ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

中木庭ダム

2019-05-28 20:00:04 | 佐賀県
2019年5月23日 中木庭ダム
 
中木庭ダムは佐賀県鹿島市山浦の鹿島川水系中川源流部にある佐賀県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、中川及び鹿島川下流部の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、鹿島市への上水道用水の供給を目的として2007年(平成19年)に竣工しました。
その後2016年(平成28年)に河川維持放流を活用した小水力発電所が増設され、九州電力のグループ企業である西技工業(株)の運用により最大出力196キロワットの発電を行っています。
 
中木庭ダムは鹿島と長崎県大村を結ぶ国道44号線沿いにあります。
ダム湖畔には約7000株のアジサイが植えられ、開花期には県外からも多くの観光客が訪れる花の名所です。
 
ダム下は放流設備の手前から立ち入り禁止となっており全景はこれが精いっぱい。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート10門、常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲート1門を備えています。
 
左岸ダムサイトの竣工記念碑
文字は金箔仕様です。
 
天端は車道になっていますが、右岸から左岸への一方通行
左手はエレベーター棟、右手は取水設備操作室。
 
右手で放流しているのが利水放流設備、左手の白い建屋が増設された小水力発電所。
 
減勢工を真上から
副ダムの下流側は洗掘を防ぐために石が敷かれています。
山向こうの長崎県の萱瀬ダムでも同様に石が敷かれていましたがちょっと形状は異なります。
左岸のコンクリートの上の石は落石ではなく、佐賀県を象って並べられたようですがわかりづらい。
 
ダム湖に名前はありません、総貯水容量は680万立米。
 
下流面
両岸に堤趾導流壁があります。
 
上流面
手前は取水設備、奥がオリフィスゲート。
 
アングルを変えて上流面。
 
インレットから
ダム湖上流湖畔には約7000株のアジサイが植えられ、九州では有名なアジサイ鑑賞スポットになっています。
見ごろは6月上旬から下旬で、アジサイ祭りの開催に合わせてダム見学会なども行われるようです。
アジサイを見るには半月ほど早すぎたようで・・・・。
 
2552 中木庭ダム(1432) 
佐賀県鹿島市山浦
鹿島川水系中川
FNW
69.5メートル
265メートル
6800千㎥/6300千㎥
佐賀県県土整備部
2007年

萱瀬ダム(再)

2019-05-28 14:15:08 | 長崎県
2019年5月23日 萱瀬ダム(再)
 
萱瀬(かやぜ)ダムは長崎県大村市黒木町の郡川水系郡川上流部にある長崎県営の土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1957年(昭和32年)7月豪雨により大村市街で甚大な被害が発生したことを受け、長崎県初の多目的ダムとして1961年(昭和36年)に萱瀬ダム(元)が完成しました。
しかしその後も2度にわたり計画洪水を上回る豪雨に見舞われたほか、長崎空港開港に伴う上水道用水需要の増加への対応から萱瀬ダム嵩上げ再開発事業が着手され、2000年(平成12年)に萱瀬ダム(再)が竣工しました。
再開発により堤高は51メートルから65.5メートルに嵩上げされ、総貯水容量は303万立米から681万立米へと2倍以上に拡大しました。
萱瀬ダム(再)は現在でも長崎県で最も堤高が高いダムとなっています。
萱瀬ダムは郡川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、大村市及び長崎市への上水道用水の供給を目的としています。
 
萱瀬ダム(再)は国道444号線沿いにあり大村市街から佐賀県鹿島方面に進むとダムに到着します。
ダム下は公園になっていますが、草が茂りかなり荒れ気味。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート10門、常用洪水吐として自由調節式オリフィスゲート2門を備えています。
 
右岸の国道から
再開発により堤高が14.5メートル嵩上げされました。
旧ダムの高さは今のオリフィスの下あたりになります。
 
 
右岸ダムサイトにある竣工記念碑
文字は金箔です。
 
上流面
多良岳一帯は成層火山でダムサイトには安山岩の岩峰が並びます。
 
天端から減勢工
副ダムの下流は河床に石が敷かれています。
左右両岸に建屋が見えますが、右手は放流設備、左手は長崎市向けの上水道用水送水設備ののようです。
 
総貯水容量681万立米のダム湖に名前はありません。
上流には独特の容貌をした多良岳主峰群が並びます。
 
左岸の取水設備。
 
左岸から下流面
左右両岸に堤趾導流壁があります
正面の建物は管理事務所ですが職員は常駐しません。
 
天端は車両通行可能で車でダム湖を一周できます。
 
上流から。
 
(追記)
萱瀬ダム(再)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。  

2640 萱瀬ダム(元) 
長崎県大村市黒木町
郡川水系郡川
FW
51メートル
180メートル
3030千㎥/2630千㎥
長崎県土木部
1961年
--------------
2645 萱瀬ダム(再)(1431)
長崎県大村市黒木町
郡川水系郡川
FNW
65.5メートル
240メートル
6810千㎥/5940千㎥
長崎県土木部
1961年 旧ダム竣工
2000年 再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム

大多武溜池

2019-05-28 12:48:31 | 長崎県
2019年5月23日 大多武溜池
 
大多武(おおたぶ)溜池は長崎県大村市東大村の鈴田川水系鈴田川右支流(河川名未確認)上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
長崎・佐賀県境をなす多良岳山麓には大河がなく、古くから小河川上流部を堰き止めた谷池が各所に作られてきました。
大多武溜池もそんな溜池の一つで、ダム便覧には大多武開拓農協の事業で1944年(昭和19年)に竣工と記されています。
現在は受益者で組織される『大多武ため池水利組合』が管理を行っています。
 
なおダム便覧では堤高17.5メートル、堤頂長157.5メートルと記されていますが、2020年(令和2年3月)に作成された長崎県のため池データベースでは堤高13.7メートル、堤頂長149メートルとなっています。
データベースのスペックを採用すると、大多武溜池は河川法上のダムの要件を満たさなくなります。
 
大村インターから大村レインボーロードを南下、三石バス停で立体交差する市道に入り進路を右手に取ると右手に中澤病院が現れます。
病院のすぐ先が大多武溜池となります。
堤体は犬走りを挟んで2段構成、堤体直下に太陽光パネルが並びます。
 
左岸の洪水吐導流部。
 
市道から天端に続く細い分岐が分かれます。
写真のガードレールは洪水吐に架かる橋部分です。
なお溜池左岸には某新興宗教の事務所があり、間違って敷地に入ると面倒なことになりそうなのでご注意を。
 
左岸から下流面
堤体は春に草が刈られたようで、草ボウボウと言った感じではありません。
ダム下には太陽光パネル、左奥の建物が目印となる中澤病院です。
 
上流面はコンクリートで護岸されており、堤体ほぼ中央に斜樋があります。
 
洪水吐導流部。
この下が上から2枚目の写真となります。
 
横越流式洪水吐。
 
総貯水容量は24万8000立米
ちょうど田植えシーズンに入ったところ補給が多いせいか水位が下がっています。
貯水池直上にも姥ヶ懐池というため池がありますが、管理者は異なっています。
奥に見える山は多良岳主峰です。
 
斜樋の操作建屋と言うか小屋。
 
斜樋。
 
ダム便覧では位置未確認となっていますが、大村市のハザードマップでは当池が大多武溜池となっているので間違いないと思います。
ハザードマップおよびため池データベースでは堤高が13.7メートルとなっておりこれが正しければ当池はダムではなくなります。
一方大多武溜池上流の姥ヶ懐池の堤高が15.1メートルとなっており、こちらは新規にダムに採用される可能性があります。

2602 大多武溜池(1430)
ため池コード 422050016
長崎県大村市東大村
鈴田川水系鈴田川右支流
17.5メートル(ため池データベース13.7メートル
157.5メートル(ため池データベース149メートル)
247千㎥(ため池データベース248千㎥)/247千㎥
大多武水利組合
1939年

重井田ダム

2019-05-28 11:00:51 | 長崎県
2019年5月23日 重井田ダム
 
重井田ダムは長崎県大村市の郡川水系佐奈川内川上流部にある防災目的のアースフィルダムです。
農林省(現農水省)の補助を受け1973年(昭和48年)に着手された長崎県の農地防災事業により1983年(昭和58年)に竣工しました。
運用開始後は大村市が受託管理し、佐奈川内川流域の農地190ヘクタールの農地防災を目的としています。
 
佐奈川内川に沿って東に進むと重井田ダムが見えてきます。
堤高41メートルのアースの堤体にはちょっと不釣り合いな巨大な洪水吐。
洪水吐は近年改修され、白さが一段と映えています。
 
左岸の竣工記念碑
文字が金箔仕様です。
実は長崎や佐賀の竣工記念碑の大半は文字が金メッキされています。
これはもともと中国の明や清の時代の風習で、大陸との玄関口だった当地でも中国の影響で石碑の文字が金メッキされるようになったそうです。
長崎、佐賀では記念碑のみならず墓石の文字なども金ぴかのものが多く見られます。
 
洪水吐と上流面。
 
草が生えていてよく見えませんが上流面はロック材で護岸されています。
 
天端は車両通行可能。
 
洪水吐導流部と減勢工
彼方に大村湾が望める『海が見えるダム』です。
 
横越流式洪水吐。
 
天端からの眺め
大村湾から対岸の西彼杵半島まで見えます。
高架橋は長崎自動車道。
 
有効貯水容量63万4000立米すべてが洪水調節容量となるため普段は貯水されません。
 
この斜樋が常用洪水吐となり、普段は流入量をそのまま下流に流下させます。
 
(追記)
重井田ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2627 重井田ダム(1429)
長崎県大村市野田町
郡川水系佐奈川内川
41メートル
170.6メートル
676千㎥/634千㎥
大村市
1983年
◎治水協定が締結されたダム