾ダム
 
松尾ダムは宮崎県児湯郡木城町中ノ又の一級河川小丸川中流部にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1935年(昭和10年)に内務省は河川総合開発の先駆となる『河水統制事業』を採択し全国で治水・利水を一貫した河川開発が実施されることとなりました。
宮崎県では1938年(昭和13年)に県電気建設部により小丸川の治水と発電を目的とした『小丸川河水統制事業』が採択され、4基のダムおよび発電所の建設が着手されました。
このうち浜口ダム(現川原ダム)と川原発電所、戸崎ダムと石河内第二発電所は1940年(昭和15年)に完成しますが直後に日本発送電に接収され、電気事業再編成により1951年(昭和26年)に九州電力が事業を継承しました。 
ついで当ダムおよび石河内第一発電所が1939年(昭和14年)に着工されますが戦況悪化により事業は中断、戦後国庫補助を受けて事業が再開され1951年(昭和26年)に完成しました。
松尾ダムは小丸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、宮崎県企業局石河内第一発電(最大2万2200キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
小丸川河水統制事業は1956年(昭和31年)の渡川ダムおよび渡川発電所の竣工をもってすべて完了に至りますが、日本発送電の接収もあり石河内第一発電所は宮崎県企業局、第二発電所は九州電力と同水系の同名の第一発電所と第二発電所で事業者が異なる結果となりました。
 
下流の戸崎ダムから県道22号線を北上すると松尾ダムに到着します。
途中樹間からダムを垣間見れますが、写真撮影に耐えるものではありません。
下流面もダム手前のこれが精いっぱい、落葉すれば少しは視界がよくなるんでしょう。
 
ダムサイトからもフェンス越しの撮影となります。
クレストにはラジアルゲート10門を擁していますが見るすべはありません。
天端は渡川ダム綾南ダム岩瀬ダムなど宮崎県営ダムではおなじみ、コルゲートパイプを利用したチューブ状のシェルターで被覆されています。
 
堤頂部をズームアップ。
 
天端
高欄はダイダイゴケなどで茶色に変色、時代感に拍車がかかります。
 
上流面。
 
もう少し上流に行けばゲートを見ることができたのですが、訪問時は管理事務所の改修工事のため叶いませんでした。
 
こちらは石河内第一発電所への取水ゲート
これまた木に邪魔されます。
 
宮崎県営ダムは見学には厳しいダムが多いのですが、ここもその一つ。
もりみず旬間等で見学会など実施していただければいいのですが?
 
(追記)
松尾ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2814 松尾ダム(1708)
宮崎県児湯郡木城町中ノ又
小丸川水系小丸川
FNP
68メートル
165.5メートル
45202千㎥/33699千㎥
宮崎県県土整備部
1951年
◎治水協定が締結されたダム