ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

玉川ダム

2016-08-31 15:25:28 | 秋田県
2016年8月27日 玉川ダム
 
玉川ダムは左岸が秋田県仙北市田沢湖田沢、右岸が同市田沢湖玉川の一級河川雄物川水系玉川にある多目的重力式コンクリートダムです。
雄物川は下流の秋田平野と中流の横手盆地の間に長い狭窄部があるため、豪雨のたびにバックウォーター現象による洪水被害が多発し、その治水は秋田藩時代からの大きな課題となっていました。
雄物川水系の治水ダムによる河川総合開発は1950年(昭和24年)より着手されますが、本流にダム建設適地がなかったことから主要支流へのダム建設が進められ1957年(昭和32年)に玉川に鎧畑ダム、1963年(昭和38年)に皆瀬川に皆瀬ダムが完成しました。
しかしその後も洪水被害が続いたことや、高度成長を受けた利水需要の増加などから新たに建設省により『玉川総合開発事業』が着手され1990年(平成2年)に竣工したのが玉川ダムです。
玉川ダムは国交省東北地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで玉川および雄物川中流部の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、新規灌漑用水の供給、秋田市への上水道及び工業用水の供給、秋田県公営企業玉川発電所での最大2万3600キロワットのダム式発電を目的としています。
玉川ダム建設に際しては工期の短縮及びコストの削減を図るため超硬練りコンクリートを層状に固めるRCD工法が大型ダムとしては初めて採用されました。
一方玉川は上流に強酸性の温泉が湧出しており、その中和も長年の課題となっていました。
建設省は1993年(平成5年)より群馬県湯川の酸性水中和事業の成功を参考に石灰成分注入による中和事業に着手し以降玉川の水質は大きく改善しています。
 
田沢湖から国道341号をひたすら北上、新玉川大橋を渡り高森トンネルを抜けると右手に玉川ダムが見えてきます
 
まずはダム下へ。
国交省直轄ダムだけあって環境整備は素晴らしく、ダム下は公園として整備されキャンプも可能。
放流設備としてはクレストラジアルゲート4門、オリフィス高圧ラジアルゲート1門、コンジット高圧ラジアルゲート2門、利水放流用ジェットフローゲート1門を装備。
 
ダムサイトに上がります。
右手インクラインの建物は『カリヨンの鐘展望台』になっています。
奥は管理事務所。
 
上流から見たゲート群。
ラジアルゲート4門のほか、オリフィス予備ゲート1門、コンジット予備ゲート2門が並びます。
右手は選択取水設備。
 
総貯水容量2億5400万立米のダム湖(宝仙湖)
上流には日本一強酸性(pH1.1)の玉川温泉があります。
酸性水中和事業により石灰成分が投入された影響で天候によりエメラルドグリーンやコバルトブルーに湖面が変わりダム湖百選に選ばれています。
この日はエメラルドグリーンですが陽射しがなくいまいち発色がよくない。
 
下流面。
 
堤体下の公園には『RCD』の植栽。
巨大ダムとしては初めてRCD工法を導入して建設されました。
 
天端。
各種ゲート操作室やエレベーター棟が並び、奥には『玉川ダム』の文字が見えます。
 
減勢工。
 
予約必要なしで内部見学ができました。
土日は選択取水設備とゲート操作室の見学になります。
これは取水設備。
 
放流設備のゲート。
 
ゲート巻き上げ機。
 
ラジアルゲートを間近で・・・。
 
ラジアルゲート開閉装置。
 
障害物なしの減勢工。
右手は秋田県公営企業玉川発電所。
発電は利水従属発電となります。
 
ゲート操作室から見た堤体。
 
予約なしでも見学ができるサプライズ。
平日なら監査廊なども案内してもらえるようです。
 
追記
玉川ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合に事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0394 玉川ダム(0514)
左岸 秋田県仙北市田沢湖田沢
右岸     同市田沢湖玉川 
雄物川水系玉川
FNAWIP
100メートル
441.5メートル
254000千㎥/229000千㎥
国交省東北地方整備局
1990年
◎治水協定が締結されたダム


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