2023年5月20日 六角川河口堰
六角川河口堰は佐賀県杵島郡白石町福富の一級河川六角川にある国交省九州地方整備局が直轄管理する治水目的の可動堰です。
干満差による潮位変動が6メートルを超える有明海沿岸では広大な干潟が広がり、有史以来干拓による農地開発が進められてきました。
六角川が貫流する白石平野もその過半が干拓地で、自然排水が困難な軟弱地盤で形成され、六角川自体も河口から約30キロ地点までが感潮区間となっています。
当然台風襲来時には高潮被害が発生するほか、灌漑用水の大半を地下水に依存せざるを得ず地盤沈下による高潮・洪水被害の激化という悪循環となっていました。
こうした状況を受け建設省(現国交省)が1982年(昭和57年)に河口から4.6キロ地点に高潮防御及び六角川流域農地への不特定灌漑用水の補給を目的として建設したのが六角川河口堰です。
不特定灌漑用水への補給については、灌漑期のみゲートを閉鎖し貯留した水を補給するという想定でしたが、閉め切りによる漁業等への影響懸念や、佐賀導水及び嘉瀬川ダムからの補給が開始されたこともあり、現在は高潮防御に特化した運用となっています。
なお、河口堰の堤高は11.5メートルでダムの要件を満たしていませんが、国交省直轄事業による治水ダムとして建設されたため堤高如何に関わらず河川法上のダムとなります。
六角川流域内標高及び地形横断図 (国交省より)
これを見れば流域の過半が満潮時水面以下になることがわかるでしょう。
右岸下流から
河口から30キロが感潮区間となっており、満潮時は川の水面が地上よりも高くなるため、両岸には高さ10メートルの堤防が続いています。
可動堰は右岸側(向かって左)からサイドゲート、閘門ゲート、調節ゲート、主ゲート×4門、サイドゲートとという並び。
写真中央の背の高いゲートが閘門ゲート
漁船航行用の閘門です。
アングルを変えて
下流側閘門ゲート
当所灌漑期はゲートの閉め切りを想定していたため閘門ゲートが設置されましたが、現在は高潮防御時以外は常時開放されています。
右岸上流から。
銘板。
ゲートプレート
ゲートは石川島播磨重工(現IHI)製。
これがなかったらゲートの区分がわかりませんでした。
これは上下2段の調節ゲート
微妙な水位調整を行います。
感潮区間が長く河口堰上流にも船溜まりがあります。
堤頂長226メートル
車両通行もできます。
右岸上流から。
左岸下流から
上記のように今は高潮防御に特化した運用のため、平時はすべてのゲートが開放されています。
撮影場所は河口から4キロ地点ですが、有明海より 遡上する浮遊粘土(ガタ土)が川の両岸に堆積し干潟のようになっています。
いちおう川ですが、ガタ土ではムツゴロウやトビハゼが見られます。
六角川河口側の眺め。
最後に上流から正対。
当初は不特定灌漑用水への補給も併せて建設されましたが、社会情勢の変化もあり運用は高潮防御に特化されています。
ダム便覧ではダムの目的は『FN』となっていますが、『F』が妥当でしょう。
また、令和元年8月豪雨による洪水被害を踏まえ、国交省は六角川水系河川整備計画を変更しました。
2537 六角川河口堰(1993)
佐賀県杵島郡白石町福富
六角川水系六角川
F
MB
11.5メートル
226メートル
3700千㎥/----
国交省九州地方整備局
1982年
ムツゴロウやトビハゼ、本当に見られるんだと、変なところで感心しています。ムツゴロウもトビハゼも・・マンホールのデザインでしか見ていません(^^;)
わたしもダムやため池巡りをしてなかったら死ぬまで耳にすることがない言葉だったかも。
グーグルの航空写真や飛行機の窓から見下ろす佐賀平野は整然と区画整理された農地が続きまるでパッチワークのような美しさです。
でもダムや溜池を回ることでその美しさの下には1000年以上にわたる先人たちの困難と苦労が積み重なっていると思うと灌漑深いものがあります。