ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

万才溜池

2019-05-29 08:30:08 | 佐賀県
2019年5月23日 万才溜池
 
万才溜池は佐賀県鹿島市山浦の石木津川石木津川源流部にある鹿島市多良岳土地改良区が受託管理する灌漑目的のアースフィルダムです。
佐賀県の有明海沿岸では温暖な気候と地味豊かな地質を活かし昭和30年代より丘陵地でのミカン樹園地開発が進められます。
鹿島市から太良町にかけての多良岳北東山麓では1964年(昭和39年)に約630ヘクタールの樹園地開発・収穫量9000トンを目的とした『国営多良岳農地開発事業』が着手されその灌漑・防除用調整池として1969年(昭和44年)に竣工したのが花取溜池です。
事業全体も1981年(昭和56年)に竣工し、当池のほか花取溜池笹原溜池七曲溜が築造されるとともに延長123キロの配分水路網が整備され、当地域は佐賀県屈指のミカン生産地となりました。
しかし1991年(平成2年)のオレンジ輸入自由化により、ジュース向け原液がほぼ輸入品にとって代わったことで汎用ミカン価格が急落し全国のミカン農家は大打撃を受けます。
当地域でも離農や耕作放棄などが相次ぎましたが、現在は最高級品質の『祐徳ミカン』のブランド化に成功したほかレモン等への品種転換などにより生き残りを図っています。
なお、名称に『溜池』がついていますが国営事業で建設された農業用調整池ということで『農業ダム』の扱いとなりため池データベースにも記載がありません。

今回は中木庭ダム下流の本城集落から隘路の市道を南下して万才溜池に至りました。
標高約440メートルの山中にひっそりと佇む溜池と言いたいところですが、溜池すぐ下で伐採作業が行われておりずいぶん見通しがよくなっています。
手前の道路は伐採のために作られたブルドーザー道です。
堤高17.5メートルですが、見た目はもっと高く見えます。
 
天端から海は見えませんが、溜池の少し北側からは有明海越しに佐賀平野が遠望できます。
 
ダム下に下りてみます。
錆びついたトタン張りの施設、水がごぼごぼなっていますがこれが調圧水槽(減圧水槽)。
ここから専用の配分水路で受益農地に用水補給します。
 
左岸の洪水吐導流部
この穴の元がどうなっているのか?
 
天端は市道で車両通行可能です。
林業従事者の車だと思いますが、1時間ほどの見学中に数台の車が通りちょっと意外な感じ。
 
上の写真のガードレールから見た洪水吐導流部。
 
総貯水容量11万3000立米と小ぶりな貯水池
右手は横越流式洪水吐。
よく見ると貯水池中央に橋が見えます??
 
左岸の斜樋。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
さて気になった橋を見に行きます。
池の中央に掛かる謎の橋。
通りがかった林業関係の方に話を伺うと、もともとここには10軒程度の集落がありこの橋はその集落の名残だそうです。
 
2531 万才溜池(1433) 
ため池コード 412070020
佐賀県鹿島市山浦
石木津川水系石木津川
17.5メートル
128メートル
113千㎥/109千㎥
鹿島市多良岳土地改良区
1973年


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