ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

高瀬ダム

2015-11-24 10:00:00 | 長野県
2015年11月21日 高瀬ダム
 
高瀬ダムは長野県大町市平の一級河川信濃川水系高瀬川上流部にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的のロックフィルダムです。
高瀬川は北アルプスに源を発する急流河川で、戦前から東信電気による電源開発が進められてきました。戦後高瀬川の発電事業を継承した東京電力は、黒部ダムに匹敵する巨大ダム建設を軸とした高瀬川発電事業再開発を計画します。
しかし発電の中心が火力や原子力に移る一方、エアコンなど電化製品の普及に伴う電力消費の日中格差が拡大し、火力や原子力との親和性が高く巨大蓄電池として余剰電力を有効利用できる揚水発電に注目が集まります。
東京電力は高瀬川の発電事業を一般水力発電から揚水発電に変更し、1978年(昭和53年)にまず下部調整池の七倉ダムが、翌1979年(昭和54年)に上部調整池の高瀬ダムと新高瀬川発電所が完成しました。
新高瀬川発電所では有効落差229メートルを利用し最大出力128万キロワットの純揚水式発電が行われます。
 
高瀬ダムは堤高176メートルと黒部ダムに次ぐ堤高を誇り、日本ダム協会が選定した日本100ダムに、ダム湖の高瀬ダム調整湖はダム湖百選に選ばれています。
一方でダム湖一帯は日本有数の崩落地帯のため予想を超えるペースで堆砂が進み総貯水容量7620万立米に対し有効貯水容量はわずか1620万立米まで縮小し、新高瀬川発電所の発電能力を十二分に発揮できない事態となっています。
現在はオフシーズンにダンプを利用した排砂作業が行われていますが、国交省が2015年(平成27年)に事業着手した『大町ダム等再編事業』により、トンネル及びベルトコンベアを利用した常設的排砂施設の建設が計画されています。
また同事業では高瀬川の治水能力向上のために発電容量から洪水調節容量への振り替えにより高瀬ダム・七倉ダム合わせて1200万立米の洪水調節容量の確保も検討されています。
 
下部調整池の七倉ダムの先の七倉山荘から先は国立公園内の東京電力の管理道路のため一般車両は通行止めです。
かつては東京電力の広報施設である高瀬テプコ館で新高瀬川発電所及び高瀬ダムの見学が行われていましたが、福島第一原発事故によ業績悪化を受けて廃止され、高瀬ダムまではタクシー利用もしくは徒歩での往復を余儀なくされています。
今回は七倉山荘からのダムまでの約5キロを徒歩で往復することにしました。

高瀬ダムは北アルプス表銀座コースの登山口で登山シーズンならば多くの登山者で溢れかえりますが、すでにシーズンオフのためこの日は2つのパーティーが準備をしているだけ。
排砂のダンプが往来する中約1時間の徒歩となります。
 
七倉山荘から約5キロ、目の前に巨大な石の壁が現れます。
 
堤高176メートルをまたぐ巨大なジャンプ台式洪水吐。
 
減勢工。
 
堤体を管理道路が九十九折に登ってゆきます。
 
九十九折を隊列を組んで登る排砂ダンプ軍団。
私の世代はついつい西部警察を思い出します。
 
洪水吐はローラーゲート2門。
 
 
ここからジャンプ台へと下ってゆきます。
 
21台のダンプが一日7往復排砂作業を行っています。
 
右岸から
奥に不動岳が見えます、ここから烏帽子岳に至る尾根が北アルプス三大急登の一つ『ブナ立尾根』。
 
左岸にあるこの施設は常用洪水吐になります。
 
不動沢に堆積した土砂。
 
ダム湖(高瀬ダム調整湖)
ダム湖百選に選ばれ条件が良ければ槍ヶ岳まで遠望できるのですが・・・。
 
堤頂長362メートルの天端。
 
あいにくの天気でダムから北アルプスの絶景を眺めることはできませんでしたが、巨大な洪水吐も含めて日本最大規模のロックフィルの迫力を十二分に満喫することができました。
 
追記
高瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1027 高瀬ダム(0054)
長野県大町市平 
信濃川水系高瀬川
176メートル
362メートル
76200㎥/16200㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1979年
◎治水協定が締結されたダム


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