ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

桝谷ダム

2022-08-26 18:00:00 | 福井県
2022年7月27日 桝谷ダム
 
桝谷ダムは福井県南条郡南越前町桝谷の一級河川九頭竜川水系日野川右支流桝谷川にある福井県土木部が管理する多目的ロックフィルダムです。
九頭竜川最大支流である日野川は流路延長71.5キロ、流域面積1275平方キロに及び古くから福井平野の灌漑用水源となってきました。
1976年(昭和51年)に県土木部により広野ダムが建設され治水面での効果が上がりましたが、灌漑用水については夏場の渇水が多く安定した水源確保と灌漑施設の整備が求められていました。
このような中、1991年(平成3年)に農水省による国営日野川用水農業水利事業が着手されます。
同事業には日野川の治水安全度確率引き上げによって広野ダムに容量不足が生じた県土木部も事業参加、両者の共同事業として2005年(平成17年)に竣工したのが桝谷ダムです。
桝谷ダムは2310万立米と広野ダムの2倍以上の貯水容量を持つ一方、流域面積10.2平方キロは広野ダムの4分の1に留まり集水域と貯水量にギャップがありました。
そこでダムと同時に広野ダム上流に二ツ屋分水堰が建設され、日野川本流から桝谷ダムへ導水することで2ダム一体運用により効果的なダム運用が可能となりました。
桝谷ダムの流域面積30.46平方キロのうち直接流域は10.16平方キロに留まり、貯水の3分の2は二ツ屋分水堰からの補給に依ります。
完成後は広野ダム二ツ屋分水堰とともに福井県土木部により統合管理され、日野川の洪水調節、日野川用水土地改良区約5600ヘクタールへの灌漑用水の供給、鯖江市及び武生市(現越前市)への上水及び工水の供給を目的として運用されています。

堤高100.4メートルと県管理のロックフィルとしてはなかなかのスケール。


向って右から放流設備の放流口、桝谷ダム発電所の放流口
一番左は洪水吐減勢工からの水路。


提体と洪水吐斜水路
斜水路は堤体脇の地山に作られています。


ダム下の放流設備と小水力発電所。


左岸に回ります
地山の向こうに白い斜水路が見えます。


天端は2車線幅がありますが、車両は進入できません。


上流面
水位が下がり、上流面には美しい模様が。


天端からダム下を見下ろします
手前が発電所、奥の建屋が放流設備。


右岸の横越流式洪水吐
越流部に切欠きがありこれが常用洪水吐になります。
奥は管理事務所。

上流から見た洪水吐
できれば上から斜水路も見たかったのですが、見える場所がありません。


ダム湖は『ますたに湖』
総貯水容量は2500万立米ですが、集水の3分の2は日野川本流からの導水に依ります。
左手に傾斜式直線多段ゲート。


こちらが二ツ屋導水路吐口
訪問時は水はちょろちょろ。


竣工記念碑裏面には農林水産省と福井県が併記
桝谷ダムは農水省施工で、県土木部との共同事業で建設されたため多目的ダムの括りとしては兼用工作物となります。


(追記)
桝谷ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0951 桝谷ダム(1866)
福井県南条郡南越前町桝谷
九頭竜川水系桝谷川
FAWI
100.4メートル
345.9メートル
25000千㎥/23100千㎥
福井県土木部
2005年
◎治水協定が締結されたダム


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