ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

七川ダム

2023-05-25 18:04:16 | 和歌山県
2023年4月23日 七川ダム 

七川ダムは和歌山県東牟婁郡古座川町の二級河川古座川本流にある和歌山県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1953年(昭和28年)の7・18水害(紀州大水害)により和歌山県各河川で甚大な洪水被害が発生し、県は各河川の治水対策に乗り出します。
年間降水量3500ミリと日本屈指の多雨地帯である古座川では同年ダム建設を軸とする古座川総合開発事業が着手され、1956年(昭和31年)に和歌山県最初の補助ダムとして七川ダムが竣工しました。
七川ダムは洪水時に最大毎秒1080立米をカットすることで古座川の洪水調節を行うほか、関西電力佐田発電所《2005年(平成17年)に県企業局から関西電力に移管》での最大出力7200キロワットのダム水路式発電を目的としています。 
さらに2019年(令和2年)には『常用洪水吐きに国内最古の高圧スルースゲートを設置した多目的重力式コンクリートダムで、戦後のダム史上極めて価値ある土木遺産』として和歌山県のダムとしては初の土木学会選奨土木遺産に選ばれました。 

古座川沿いに国道371号線を北上し、七川ダムの標識に従って西に折れると左岸ダムサイトに到着します。
被覆されたゲートハウスを載せたピアと、襟がなく堤頂部から続くスロープが特徴的。


天端は立ち入り禁止
普段はお願いすれば入らせてくれるということでしたが、訪問時はクレストゲートの塗装工事中で断念。
お目当てのスルースゲートを目にできませんでした。
御影石を積んだ親柱がいかにも昭和20年代設計らしい作り。


昭和三十一年三月竣工の銘板
和歌山県最初の補助ダムとして竣工しました。


土木学会選奨土木遺産のプレート。


左岸の繋留設備と巡視船。


ユニークなのがこの野猿風の籠
建設当初はダムで捕捉した流木や塵芥を除去するという視点はなく、河川法の改正で流木・塵芥の放流が禁止されたのに合わせて設置されたとのこと。


ダムで捕捉した流木・塵芥はこの焼却場で処理されます。


ダム下への立ち入りは禁止されていますが、管理人さんにお願いすれば許可がもらえます。
こちらは監査廊入り口。


見上げると管理棟群
手前は旧管理棟で窓ガラスは割れ廃墟の様相



ダム下、洪水吐脇から
非常用洪水吐としてクレストローラーゲート2門、常用洪水吐としてオリフィス高圧スルースゲートを装備。
このスルースゲートを評価して選奨土木遺産に選ばれました。


右岸ゲートは塗装工事中で張りぼて。
ピア上には被覆したゲートハウスが載ります。

洪水吐に下りてみました。
この位置からダムを見上げるのは稀。
竣工から70年近い年月が経ち、導流部や洪水吐擁壁のコンクリートは傷みが目立ちます。


減勢工のシュート部分
こんなショットも七川ダムならでは。


お目当てのスルースゲートを見ることは叶いませんでしたが、ビンテージダムを真下から愛でることができたのでまあ満足。
古座川下流の道の駅そばには日本最大級の一枚岩である『古座川の一枚岩』があります。
約1500万~1400万の熊野カルデラ形成の際に生成された流紋岩質凝灰岩の一枚岩で、地質マニアならこちらも必見。

(追記)
七川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1643 七川ダム(1979) 
和歌山県東牟婁郡古座川町佐田
古座川水系古座川
FP
58.5メートル
154メートル
30800千㎥/25400千㎥
和歌山県県土整備部
1956年
◎治水協定が締結されたダム