ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

上津浦ダム

2022-05-30 23:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 上津浦ダム

上津浦(こうつうら)ダムは熊本県天草市有明町上津浦の上津浦川本流上流部にある熊本県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の小規模ダム事業である
生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、上津浦川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、天草市有明町への上水道用水の供給を目的として2004年(平成16年)に竣工しました。
天草上島では唯一の補助多目的ダムです。

クレスト自由越流頂1門、自然調節式オリフィス1門の特に特徴のないゲートレスダムです。
ダム建設に合わせてダム下は『ホタル広場』として整備されましたが、今は草が繁茂しかなり荒れ気味。利用者もほとんどないという県ダムではよく見かける情景。


左岸から下流面。


選択取水設備が堤体内に設置されており、突起物がないすっきりした上流面。


天端からは海が見えます。
対岸は天草下島、その背後には島原まで遠望できます。
手前側の建屋は当ダムから水を供給する浄水場。


ダム湖は総貯水容量は46万7000立米と生活貯水池ダムならではのサイズ
集水面積1.2平方キロのうち直接流域は半分の0.6平方キロ
残り半分は山の北側の支流からの導水に依ります。
左手に見えるのが導水路吐口と導流路。


湖面に浮かぶのは曝気装置。


天端には堤体内に設置された取水設備や曝気装置の操作機器が並びます。


洪水吐導流部と減勢工
右手は放流設備
エンドシルの下流左岸側が『ホタル広場』ですが、上から見ると緑一色。
自然に回帰しつつあります。


右岸から下流面。
対岸に管理事務所がありますが平時は職員の常駐はないようです。


上流から。


3054 上津浦ダム(1816)
熊本県天草市有明町上津浦
上津浦川水系上津浦川
FNW
54メートル
205メートル
467千㎥/440千㎥
熊本県土木部
2004年

教良木ダム

2022-05-30 19:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 教良木ダム

教良木(きょうらぎ)ダムは左岸が熊本県上天草市松島町教良木、右岸が同市松島町内野河内の教良木川水系祝口川にある灌漑及び上水道用水目的のロックフィルダムです。
大河がない天草諸島では古くから水源を小中小河川やため池に依存してきましたが、各河川は流域面積が小さく慢性的な用水不足に悩まされてきました。
1972年(昭和47年)に農水省の補助を受けた県のかんがい排水事業教良木地区が着手され、その灌漑用水源として1976年(昭和51年)に竣工したのが教良木ダムです。
事業には水道事業者として当時の松島町(現上天草市)と倉岳町(現天草市)が事業参加し、運用開始後は教良木土地改良区が管理を受託し約500ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するほか、上天草市松島町および天草市倉岳町に上水道用水を供給しています。

ダム下流にある巨大なコンクリート構造物。
実はこれが調圧水槽。


調圧水槽の裏には、ダムの取水設備から続く水路鉄管。


ダムの左岸を県道54号有明倉岳線が通りアプローチは簡単です。
リップラップには草が伸び、見た目はアースダムのよう。


天端は車両の通行ができます。
左手の建屋は管理事務所。


右岸の横越流式洪水吐
洪水吐上流側に取水設備があるんですが、水位が高く水没しており視認できません。


管理事務所そばの事業説明板
これがあるとダム建設の経緯がわかりやすいんですよねー。


洪水吐脇上流面にある竣工記念碑。
九州ではおなじみ、金箔仕様の記念碑ですが半ば草に埋もれています。


横越流式洪水吐。


洪水吐と上流面
上流面は草もなくロックフィルダムだとわかります。


左右両湖畔に親水公園があります。
こちらは右岸から遠望した堤体。
ダム湖は総貯水容量139万1000立米と離島としてはなかなかの規模。


こちらは左岸県道わきの公衆トイレ。
鳥をモチーフにしたユニークなデザイン。


2673 教良木ダム(1815)
左岸 熊本県上天草市松島町教良木
右岸      同市松島町内野河内
教良木川水系祝口川
AW
29.3メートル
108メートル
1391千㎥/1371千㎥
教良木土地改良区
1976年

西河内ダム

2022-05-30 15:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 西河内ダム
 
西河内(にしごうち)ダムは熊本県上天草市姫戸町二間戸の神代川水系西河内川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
ダム便覧には1970年(昭和45年)に当時の姫戸町の事業で竣工と記されており、現地記念碑にも『西河内かんがい排水事業 発注者姫戸町長・・・・』と刻されています。
町単独事業とは考えづらく、農水省や県の補助を受けた事業で建設されたものと思われます。
管理は姫戸町が行っていましたが、現在は町村合併で誕生した上天草市が引き継いでいます。

上天草市二間戸から神代川沿いを約1.7キロ西進すると西河内ダムに到着します。
クレスト自由越流頂2門の農業用コンクリートダムらしい簡易な作り。
ダム右岸下流側に放流設備がありますが、草が深く接近はおろか撮影もままなりません。


少しアングルを変えて。


左岸ダムサイトの記念碑。


上流面は木が茂り、これが精いっぱい。


天端の立ち入り制限はありません。
完成当初はダム湖を周回する道路も作られたようですが、今は右岸側が廃道状態で行き止まり。


親柱上流側のダム銘板。

下流側には『昭和55年3月完成』の銅板。


総貯水容量はわずか2万2000立米。


提体やや右岸側に取水設備があり、これはそのハンドル。


自由越流頂。

3299 西河内ダム(1814)
熊本県上天草市姫戸町二間戸
神代川水系西河内川
17.5メートル
68.8メートル
22千㎥/16千㎥
上天草市
1970年

石打ダム

2022-05-30 12:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 石打ダム

石打ダムは熊本県宇城市三角町中村の波多川水系八柳川にある熊本県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
波多川は小河川ですが下流域を中心に洪水被害が多く、また旧三角町では上水道水源を地下水に依存していたことから安定した水源確保が求められていました。
1979年(昭和54年)に波多川総合開発事業が採択され波多川への多目的ダム建設が決まりました。
しかし波多川本流にダム建設適地がなかったことから支流の八柳川へのダム建設が進められ、1992年(平成4年)に石打ダムが竣工しました。
石打ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、波多川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、宇城市旧三角町への上水道用水の供給を目的としています。
集水面積3.9平方キロのうち八柳川は2.1平方キロに留まり、残りは波多川からの導水に依っています。
バブル真っただ中の建設ということで、ダムには不相応な資料館を備えており管理事務所ともども著名デザイナーによる斬新な建屋となっています。
またダム建設に合わせ、最寄りのJR三角線に『石打ダム駅』が新設され、JRとしては唯一ダム名が駅名となっています。

堤高38.5メートル、堤頂長256メートルの横長ダムです。


ダム下から
ゲート中央部の堤頂がバルコニーとして前後に張り出しています。


下流から
クレスト自由越流頂3門、その右手(左岸側)に自然調節式オリフィスを備えたゲートレスダムです。
ゲート上が前後に張り出しているだけで大量生産型のゲートレスダムとは一線を隔す個性的な姿に見えます。


宇城市三角町は温州みかんの産地として知られ、ダムのモニュメントもみかんをモチーフにしています。


天端は車両の通行ができませんが、右岸の車止めが外されています。
しかし対岸では車止めがあるため、進入しても対岸で折り返し。


石打ダムの売りの一つ、石打ダム資料館
熊本アートポリス参加プロジェクトで建設された斬新なデザインが特徴で特に円形ガラス張りの展望室が目を惹きます。
一方で建設時期がバブル期ならばこその建築物ともいえます。
付随施設が同事業に参加したダムとしては八代市の氷川ダム(再)があります。


同様に熊本アートポリス参加プロジェクトで建設された管理事務所。


天端から減勢工とダム下流の眺め。


ダム湖は総貯水容量120万立米。
貯水量の約半分は佐多川からの導水に依ります。


取水設備はヒンジアーム方式の表面取水。


ゲート上のバルコニーにはイラストの陶板が張られるとともに、『ミカンの花咲く丘』の楽譜と鉄琴が枯れています。
いかにもバブル期、余計なものにお金を使う余裕があった時代のダムです。


上流面。


ダム最寄り、JR三角線の『石打ダム駅』
ダム建設に合わせ、地元負担で新設されました。
JR線でダム名が駅名となっているのは全国でもここだけ。



2682 石打ダム(1813)
熊本県宇城市三角町中村
波多川水系八柳川
FNW
38.5メートル
256メートル
1200千㎥/1130千㎥
熊本県土木部
1992年

寺内ダム(元)

2022-05-30 06:00:00 | 福岡県
2022年5月20日 寺内ダム(元)
 
寺内ダムは福岡県朝倉市荷原の筑後川水系佐田川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムで、いわゆる『あさくら3ダム』の一つです。
筑後川は九州最大の河川で古くから流域の水源となる一方『筑紫次郎』の異名を持ち日本屈指の暴れ川となっていました。
1964年(昭和39年)に『筑後川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、以降筑後川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりました。
同公団はまず1972年(昭和47年)に筑後川水系小石原川に江川ダムを建設、次いで1978年(昭和53年)に完成したのが寺内ダムです。
寺内ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで佐田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、両筑平野土地改良区への特定灌漑用水の供給、福岡地区水道企業団福岡県南広域水道企業団等への上水道用水の供給を目的としています。
寺内ダムの流域面積は51平方キロで有効貯水容量1600万立米、一方江川ダムの流域面積は30平方キロで有効貯水容量2405万立米と集水域と貯水量にギャップがあるため、ダム建設と同時に寺内ダムから江川ダム下流の小石原川へ寺内導水路が建設され2ダムが連携した運用が開始されました。
しかし、それでも年間5200万立米の水が無駄になっていましたが、2021年(令和3年)に江川ダム直上に小石原川ダムが完成し、併せて佐田川から江川ダムへの導水路トンネルが建設され、3ダム連携の効率的運用が可能となりました。

一方2017年(平成29年)の九州北部豪雨を契機に2022年(令和4年)に国土交通省は『筑後川水系河川整備計画』を変更、これに併せて翌2023年(令和5年)に寺内ダム再生計画が着手されました。
具体的には非常用洪水吐の改造により総貯水容量及び有効貯水容量を増加、さらに利水容量から洪水調節容量への振り替えにより治水能力の増強を図るものです。
事業の詳細については下記リンクをご覧ください。

ダム湖畔には水のテーマパークである『あまぎ水の文化村』が設置される一方、ダム下は桜の名所として知られており、ダム湖の『美奈宜湖(みなぎこ)』はダム湖百選に選ばれています。 

ダム下流から
向って左(減勢工右岸側)に放流設備があります。


洪水吐は非常用のクレストローラーゲート2門と常用の高圧ラジアルゲート1門。


令和4年5月からこのフェンス内で草刈り担当として『ヤギ』が飼育される予定。


左岸から下流面とゲートピア。

ゲートの上流側
非常用洪水吐のローラーゲートが2門、その間には常用洪水吐の予備ゲートが見えます。


右岸湖畔に並ぶ取水設備と艇庫・インクライン。


洪水吐斜水路と減勢工
下流には九州屈指の穀倉地帯両筑平野が広がります。


ダム湖は美奈宜湖 
総貯水容量1800万立米でダム湖百選に選ばれています。


天端は車両通行可能。


ダム湖百選のプレート。


上流から
左岸ダムサイトに管理事務所があります。


(追記)
寺内ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2430 寺内ダム(元)(1812)
福岡県朝倉市荷原
筑後川水系佐田川
FNAW
83メートル
430メートル
18000千㎥/16000千㎥
水資源機構
1978年
◎治水協定が締結されたダム
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3719 寺内ダム(再) 
福岡県朝倉市荷原
筑後川水系佐田川
FNAW
83メートル
430メートル
19030千㎥/17030千㎥
水資源機構
2023年 再生事業着手