ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

長井坂円形分水工

2024-07-17 21:48:03 | 円筒分水工
2024年4月27日 長井坂円形分水工

長井坂円形分水工は福島県安達郡大玉村玉井の阿武隈川水系七瀬川にある大玉土地改良区が管理する円筒分水工です。
安達太良山南東麓の大玉村から本宮町一帯は透水性の高い扇状地が続き水利に乏しく、渇水時には激しい水争いが勃発するなど灌漑施設の整備が強く求められてきました。
特に1924年(大正13年)に上流の当時の大山村と下流の本宮町の間で『鳴俣堰騒動』と呼ばれる激しい水争いが勃発し、両者間で不売買同盟が結成されるなどの大騒動となりました。
このような事態を受け、1939年(昭和14年)に県営農業水利事業により三ツ森ダムが完成、当地での水利事情は大きく改善しました。
その際、ダムの下流約1キロに設けられたのが長井坂円形分水工で、ここで安達太良川と百日川に分水されます。
かつての遺恨が残る中、視覚的に公平感が実感できる円形分水が採用されたのです。
長井坂円筒分水工には2023年(令和5年)3月に初訪しましたがこの時はまだ通水されていませんでした。
翌2024年(令和6年)4月の再訪時に通水中の円筒分水見学が叶いました。

まずは2023年3月の初訪時の写真から
通水は4月中旬からのため、円形分水も空っぽ。
写真左手が上流で、ダムからの水路が通じています。


こちらは上流から
右手の安達太良川と左手の百日川に分水されます。
安達太良川向けには小窓が6か所、百日川向けには小窓が9か所あり、2:3の比率で分水されます。


ここからは2024年4月の通水時の写真。
上の写真とほぼ同じアングル。


ちょっと遅めのシャッターで撮ってみました。


下流から。


ダム湖の渇水時以外は基本灌漑期は流しっぱなし。
農地への補給は下流の取水堰で調整するそうです。

長井坂円形分水工
福島県安達郡大玉村玉井
阿武隈川水系七瀬川
全周溢流式
円筒分水工
分配数2
大玉土地改良区
1939年