ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

八戸ダム

2021-06-01 16:15:22 | 島根県
2021年5月22日 八戸ダム
 
八戸(やと)ダムは島根県江津市桜江町八戸の江の川水系八戸川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、八戸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、江津市・大田市への上水道用水の供給、岩見臨海地区の工場群への工業用水の供給、島根県企業局八戸川第1発電所(最大6000キロワット)及び第2発電所(最大2500キロワット)での水力発電を目的として1976年(昭和51年)に竣工しました。
また2000年(平成12年)には河川維持放流を利用して最大240キロワットの小水力発電を行う八戸川第3発電所が増設されました。
もともと当地には八戸川第1発電所の取水堰である旧八戸ダム(八戸堰堤)がありましたが、新ダムに取り込まれる形で貯水池に水没しており、ダム水位が最低水位(堆砂位)を下回る渇水になると旧ダムが水中から姿をあらわすことがあるそうです。
 
江津市桜江町中心部から県道桜江金城線を西進し、八戸ダムの標識に従って八戸川沿いの南に進むとダムに到着します。
残念ながらダムを下流から正対できる場所はありません。
ダム下第2発電所への管理道路から。
クレストに3門のラジアルゲートを装備、このほか写真では見えませんが常用洪水吐としてコンジットゲート2門があります。
 
右岸から
堤体下にコンジットゲートが見えます。
左手の赤いゲートは取水ゲート。
 
赤が目立つ取水ゲート
コースターゲートになっています。
 
コンジットゲートのデフレクター。
 
水没した峡谷名から桜井湖と命名されたダム湖。
総貯水容量は2680万立米で島根県営ダムでは最大です。
 
右岸の艇庫とインクライン。
 
天端は車両通行可能。
 
ダム下の発電所。
 
上がダムと同時に完成した島根県企業局八戸川第2発電所
下の建屋が2000年(平成12年)に増設された河川維持放流を利用した八戸川第3発電所。
第2発電所には放水池があり、放流水は導水路で八戸川第1発電所に送られます。第1発電所停止中は放水池脇の余水吐から減勢工に戻されます。
この放水池が旧八戸堰堤の堤高と同じ高さになるようです。
 
上流面。
 
(追記)
八戸ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1749 布部ダム(1634) 
島根県江津市桜江町八戸
江の川水系八戸川
FNWIP
72メートル
151メートル
26800千㎥/23200千㎥
島根県土木部
1976年
◎治水協定が締結されたダム

波積ダム

2021-06-01 15:55:14 | 島根県
2021年5月22日 波積ダム
 
波積ダムは島根県江津市波積町本郷の江の川水系都治川に島根県土木部の事業で建設中の治水目的の重力式コンクリートダムです。
島根県は1973年(昭和48年)より都治川へのダム建設実施計画調査に着手、1994年(平成6年)に波積ダム建設事業が着手されました。
しかし公共工事見直し機運が強まる中、2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなります。
2013年(平成25年)に改めて事業継続が決定し、2019年(令和元年)より本体工事が着手され現在はコンクリート打設が行われています。
波積ダムは国交省の補助を受けた補助治水ダムで、ダム完成の暁には都治川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給を目的として運用される予定です。
 
波積ダム完成予想図(島根県土木部HPより)
 
江津から県道太田井田江津線を西進し波積町本郷に入るとダム建設の工事案内板が現れます。
 
ダム建設現場右岸側に『波積ダム展望台』が設置されています。
 
ダム軸標識。
 
 
展望台から俯瞰。
 
打設現場。
手前にプレキャストの監査廊が見えます。
 
継ぎ目なしで広範囲を一度に打設する拡張レヤ工法で打設しています。
 
 
1753 波積ダム(1633)
島根県江津市波積町本郷
江の川水系都治川
FN
48.2メートル
126メートル
3720千㎥/3240千㎥
島根県土木部
1973年波積ダム実施計画調査着手
2019年波積ダム本体工事着工

志津見ダム

2021-06-01 09:54:53 | 島根県
2021 年5月22日 志津見ダム 
 
志津見(しつみ)ダムは島根県飯石郡飯南町角井の斐伊川水系神戸川中流部にある重力式コンクリートダムです。
斐伊川は「ヤマタノオロチ」の起源とされるなど古くから暴れ川として知られ斐伊川の治水は当地を治める為政者にとっては永続的な課題となっていました。
建設省中国地方建設局(現国交省中国地方整備局)は斐伊川の尾原ダム、神戸川の志津見ダム、斐伊川から神戸川への斐伊川放流路、宍道湖・中海間の大橋川の流水疎通能力向上を四本柱とする『斐伊川・神戸川総合開発事業』を採択、2010年(平成22年)の尾原ダムに続いて2011年(平成23男)に竣工したのが志津見ダムです。
事業着手当時の神戸川は二級河川でしたが、斐伊川・神戸川一帯開発のため国交省中国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムとして建設され、神戸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、島根県への工業用水の供給、島根県企業局志津見発電所での最大出力1700キロワットのダム式水力発電を目的としています。
尾原ダム、志津見ダムに続き2013年(平成25年)の斐伊川放水路が完成により斐伊川流域の治水能力は大きく改善しました。
また2006年(平成18年)に斐伊川放水路が河川指定されたことで、神戸川は一級河川斐伊川水系に編入されました。
 
志津見ダム最大の特徴はクレストに全頂長自由越流頂方式を採用したことです。中小規模の発電用ダムなどで同方式を採用するケースはままありますが、堤高80メートルを超える大規模ダムでの採用は日本初です
同方式の採用で従来方式で必要だった天端橋梁などが省略されたことで建設費や維持管理費の削減が実現しました。
さらに取水設備においても連続サイフォン方式が採用され維持管理の省力化によりコスト削減が可能となっています。
 
志津見ダムは国道184号線沿いにありアプローチは簡単です。
出雲から国道を南下し、飯南町に入ると左手に志津見ダムが姿を現します。
全頂長自由越流頂方式の採用で、のっぺりとしてダムとしては『異形』とも言えるスタイル。
 
国道184号線が絶好の展望台です。
 
訪問前々日までのまとまった雨で、オリフィスから越流しています。
ちなみに非常用洪水吐である堤頂を超える越流は試験湛水時のみだそうです。
 
ダム下流のトンネル
建設時の仮排水路です。
 
ゲート部分をズームアップ
通常の三角のデフレクターの上に空気穴?用のスペードのようなデフレクターが並びます。
堤体から流下する水の帯は漏水ではなく、天端側溝の水抜き穴からのものです。
 
全頂長自由越流頂方式採用により堤頂部下流側は美しいRを描いています。
 
志津見ダムの全頂長自由越流頂方式一番の特徴は越流頂である天端が道路になっている点です。
下流側に側溝が設置され2枚上の写真の水抜き穴から排水される仕組みです。
普段は立ち入り禁止ですが、訪問時は地元大学の社会見学が実施されていました。
もちろん部外者であるワタクシは、指をくわえて眺めるのみ。
 
上流面。
 
上流から。
志津見湖と命名された貯水池は総貯水容量5060万立米ですが、神戸川に沿って細長く広がるためダム付近ではその大きさを実感できません。
 
上流面の姿も異質。
連続サイフォン取水方式採用のため、大規模ダムにもかかわらず取水設備も非常にコンパクトにまとまっています。
 
ダム湖上流にある艇庫とインクライン。
 
国交省中国地方整備局管理のダムでは新しい技術が積極的に導入されているように思いますが、当ダムでも全頂長自由越流頂方式や連続サイフォン方式の取水設備など志津見ダムならではの技術が多く見られます。
 
(追記)
志津見ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1762 志津見ダム(1632)
島根県飯石郡雲南町角井
斐伊川水系神戸川
FNIP
81メートル
266メートル
50600千㎥/46600千㎥
国交省中国地方整備局
2011年
◎治水協定が締結されたダム

来島ダム

2021-05-31 13:21:04 | 島根県
2021年5月22日 来島ダム
 
来島ダムは島根県飯石郡飯南町下来島の斐伊川水系神戸川上流部にある中国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した中国電力(株)は戦後の復興を受けた電力需要拡大に対処するため各所で電源開発を進めます。
岩見地区では江の川本流で1953年(昭和28年)に浜原ダムと明塚発電所が運用を開始、さらに1956年(昭和31年)に神戸川に竣工したのが来島ダムです。 
ここで取水された水は約11キロの導水路で美郷町の潮発電所に送られ最大3万6000キロワットのダム水路式発電を行っています。
潮発電所の放流水は江の川に放流されるため、事実上来島ダムで流域変更されることになります。
また潮発電所下流には浜原ダムがあり、潮発電所の放流水を活用することで明塚発電所の発電効率向上につながっています。
 
飯南町下来島の国道184号線に来島ダムを示す標識がありこれに従うとダムサイトに到着します。
一方ダム下流の町道から一か所だけダムの下流面を望めるポイントがあります。
クレストにはラジアルゲートが3門、緩やかに曲線を描く漸縬型堤体導流壁はゲートの数こそ異なりますが、1949年(昭和24年)の日発時代に竣工し、同じ中国電力が管理する高暮ダムに酷似しています。 
 
ダムサイトに上がります。
湖岸に突き出た半島の先端からゲートを正対できます。
 
左岸から
ゲート操作室は被覆されています。
 
親柱の銘版には『来島堰堤』の文字。
 
下流面
放流設備はクレストにラジアルゲート3門と、堤体下部の放流管1条。
放流管からは河川維持放流が行われています。
 
放流管をズームアップ。
 
天端は徒歩のみ立ち入りは可能
ゲート部分は上流側に張り出しクランクになっています。
 
ダム下の遺構。
右手の円柱形の施設は量水計っぽいけど。
 
総貯水容量2347万立米の貯水池。
潮発電所への取水口は見ることができません。
 
右岸から下流面。
 
上流面
対岸には管理事務所と浮桟橋に繋留された巡視艇が浮かびます。
 
来島ダムで取水された水は潮発電所から流域変更して江の川に放流され下流の明塚発電所の発電効率向上に貢献しています。
また神戸川は暴れ川として名高く、通水能力の高い江の川へ流域変更することで神戸川の治水にもいくばくか貢献しているようにも思えます。
 
(追記)
来島ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1735 来島ダム(1631)
島根県飯石郡飯南町下来島
斐伊川水系神戸川
63メートル
250.9メートル
23470千㎥/21180千㎥
中国電力(株)
1956年
◎治水協定が締結されたダム

浜原ダム

2021-05-31 12:06:58 | 島根県
2021年5月22日 浜原ダム
 
浜原ダムは左岸が島根県邑智郡美郷町信喜、右岸が同町上川戸の一級河川江の川本流中流部にある中国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した中国電力(株)は戦後の復興を受けた電力需要拡大に対処するため各所で電源開発を進め、同年着工し1953年(昭和28年)に竣工したのが浜原ダムです。
ここで取水された水は約1.1キロの導水路で明塚発電所に送られ最大2万5000キロワットのダム水路式発電を行っています。
川幅360メートルの江の川を締め切り洪水吐ゲート12門、土砂吐ゲート2門の計14門のローラーゲートがずらっと並ぶ様は西日本では余り見かけることがありません。
 
美郷町中心部から江の川沿いを南下すると浜原ダムが見えてきます。
右岸から
ずらっと並ぶゲートで川を締め切る発電ダムは木曾川や阿賀野川・只見川などでは当たり前のように見られますが、西日本では当ダムくらいではないでしょうか?(岡山の旭川ダムは多目的ダム)。
 
左岸から
扶壁前面にゲート操作建屋が乗る中国電力ではおなじみのスタイル。
 
訪問直前にまとまった雨で水位が上昇し、洪水吐ゲート3門が開けられていました。
 
右岸から
対岸に明塚発電所への取水ゲートがあります。
取水ゲート右手は河川維持放流に使われる魚道の取水口。
 
右岸に格納された巡視艇
インクラインはなくクレーンで昇降されます。
 
左岸の取水口スクリーンと魚道の取水口。
 
レールのついた除塵機。
 
天端は重量制限はあるものの車両の通行可能。
ただし左岸側は除塵機のレールが横切る「踏切」になっています。
 
左岸の魚道
河川維持放流はこの魚道と排砂ゲート1門で行われます。
 
発電所への取水ゲート。
 
左岸上流から
貯水池は総貯水容量1120万立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量は4分の1の260万立米しかありません。
 
なお、貯水池上流側に浮ゲート式の予備ゲート格納庫がありましたが、事前の予習不足から訪問せず、その存在に帰宅後気が付きました。
全国的に見ても非常に珍しい設備なので、文字通り後悔先に立たずです。
 
(追記)
浜原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1731 浜原ダム(1630)
左岸 島根県邑智郡美郷町信喜
右岸 島根県邑智郡美郷町上川戸
江の川水系江の川
19メートル
361.4メートル
11200千㎥/2600千㎥
中国電力(株)
1953年
◎治水協定が締結されたダム

三瓶ダム

2021-05-29 12:53:46 | 島根県
2021年5月22日 三瓶ダム
 
三瓶ダムは島根県大田市三瓶町野城の静間川水系三瓶川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、三瓶川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、大田市への上水道用水の供給を目的として1996年(平成8年)に竣工しました。
 
三瓶ダムは県道太田佐田線沿いにありアプローチは簡単です。
ダム下流から川沿いの旧道を遡上するとダム下放流設備手前に到達できますが、ダム下からダムの全体像を見ることはできません。
 
県道からダムと正対できます。
クレストに自由越流式非常用洪水吐7門、オリフィスの自然調節式常用洪水吐1門を装備。
 
県道には「三瓶ダム」バス停があります。
 
右岸から
左右非対称でやや細身の堤趾導流壁が伸びています。
 
天端は車両通行可能で対岸に管理事務所があります。
事務所内には展示室もありますがコロナ禍ということで展示室は休業中。
 
上流面
対岸にインクラインがあります。
堤高に対してやや低めの貯水位ですが、有効貯水容量640万立米のうち洪水調節容量が467万立米ありこれで常時満水位となります。
 
ダムサイト県道擁壁の壁画
自然豊かな三瓶山の動物たちが神話風に描かれています。
牛よりでかいリスが怖い!
 
天端から減勢工と放流設備。
 
左岸から。
 
左岸ダムサイトの石碑
三つの峰が連なる三瓶山を四つの岩で表現しています。
 
『さひめ湖』と命名されたダム湖は総貯水容量712万立米。
水質に問題があるのか2種類の水質保全装置が設置されています。
手前は噴水で稼働していれば高さ30メートルの噴水を噴き上げるそうですが、訪問時は休憩中・・・・。
奥は曝気装置。
 
(追記)
三瓶ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1759 三瓶ダム(1629)
島根県大田市三瓶町野城
静間川水系三瓶川
FNW
54.5メートル
140メートル
7120千㎥/6400千㎥
島根県土木部
1996年
◎治水協定が締結されたダム

清瀧ダム

2021-05-29 10:13:29 | 島根県
2021年5月22日 清瀧ダム
 
清瀧ダムは島根県大田市久手町刺鹿の大原川水系江谷川にある洪水調節目的のアースフィルダムです。
大原川下流域は岩見地域有数の農業地帯ですが、もともと波根湖を干拓した低地のため大原川の増水のたびに冠水被害に見舞われ大原川の治水は流域農民の悲願となっていました。
そこで島根県は1971年(昭和46年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業に着手し1984年(昭和59年)に竣工したのが清瀧ダムです。
清瀧ダムは大原川流域の農地250ヘクタールの農地防災を目的としており、運用開始後は大田市が受託管理を行っています。
 
国道9号線沿いの『道の駅ロード銀山』から江谷川沿いを南東に進むと清瀧ダムが見えてきます。
ダム下左岸から
写真右手のトンネルは常用洪水吐吐口です。
 
アングルを変えて
左岸に非常用洪水吐導流部があります。
 
ダムサイトに上がります。
ダム管理所脇の竣工記念碑
右手の碑文にはダム建設に至る経緯が記されています。
 
こちらは常用洪水吐でいわゆるダム穴になっており、一番目写真のトンネル吐口へと続きます。
 
ダム湖は総貯水容量83万5000立米
訪問前日までの雨により常時満水位まで水が溜まっています。
湖面右手の四角い施設は利水放流設備です。
 
洪水吐導流部と減勢工。
 
天端は車両進入禁止。
 
天端からの眺め
ダムが防災を担うのはさらに下流に広がる農耕地です。
 
左岸の越流式洪水吐
珍しいL字型の洪水吐です。
 
超広角で何とかフレームに収まります。
 
ダム穴の常用洪水吐、L字型の越流式非常用洪水吐など見るべきポイントが多い清瀧ダムです。
記念碑にダム建設に至る経緯も記されているのもありがたいですね。
 
1752 清瀧ダム(1628)
島根県大田市久手町刺鹿
大原川水系江谷川
33.9メートル
124.5メートル
835千㎥/750千㎥
大田市
1974年

深山溜池

2021-05-28 15:13:55 | 島根県
2021年5月22日 深山溜池
 
深山溜池は島根県大田市波根町の波根川本流にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
現地看板には1943年(昭和18年)に建設、1987年(昭和62年)に改修と記されており、ダム便覧では1987年を竣工年度としています。
戦時中としては珍しいコンクリート造りの農業用ダムということでCランクの近代土木遺産に選定されています。
管理は大田市波根土地改良区が行っています。
 
波根地区中心部から波根川沿いを遡上すると写真の警告板が現れます。
ここに車をデポして徒歩で池に向かうことにします。
 
歩くこと20分ほどで深山溜池に到着しますが、ダムの入り口はフェンスで遮られています。
 
撮影ポイントはほとんどなくフェンス越しに上下流面を切り取るのみ。
『日本の土木遺産(改訂版)』では『粗石C重力式ダム(全面溢流式)』とのみ記されており、1943年竣工当時の姿のままなのか?改修で大きく手が入れられたのかも不明です。
 
天端。
 
上流面。
 
総貯水容量8万立米の小さなため池で撮影ポイントも限られていますが、物資人員ともに不足していた戦時中にコンクリート造りの堰堤を建設した背景なども気になるところです。

1714 深山溜池(1627)
ため池コード 322050040 
島根県大田市波根町
波根川水系波根川
15メートル
24.5メートル
80千㎥/80千㎥
大田市波根土地改良区
1943年竣工
1987年改修

稗原ダム

2021-05-28 12:00:17 | 島根県
2021年5月22日 稗原ダム
 
稗原ダムは左岸が島根県出雲市野尻、右岸が島根県雲南市三刀屋町根波別所の斐伊川水系稗原川上流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
2004年(平成16年)に農水省の補助を受けた島根県のかんがい排水事業によって建設され、完成後は出雲市が受託管理を行い250ヘクタールの農耕地に灌漑用水を供給しています。
ダム左岸高台が稗原ダム湖水公園として整備されているほか、湖畔にも親水公園が作られていますが山間の過疎地故かあまり利用する人は多くなさそうです。
 
県道出雲奥出雲線に稗原ダムを示す標識があり、これに従うとダムに到着します。
ダム下への道はダム手前200メートルほどにゲートがありますが徒歩での到達は可能です。
余水吐は自由越流式クレストゲートだけ、漸縮型堤体導流壁を備えたいかにも農業用コンクリートダムといった風。
 
左岸高台の稗原ダム湖水公園に上がります。
駐車場わきに立つ各種石碑。
 
公園からは眼下にダムと貯水池を俯瞰できます。
 
ダムへ続く管理道路は徒歩のみ進入可能
小雨の中ダムへと向かいます。
 
多孔式選択取水設備。
水の跡を見ると直近までクレスト放流していたようです。
 
天端。
 
下流面。
手前の金属カバーの中は電気ケーブルのようです。
 
減勢工と放流設備
ちょうど田植え時期ということで勢いよく放流されています。
 
総貯水容量121万立米のダム湖。
 
右岸から上流面。
 
(追記)
稗原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1760 稗原ダム(1626)
左岸 島根県出雲市野尻町
右岸 島根県雲南市三刀屋町根波別所
斐伊川水系稗原川
47.3メートル
117メートル
1210㎥/1019千㎥
出雲市
2004年
◎治水協定が締結されたダム

千本ダム(千本堰堤)

2021-05-27 16:08:48 | 島根県
2021年5月21日 千本ダム(千本堰堤)
2021年5月25日 
 
千本ダムは島根県松江市西忌部町の斐伊川水系忌部川にある松江市上下水道局が管理する上水道用水目的の表面石張重力粗石コンクリートダムです。
松江市では水道事業認可の翌1914年(大正3年)から水道敷設事業が着手され1918年(大正7年)の千本ダム完成に合わせて水道事業が開始されました。 
千本ダムで貯水された水は1919年(大正8年)に完成した忌部浄水場を経て市内に配水され、1957年(昭和32年)に建設された大谷ダムと合わせて松江市水道全体の約4分の1を担うの重要な水源となっています。
千本ダムは山陰地方初のコンクリート造り水源地堰堤として高い評価を受けており、2003年(平成15年)に土木学会選奨土木遺産、2008年(平成20年)に登録有形文化財に指定されたほかBランクの近代土木遺産に選ばれています。
2018年(令和元年)から2020年(令和3年)にかけて堤体耐震化改修工事が行われており、その竣工を待って今回の千本ダム訪問となりました。
5月21日の訪問時には前日までの雨を受けて越流が見られ、25日訪問時には晴天の下美しい石積みを愛でることができました。
 
堤体耐震化改修工事に合わせてダム周辺の環境整備も進められ堰堤一帯がダム公園となっています。
右岸に天端があり、あとはすべて越流部(溢流堤)になっています。
越流部は改修工事で石が張り替えられたようで白が目立ちます。
 
21日訪問時は絶賛越流中。
これまで見た石積堰堤はすべて布積みでしたが千本ダムは谷積みです。
 
ほぼ同じアングルから
 
 
 
この建屋の裏側に取水設備があり、取水設備への入り口と思われます。
 
ダム下の4連アーチの管理橋
こちらも登録有形文化財で、橋の手前に副ダムがあります。
 
管理橋から。
 
 
左岸から。
 
これまた同じアングルで。
 
放流時の越流部。
 
こちらは25日。
丸みを帯びた下流面と対照的に上流面は直線状に切れ落ちています。
 
越流部と取水設備。
 
右岸から天端。
この先端に取水設備があり、天端はそこへの通路となっています。
 
半円形の取水設備
 
土木学会選奨土木遺産のプレート
登録有形文化財のプレートは見つかりませんでした。
 
耐震改修工事の終了を待って満を持しての千本ダム見学でした。
今回は旅行のスケジュールに余裕があり、越流と非越流を見ることができる幸運。
石積堰堤としては珍しい谷積の堰堤はこれまで見た石積みとは一味ふた味も違う表情を見せてくれました。
 
(追記)
千本ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3587 千本ダム(千本堰堤)(1625)
国登録有形文化財
近代土木遺産Bランク
島根県松江市西忌部町
斐伊川水系忌部川
15.8メートル
109.1メートル
387千㎥/379千㎥
松江市上下水道局
1918年
◎治水協定が締結されたダム 

大谷ダム

2021-05-27 10:11:00 | 島根県
2021年5月21日 大谷ダム
 
大谷ダムは島根県松江市東忌部町の斐伊川水系大谷川にある松江市上下水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
松江市の水道事業は1918年(大正7年)の千本ダムおよび忌部浄水場の完成とともに開始され、以来市域の拡大や人口増加に対応して11次の拡張事業が実施されました。
大谷ダムは1953年(昭和28年)に着手された第6次拡張事業の中核施設として1957年(昭和32年)に竣工、千本ダムに次ぐ松江市水道事業2番目の貯水池として運用が開始されました。
大谷ダムで貯留された水は千本ダムともども忌部浄水場経由で市内に給水されています。
 
千本ダムから県道松江木次線を南下し、千本バス停で左手の町道に入り大谷川沿いを南に進むと大谷ダムに到着します。
ダム撮影のスペースがなく、広角レンズで何とかフレームに収まります。
 
洪水吐はクレスト自由越流頂3門だけ
あまり放流がないのか?導流部はいい按配に苔生しています。
向かって左手(右岸)は放流設備。
 
ゲートをズームアップ。
 
 
上水用水源ということで堤体や貯水池のガードは厳しく、ここ以外に見学ポイントは見当たりません。
グーグルの空撮写真によれば昭和20年代のダムらしく堤体上流側に半円形の取水設備が設けられています。
 
(追記)
大谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1624 大谷ダム(1736)
島根県松江市東忌部町
斐伊川水系大谷川
35メートル
101メートル
1422千㎥/1328千㎥
松江市上下水道局
1957年
◎治水協定が締結されたダム

新蝮谷池

2021-05-26 18:05:45 | 島根県
2021年5月21日 新蝮谷池
 
新蝮谷池は島根県松江市大庭町の斐伊川水系大庭川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1949年(昭和25年)に当時の大庭町の事業で竣工と記されていますが、竣工記念碑等もなくこれ以上は不明です。
管理は水利組合等の受益組織が行っているようですが、具体的な管理者名を確認することはできませんでした。
 
新蝮谷池へは島根県立「風土記の丘」が目印となり、公園の南西に池があります。
池の天端
轍がありますが、池の入り口にチェーンがかけられ徒歩のみ立ち入り可能です。
 
上流面
特にコンクリートなどでの補強は行われていません。
 
対岸に余水吐がありますが、木が茂りそれとはわかりません。
 
左岸の取水設備。
 
総貯水容量9万9000立米の小さな貯水池。
 
天端からの眺め
眼下には松江市大庭町の市街が広がります。
かつてこの地には出雲国の国庁が置かれ出雲の中心地でした。
 
下流面
秋に草が刈られたようですが、5月後半ともなると草が繁茂してきており池の下に降りるのは断念しました。
 
右岸余水吐の越流堤。
 
これが余水吐になりますが、草木が茂り写真を見る限りは何のことか全くわかりません。
 
風土記の丘からの遊歩道が池のそばを通っています。
 
ダム下には下りなかったので、底樋は確認できませんでした。


1726 新蝮谷池(1623)
ため池コード 322010126
島根県松江市大庭町
斐伊川水系大庭川
16メートル
80メートル
99千㎥/90千㎥
管理者未確認
1949年

山佐ダム

2021-05-26 16:13:00 | 島根県
2021年5月21日 山佐ダム
 
山佐ダムは島根県安来市広瀬町上山佐の斐伊川水系山佐川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、山佐川及び飯梨川の洪水調節、松江市・安来市への上水道用水の供給を目的として1980年(昭和55年)に竣工しました。
1967年(昭和42年)に飯梨川に建設された布部ダムと連携した治水・利水運用が行われています。
また2020年(令和2年)には河川維持放流を利用して最大199キロワットの小水力発電を行う島根県企業局山佐発電所が増設されました。
 
安来市広瀬町で国道432号から県道安来木次線に入り南に進むと山佐ダムに到着します。
ダム下への道は関係者以外進入禁止のためダムの下流面をはこれが精いっぱい。
現地ダム案内板によればクレストにローラーゲート2門、コンジットに高圧ラジアルゲート1門を装備しています。
 
ダム湖は山美湖と書いて「やまびこ」。
 
上流面
堤体に巡視艇が繋留されています。
堤高から比べると水位が低いようですが、これで常時満水位。
 
職員さんの許可を得て管理事務所裏手から撮影させていただきました。
残念ながらここからもゲートは見えずコンジットの予備ゲートを眺めるのみ。
 
減勢工
左岸の新しい建屋が2020年(令和2年)に新設された山佐発電所。
 
ゲート操作機器。
 
洪水吐導流部
前日までの雨で水位が上がりコンジットから放流しています。
 
ダム湖は「山美湖」で総貯水容量は505万立米。
 
天端は車両通行可
ちょうど軽自動車が通りかかりました。
 
下流面。
 
同じ飯梨川水系の布部ダム同様、管理事務所の門扉親柱にダム銘板が嵌め込まれています。
 
見えそうで見えないゲートにややストレスがたまる山佐ダムです。
 
(追記)
山佐ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1751 山佐ダム(1622)
島根県安来市広瀬町上山佐
斐伊川水系山佐川
FW
56メートル
220メートル
5050千㎥/4450千㎥
島根県土木部
1980年
◎治水協定が締結されたダム

布部ダム

2021-05-26 10:23:21 | 島根県
2021年5月21日 布部ダム
 
布部(ふべ)ダムは島根県安来市広瀬町布部の斐伊川水系飯梨川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、飯梨川の洪水調節、松を行う飯梨川第3発電所が増設されました。江市・安来市への上水道用水の供給、中海沿岸の工場群への工業用水の供給、上工水の利水従属発電として島根県企業局飯梨川第1発電所(最大3000キロワット)及び第2発電所(最大1400キロワット)でのダム水路式発電を目的として1967年(昭和42年)に竣工しました。
その後1980年(昭和55年)に飯梨川左支流山佐川に
山佐ダムが完成し、現在は同ダムと連携した治水・利水運用が行われています。
また1991年(平成3年)には河川維持放流を利用して最大250キロワットの小水力発電を行う飯梨川第3発電所が増設されました。
 
布部ダムは国道432号沿いにありアプローチは簡単です。
国道から分かれ飯梨川沿いを遡上するとダム下にもアプローチできます。 
 
昭和40年代前半のダムらしくクレスト、オリフィスともにゲート装備。
また右岸(向かって左)には利水放流用のハウエルバンガーバルブがあります。
 
バブルをズームアップ
バルブから下に伸びるのは利水用放流管で1991年(平成3年)に増設された飯梨川第3発電所へと向かいます。
 
下流面
右岸側がわずかに湾曲しています。
 
天端は車両通行可能
湾曲した堤体に合わせ左岸は緩やかにカーブを描いています。
 
天端から洪水吐導流部と減勢工。
 
1991年(平成3年)に増設された小水力発電所の飯梨川第3発電所。
 
ダム湖は「白椿湖」と命名され総貯水容量は710万立米。
堤体に係留された巡視艇が湖面を漂っています。
 
右岸にある飯梨川第1、第2発電所の取水設備。
ここで取水された水は発電に使われたのち、上工用水に供給されます。
 
右岸から天端と管理事務所。
 
右岸から下流面
左岸側が湾曲しているのがわかります。
 
(追記)
布部ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1747 布部ダム(1621)
島根県安来市広瀬町布部
斐伊川水系飯梨川
FWIP
55.9メートル
190メートル
7100千㎥/5000千㎥
島根県土木部
1967年
◎治水協定が締結されたダム

三成ダム

2018-10-26 16:11:31 | 島根県
2018年10月13日 三成ダム
 
三成ダムは島根県仁多郡奥出雲町の斐伊川水系斐伊川上流部にある島根県企業局が管理する発電および砂防目的のアーチ式コンクリートダムです。
斐伊川は流路延長153キロ、流域面積2540平方キロの一級河川です。
上流域では江戸時代からたたら製鉄が盛んで、砂鉄採取過程の『かんなながし』と呼ばれる人為的な土砂流出が中下流域の洪水被害につながっており。土砂流出抑止が長年の課題となっていました。
一方戦後の復興による電力需要の増加に対処するため、島根県企業局は公営発電事業者として積極的な電源開発を推進していました。
1950年(昭和25年)に当時の建設省中国四国建設局(現国交省中国地方整備局)は斐伊川上流部へ直轄事業として砂防目的のダム建設に着手、これに島根県企業局が発電事業者として事業参加し1953年(昭和28年)に竣工したのが三成ダムです。
運用開始後、管理は島根県企業局に移管され、砂防目的のほか島根県企業局三成発電所で最大2830キロワットのダム水路式発電を行っています。
三成ダムは着工こそ宮崎県の上椎葉ダムに遅れたものの、竣工ベースでは日本初の本格的アーチ式ダムとなっています。
三成ダムは日本100ダムおよび土木学会選奨土木遺産に選定されています。
 
管理所前には土木学会選奨土木遺産認定プレートが埋め込まれた記念碑が建ちます。
 
三成ダムの説明板
この先ダムへの管理道路は立ち入り禁止となり管理事務所のゲートも閉まっています。
この案内板の下に管理事務所の電話番号があり、ここに電話をするとダムカードがもらえるとともにダム天端手前までの立ち入りを認めてもらえます。
 
管理道路を下るとすぐにダムが見えてきます。
 
この先のフェンスまでが立ち入り可能。
左右両サイドに土砂吐ゲートを備えています。
また左右両端は重力式、中央がアーチ式という独特のスタイル。
 
両側の土砂吐から放流しています。
 
よく見ると左岸の土砂吐は2門、右岸は1門
写真では分かりませんがそれぞれローラーゲートを備えています。
 
クレストには8門の洪水吐がありこちらもローラーゲートを装備。
 
ほぼ垂直の導流面。
 
左右両岸が重力式のため、個性的なスタイルのアーチダムとなっています。
叶うならダム下から見上げてみたいものです。
 
(追記)
三成ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1730 三成ダム (1423)
島根県仁多郡奥出雲町三成
斐伊川水系斐伊川
42メートル
109.7メートル
3438千㎥/1138千㎥
島根県企業局
1953年
◎治水協定が締結されたダム