ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

四万川ダム

2015-10-26 12:30:00 | 群馬県
2015年10月10日 四万川ダム
 
四万川ダムは群馬県吾妻郡中之条町四万の利根川水系四万川源流部にある群馬県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
四万川では1960年(昭和35年)に砂防と発電を目的とする中之条ダムが建設されましたが、あくまでも砂防対策である上に四万温泉街や中之条町市街地での大規模な河川改修は困難となっていました。
群馬県は四万川流域の抜本的治水対策を主目的に1999年(平成11年)に四万温泉上流に四万川ダムを建設しました
四万川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、最大290立米/秒の洪水をカットし、四万川下流基準点で同量の洪水調節を行います。
また安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)の補給、太田市・中之条町及び群馬県企業局向けの上水道用水の供給、群馬県企業局日向見発電所(最大出力1000キロワット)でのダム式水力発電を目的としています。
 
四万川ダムはダム建設途中の1994年(平成6年)に国交省により『地域に開かれたダム』の指定を受け、ダム一帯は地域住民の意見を反映させた開放的な整備が進められました。
ダムの建屋は西洋の城郭風デザインが採用されたほか、ダム完成により誕生した『奥四万湖』は独特のコバルトブルーを売りに四万温泉の人気スポットとなり、今では四万観光にとって欠くことのできない存在となっています。
また日本ダム協会により日本100ダムにも選ばれています。
 
中之条から四万川沿いに国道353号を北上、温泉街への旧道を分けトンネルを抜けると右手に四万川ダムが姿を現します。

右岸から
西洋の城郭を彷彿とさせるデザイン。

左岸から
やはりヨーロッパの城のようで建屋のみならず、石垣風の化粧型枠が施されています。

左岸のインクラインと艇庫。

ダムの下は公園になっています
手前の建物は日向見発電所。

天端は車両通行可、ただし、ダム湖を周回する道路は時計回りの一方通行。

減勢工。
副ダムが二つあります。

上流から

ダム下から
非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂4門
常用洪水吐は非洪水期2門、洪水期1門のオリフィスローラーゲート
さらに利水放流用ジェットフローゲートを備えています。

副ダムは2基。
ダム下は公園で、普段は副ダムのすぐ下流まで立ち入れます。

(追記)
四万川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備えて事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。 
 
0626  四万川ダム(0011)
群馬県吾妻郡中之条町四万
利根川水系四万川
FNWP
89.5メートル
330メートル
9200㎥/8600㎥
群馬県県土整備部
1999年
◎治水協定が締結されたダム

白砂ダム

2015-10-26 10:53:00 | 群馬県
2015年10月10日 白砂ダム
 
白砂ダムは群馬県吾妻郡中之条町入山の利根川水系吾妻川左支流白砂川上流部にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
利根川支流の吾妻川では豊富な水量を生かし大正末期から昭和初期にかけて複数の事業者によって電源開発が進められ、これらの発電施設は日本発送電を経て戦後の電力分割民営化により東京電力が事業を継承しました。
白砂ダムもそんな発電施設の一つで、川中発電所の取水ダムとして群馬水電(株)の手により1940年(昭和15年)に建設されました。
白砂川支流の長笹沢川で取水された水をいったん貯留するとともに白砂川自体でも取水を行い、延長約9キロの導水路で東吾妻町松谷にある川中発電所に送水して最大1万6400キロワットのダム水路式水力発電を行っています。
 
中之条から白砂川沿いに国道を北上し、花敷温泉への道を分けトンネルを抜けたすぐ左手に白砂ダムがあります。
ダムの敷地はフェンスに囲まれ立ち入り禁止です。
フェンスわきの東京電力の表示板
白砂川ダムとなっています。
 
ダムの撮影スポットは国道だけです。
ラジアルゲートが2門、その右手に排砂ダムと思われる小さなゲートがあります。
ダムの右手は長笹沢川からの導水路吐出口、左手のスクリーンが川中発電所への取水口。
水質のせいかゲートが茶褐色に変色しています。
 
 
関東では栃木県日光市の土呂部ダムなどとともに下流側が見れないダムの一つです。
 
追記
白砂ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
 
0596  白砂ダム(0008)
群馬県吾妻郡中之条町入山
利根川水系白砂川
26.8メートル
37.7メートル
630㎥/97㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1940年
◎治水協定が締結されたダム

野反ダム

2015-10-26 10:27:00 | 群馬県
2015年10月10日 野反ダム
 
野反ダムは群馬県吾妻郡中之条町入山の信濃川水系中津川源流部にある東京電力リニューアブルパワー (株)が管理する発電目的のロックフィルダムです。
信濃川水系中津川では豊富な水量に着目した信越電力(株)により大正期より電源開発が進められ、中津川第1~第3発電所を稼働させます。のちに同社は東京電燈に併合され、さらに日本発送電の接収を経たのち1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに誕生した東京電力が事業を継承しました。
東京電力は戦後の電力不足に対応するため中津川流域での発電施設再開発を進め、その一環として1956年(昭和31年)に完成したのが野反ダムです。
野反ダム完成により中津川の河川流量の季節変動が平準化され発電能力の大幅な増強が可能となりました。野反ダム建設と同時に下流に渋沢ダムと最大出力2万キロワットの切明発電所を新設、さらに1971年(昭和46年)には高野山ダムを再開発して中津川第一発電所の発電能力を12万6000キロワットまで増大させました。
 
我が国ロックフィルダム創成期のダムと言うことで、ダム建設に当たっては投石工法が採用されるとともに、遮水方式も希少なコンクリート表面遮水が採用されています。
またダムの天端標高1517メートルは南相木ダムに次ぐ全国第二位で、日本有数の高所ダムとなっています。
一方湖畔にはコテージやキャンプ場が並ぶほか、フライフィッシングのメッカとしても知られ、これらの点を評価して日本100ダムおよびダム湖百選に選ばれています。
 
長野原から白砂川沿いに国道を北上、花敷温泉で草津への道を分けさらに進むと野反湖に到着します。
右岸高台から
上流面はコンクリートで遮水処理されています。
 
下流面
投石工法と言う珍しい工法で建設されました。
いまにも石が崩れそうにも見えるんですが・・・。
 
天端は湖畔周遊道路になっており車両の通行が可能
望遠で圧縮すると路面がかなり凹凸しています。
 
右岸の余水吐
総貯水容量2700万立米と言うサイズからすれば小さな余水吐ですが、中津川の源流なのでこれで十分なんでしょう。
写真では分かりませんが手前の導流部はトンネル式です。
 
扶壁の溝は試験湛水の際にゲートの填め込みに使ったもの。
 
ダム下の様子
余水吐からの放流口があり、水路はこのまま中津川となります。
 
左岸から下流面
 
上流面
稼働中のダムとしては全国で5基しかないコンクリート表面遮水処理型ロックフィルダム。
 
野反湖上流から遠望。
 
東京電力のダム案内板。
 
国交省の友人から貴重な投石工法の写真を頂きました。
これは岩手県の石渕ダムのものですが、まず橋梁を設けレールを敷き、石を積んだ貨車から石を投げ下しています。
 
野反湖は今でこそキャンプ、釣り、登山などアウトドアレジャーのメッカになっていますが、もともと当初には高層湿原があったようです。環境意識の強い今の世ならここにダムの建設など到底できないでしょう。 
希少なコンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム、全国で2番目の高所にあるダムと言うことで日本ダム100やダム湖百選にも選ばれていますが、一方でダム本体の変形量や放流管の肉厚データなどで東京電力によるデータ改ざん、隠匿と言う不祥事があったことも併せて記しておきます。
 
(追記)
野反ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0603 野反ダム(0007)
群馬県吾妻郡中之条町入山
信濃川水系中津川
42メートル
152.5メートル
27050千㎥/26750千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1956年
◎治水協定が締結されたダム