2021年5月21日 千本ダム(千本堰堤)
2021年5月25日
千本ダムは島根県松江市西忌部町の斐伊川水系忌部川にある松江市上下水道局が管理する上水道用水目的の表面石張重力粗石コンクリートダムです。
松江市では水道事業認可の翌1914年(大正3年)から水道敷設事業が着手され1918年(大正7年)の千本ダム完成に合わせて水道事業が開始されました。
千本ダムで貯水された水は1919年(大正8年)に完成した忌部浄水場を経て市内に配水され、1957年(昭和32年)に建設された大谷ダムと合わせて松江市水道全体の約4分の1を担うの重要な水源となっています。
千本ダムは山陰地方初のコンクリート造り水源地堰堤として高い評価を受けており、2003年(平成15年)に土木学会選奨土木遺産、2008年(平成20年)に登録有形文化財に指定されたほかBランクの近代土木遺産に選ばれています。
2018年(令和元年)から2020年(令和3年)にかけて堤体耐震化改修工事が行われており、その竣工を待って今回の千本ダム訪問となりました。
5月21日の訪問時には前日までの雨を受けて越流が見られ、25日訪問時には晴天の下美しい石積みを愛でることができました。
堤体耐震化改修工事に合わせてダム周辺の環境整備も進められ堰堤一帯がダム公園となっています。
右岸に天端があり、あとはすべて越流部(溢流堤)になっています。
越流部は改修工事で石が張り替えられたようで白が目立ちます。
21日訪問時は絶賛越流中。
これまで見た石積堰堤はすべて布積みでしたが千本ダムは谷積みです。
ほぼ同じアングルから
この建屋の裏側に取水設備があり、取水設備への入り口と思われます。
ダム下の4連アーチの管理橋
こちらも登録有形文化財で、橋の手前に副ダムがあります。
管理橋から。
左岸から。
これまた同じアングルで。
放流時の越流部。
こちらは25日。
丸みを帯びた下流面と対照的に上流面は直線状に切れ落ちています。
越流部と取水設備。
右岸から天端。
この先端に取水設備があり、天端はそこへの通路となっています。
半円形の取水設備
土木学会選奨土木遺産のプレート
登録有形文化財のプレートは見つかりませんでした。
耐震改修工事の終了を待って満を持しての千本ダム見学でした。
今回は旅行のスケジュールに余裕があり、越流と非越流を見ることができる幸運。
石積堰堤としては珍しい谷積の堰堤はこれまで見た石積みとは一味ふた味も違う表情を見せてくれました。
(追記)
千本ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
3587 千本ダム(千本堰堤)(1625)
国登録有形文化財近代土木遺産Bランク
島根県松江市西忌部町
斐伊川水系忌部川
W
G
15.8メートル
109.1メートル
387千㎥/379千㎥
松江市上下水道局
1918年
◎治水協定が締結されたダム