ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

霞ヶ浦用水 ダム研見学会 前編

2024-05-24 18:00:00 | ダム見学会
2024年4月22日 霞ヶ浦用水『ダム研見学会』前編
 
昨年8月に日本ダム協会よりダムマイスターを拝命以降、フェイスブックの勉強会グループ『ダム研』メンバーを募って、月に1度のペースでダムや水関連施設の見学会を実施してきました。
4月の見学会の場として選んだのが水資源機構が管理する霞ヶ浦用水事業です。
霞ヶ浦は湖面積220平方キロと琵琶湖につく我が国二番目の湖としてよく知られた存在です。
実はただの湖ではなく、1968年(昭和43年)~1996年(平成8年)に実施された霞ヶ浦開発事業によってダム化され、ダム便覧にも洪水調節・灌漑用水・上水道用水・工業用水を目的とする多目的ダムの『霞ケ浦開発』として掲載されています。
一方、霞ヶ浦用水事業は霞ヶ浦から水利に乏しい茨城県南西部15市2町に灌漑・上水道・工業各用水を導水する事業で1980年(昭和55年)に当時の水資源開発公団(現水資源機構)により着工され、2004年(平成16年)に竣工しました。
当事業には農林水産省、茨城県農林水産部、茨城県企業局が事業参加しこれらを総称して『霞ヶ浦用水事業』としています。
今回の見学会は茨城県かすみがうら市にある水資源機構霞ヶ浦用水管理所にお邪魔し事業のレクチャーを受けた後、管理所に隣接する揚水機場及び管理所から約35キロ離れた南椎尾調整池(つくし湖)を職員様同行で案内していただくという内容です。
参加者は我が家夫婦とメンバーのIさんの3人です。
 
2024年(令和6年)4月22日、約束の10時に対し9時45分ごろに管理所に到着しました。
向かって左手が管理所、右手が揚水機場になります。


敷地内には事業にかかわる様々な展示品や説明板があります。
こちらは玄関先にある霞ヶ浦用水の記念碑。


工事で使われたシールドマシンのカッター
一般的に管水路は開削して行われますが、高速道路や幹線道路、国道などと交差する場合推進工法で施工されます。
これはその際に使用されたもの。


カッターの説明板。


揚水機場で使用されるポンプの模型。


霞ヶ浦用水事業全体の水路が記載された概要図。


揚水機場の施設案内図。


基幹線水路は霞ヶ浦から筑波山をトンネルで貫通し受益地に導水します。
これは筑波山トンネルの地質縦断図
実際の岩石も展示され地質マニアには垂涎の模型。


入館する前からあれこれ見て回り、早くもテンション上がりまくり。
さて、午前10時から職員さんに約30分ほど事業のレクチャーをしていただきます。
実際にはビデオとパワーポイントを使った説明がありましたが、ここでは水資源機構の霞ヶ浦用水事業パンフレットを引用します。
霞ヶ浦用水の受益地は茨城県南西部15市2町ですが、このうち農業用水受益地は13市町の1万9300ヘクタール(水田1万900ヘクタール、畑地8400ヘクタール)となります。
農林水産省による『国営霞ヶ浦用水農業水利事業』に加え県営5事業、団体営3事業によりかんがい排水施設が整備されました。
これらの施設は運用開始後は霞ヶ浦用水土地改良区が管理を受託しています。
実は茨城県の農業産出額4263億円(令和2年度)は北海道、鹿児島県に次ぐ全国第3位となっており、霞ヶ浦用水は茨城の農業に大きく貢献しています。


上水道用水は県企業局『県南西広域水道供給事業』を通じ8市1町に供給しています。


工業用水は県企業局『県南西広域工業用水道事業』を通じ13市1町に供給しています。
そのうちビール製成量はシェ13%と全国1位を誇っています。


基幹線水路60キロのうち、水資源機構が管理するのは霞ヶ浦から鬼怒川までの53キロ部分です。
この間筑波山をトンネルで抜けるため、管理事務所に隣接する霞ヶ浦揚水機場から標高差56メートルをポンプアップしたのち、自然流下で基幹幹線終点の東山田揚水機場まで導水されます。


管理所玄関先にも掲載されていた事業概要図。
各水路のうち青い部分が水資源機構管理区間となります。


霞ヶ浦用水取水施設概要図
これを踏まえたうえで。


管理事務所屋上へ移動
左手が霞ケ浦、正面が吸水層で右手が揚水機場。


揚水機場
8か所の取水口が並びそれぞれ2重のスクリーンが設置されています。


吸水槽左岸側にあるのは霞ヶ浦土地改良区の出島揚水機場。
霞ヶ浦用水事業に合わせて、もともと霞ケ浦を水源としていた霞ケ浦西岸の既得灌漑用水が合口されたものです。
ちなみにこちらは『霞ヶ浦土地改良区』
一方県南西部の用水受益地は『霞ヶ浦用水土地改良区』とけっこうややこしい。


いよいよ揚水機場の見学です。
揚水用ポンプが8台並び奥5台が農水用、手前3台が都市用水用となります。
ポンプ8台の総出力は約2万5000キロワットで最大毎秒10.3立米の水を103メートル揚水する能力を持ち、完成当初は東洋一の規模を誇る揚水機場でした。


揚水機場の説明板。


渦巻型ポンプは一見発電機に似ていますが、発電機が水力で水車を回して発電するのに対し、揚水ポンプは電気の力で羽根を回し揚水します。
天井には巨大なクレーン。


ポンプはすべて日立製
奥の四角い箱が電動機で、横軸で手前の渦巻きポンプの羽根車を回します。

クレーンも日立製
最大荷重は50トン。


電動機の日立のプレート。


これにて午前の部は終了、
なんだかんだで1時間を超える見学となりました。
昼休みを挟んで午後は茨城県桜川市の筑波山西側山麓にある南椎尾調整池を見学します。
最後に管理所すぐ北側の高台にあるサージタンクへ。
点検や改修で揚水を止める際に、水の逆流により水路管が真空状態になり破損するのを防ぐ施設です。

後編に続く。


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