ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

沈堕ダム(参考掲載)

2023-01-06 18:00:27 | 大分県
2022年11月19日 沈堕ダム
 
沈堕ダムは左岸が大分県豊後大野市大野町矢田、右岸が同市清川町臼尾の一級河川大野川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリート堰堤です。
沈堕の滝は全長約100メートル、高さ20メートルの自然滝で、室町時代の画家雪舟の水墨画でも描かれるなど古くから名瀑として知られていました。
1909年(明治42年)に大分-別府間の路面電車を運営していた豊後電気鉄道(株)は沈堕発電所(当初は最大出力500キロワット)の取水堰堤として滝の直上に沈堕ダムを建設します。
1916年(大正5年)に同社は九州水力電気(株)に併合され、1923年(大正12年)には出力7200キロワットの新沈堕発電所建設に伴い堰堤の嵩上げが実施されますが、これにより滝の水量は激減しただの岩壁となり果てました。
電力国家管理法による日本発送電(株)の接収を経て、戦後の電気事業再編政令により九州電力が事業を継承、1980年(昭和55年)には出力が8300キロワットに増強されました。
一方で大量出水のたびに滝は崩落を繰り返し堰堤が脅かされる事態となります。
そこで九州電力は1996年(平成8年)に岩盤の補強を実施するとともに自然石や擬岩を利用した修景工事を実施し、これにより『直垂分かれて13条をなす』かつての名瀑の姿がよみがえりました。 
旧沈堕発電所遺構はCランクの近代土木遺産に選ばれているほか、沈堕の滝は2007年(平成19年)に国の登録記念物(名勝)に指定され、さらに『おおいた豊後大野ジオパーク』にも選定されています。  
 
沈堕の滝下流の県道26号三重野津原線に『沈堕の滝展望台』があり滝と正対できます。
右手は支流の平井川が落水する『雌滝』。

 
ズームアップ
滝の高さは約20メートルありますが、直上の堰堤は堤高5.5メートルにすぎず河川法上のダムの要件を満たしていません。
沈堕ダムはダム便覧には『参考掲載』となります。


沈堕の滝の下流、大野川左岸に駐車場があり発電所の水車が展示されています。
ただこれは宇佐市安心院町の須崎発電所で使われていたもの。

 
駐車場から滝までは遊歩道が整備されています。
訪問時はちょうど紅葉が見ごろ。


右手の落水は沈堕ダムで取水した水の余水。


滝一帯は阿蘇火砕流による溶結凝灰岩地帯でユネスコの豊後大野ジオパークにも含まれています。
対岸にも節理が見られますが、よく見るとジグザグの筋が見えます。
実はこれ魚道跡。


遊歩道は滝のすぐそばまで続きます。
1996年(平成8年)の修景工事により『直垂に分かれて13条をなす』名瀑が復活しました。


駐車場のすぐ下には1909年(明治42年)竣工の旧沈堕発電所の遺構が残ります。
壁は石積、当時の発電所はレンガ積みが多かったのですが、豊後大野は石積建造物が多く良質の凝灰岩が採取できるためここも石積となったようです。


ちょっとこの写真ではわかりづらいのですが、実は明治42年の竣工記念の銘板で豊後電氣鐡道株式會社や工事請負者として電業社の名が見えます。


駐車場から左岸沿いの道路を進むと滝の真上に出ます。
水利使用標識。


超広角で
手前が取水ゲート。


滝と堰堤をズームアップ
滝の直上に堰堤があるのがよくわかります。
滝の上には修景工事で設置された自然石や擬岩が並びます。
 
S515 沈堕ダム(1935)
左岸 大分県豊後大野市大野町矢田
右岸       同市清川町臼尾
大野川水系大野川
5.5メートル
115メートル
九州電力(株)
1909年


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