ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

三島ダム

2025-03-03 08:00:00 | 千葉県
2016年1月21日 三島ダム
2021年2月18日
2025年2月22日
 
三島ダムは千葉県君津市正木の二級河川小糸川本流にある灌漑目的のアースフィルダムです。
小糸川中下流部沿岸は河床が低く、揚水が一般的でない時代は沿岸農地は水源を小河川や天水に依存せざるを得ず慢性的な用水不足に悩まされてきました。
房総地域では昭和に入り干ばつが頻発する一方、昭和恐慌による失業者が増大し農業水利事業と失業対策を兼ねて各所でため池築造機運が高まります。
小糸川沿岸地区でも1939年(昭和13年)に水利組合が結成され、1943年(昭和18)に小糸川上流部の現君津市正木地区にてため池建設工事が着手されました。
しかし、戦争激化や戦後の混乱等で工事は大幅に遅延、1952年(昭和27年)に県営土地改良事業の認可を得たのち1955年(昭和30年)にようやく三島ダムが竣工しました。
運用開始後の管理は水利組合を改組した小糸川沿岸土地改良区が受託し、ダムに合わせて建設された幹線水路を通じ流域約2600ヘクタール(現在は約1500ヘクタール)の水田ににかんがい用水を供給しています。
1968年(昭和43年)には3キロ上流に工業用ダムの豊英ダムが完成し、三島湖から豊英湖一帯は清和県民の森としてキャンプ場や野外活動センターが整備されています。

一方2015年(平成27年)より老朽化対策としてや余水吐の改修が実施されましたが、改修翌年の2018年(平成30年)に余水吐からの漏水が確認されました。
応急処置の甲斐なく漏水は続いたため、2021年(令和3年)から改めて余水吐の抜本的な改修工事が着手され2025年(令和7年)3月竣工予定となっています。 

三島ダムには2016年(平成28年)1月、2021年(令和3年)2月、2025年(令和7年)2月の3度訪問しています。
いずれも何らかの工事が行われていたため、施設をじっくり見て回ることができません。
再改修工事の竣工を待って再訪したいと思います。
掲載写真にはいずれも訪問日時を記載しています。

三島ダムは小糸川の蛇行地点に建設され、蛇行部分をショートカットする形で余水吐が設けられています。
一方、堤体を斜行して旧国道410号線が建設された際、堤体に盛土が施され現地ではどこが天端でどこが堤体なのか?非常にわかりづらくなっています。
下記空撮地図の黄色が小糸川の川筋、赤部分が天端、白矢印が余水吐となります。
(グーグルマップに加筆)

 
堤体を旧国道410号線が斜めに横切ります。
(2016年1月21日)


こちらが天端
上流面はコンクリートで護岸。
(2016年1月21日)

 
天端から見た三島湖
ダムは小糸川の蛇行地点に建設されたため、ダム軸に対して貯水池は斜めの方向に続きます。
総貯水容量は540万立米と千葉県の農業ダムとしては最大規模を誇りますが、上流側でも蛇行を繰り返すため天端から見る限りは540万立米もあるようには見えません。
(2016年1月21日)

 
初訪時は余水吐の改修工事中
写真の余水吐は1955年(昭和30年)の竣工当時のもの。
(2016年1月21日)

 
余水吐導流部は蛇行地点をショートカットして長く伸びます。
こちらも改修工事中。
(2016年1月21日)

 
ここからは2021年(令和3年)の再訪時の写真
ダム下から堤体を見上げます。
道路建設の際に下流側に盛土が施されたこともあり、下流面には凹凸ができ一般的なアースフィルダムとは一線を画すフォルムとなっています。
(2021年2月28日)

 
余水吐減勢工。
(2021年2月28日)

 
余水吐の改修が終わり新たな余水吐に刷新されています。
越流部には大きな切欠き。
(2021年2月28日)

 
左岸沿いに長く伸びる横越流式で、余水吐中央部に導流部が設けられたT字型。
(2021年2月28日)

 
余水吐の改修工事は2017年(平成29年)に終了しましたが、翌年漏水が確認されました。
写真のように越流部上流側に肉付けするなど応急処置がとられましたが効果はなし。
この年から再改修工事が着手されました。
(2021年2月28日)

 
左岸の取水塔。
(2021年2月28日)

 
2025年(令和7年)に3度目の訪問
今回は下流からアプローチ
下流側も工事中でしたが、事前に週末の休工日の立入り許可を得ての見学です。
写真右手の隧道は仮排水路で、ここを利用して取水設備からの水管を刷新しています。
頭上の橋は旧国道410号線ができる前の橋梁ですが、今は老朽化のため立入禁止。
(2025年2月22日)


こちらは調圧水槽
取水塔で取水された水はここから専用のかんがい用水路で下流の受益農地に送られます。
一方、上流の千葉県企業局が管理する豊英ダムから放流された工業用水及び維持放流分はここから小糸川に戻されます。
(2025年2月22日)


右手が余水吐減勢工、左手がアース堤体。
余水吐導流部が蛇行部分をショートカットしているのがよくわかります。
(2025年2月22日)

 
(2025年2月22日)

 
放流口
上記のように千葉県企業局水利権分及び維持放流がここから放流されます。
(2025年2月22日)

 
余水吐減勢工
水量が少ないので直下まで接近できました。
(2025年2月22日)

 
最後に余水吐へ。
再改修工事は訪問時の約一か月後の2025年(令和7年)3月に竣工予定。
(2025年2月22日)

 
老朽化対策工事終了後に発覚した漏水。
4年間かけてきた再改修工事は訪問時の約一か月後、2025年(令和7年)3月に竣工予定です。
ようやく漏水が止まるのか?
無事に工事が竣工した暁にはダム及びかんがい用水路も含めた取材見学を小糸川沿岸土地改良区にお願いしたいと思います。 

(追記) 
三島ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、台風の襲来が予想される場合には事前放流を行う治水協定が締結されました。
 
0662 三島ダム(0204)
千葉県君津市正木
小糸川水系小糸川
25.3メートル
127.7メートル
5400千㎥/5210千㎥
小糸川沿岸土地改良区
1955年
◎治水協定が締結されたダム


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