2017年 5月27日 蔵王ダム
2023年11月 2日
蔵王ダムは山形県山形市上宝沢の一級河川最上川水系馬見ヶ崎川にある山形県県土整備部が管理する多目的中空重力式コンクリートダムです。
山形市街は馬見ヶ崎川によって形成された扇状地上に発展しますが、急流且つ土砂流出量が多く抜本的な治水対策が求められていました。
一方、古くから灌漑用水源となってきた市街東部を流れる須川が昭和初期より酸性化し灌漑用水としては不適となります。
さらに高度成長による都市用水需要の増加を受け安定した水源が求められていました。
当初山形市が馬見ヶ崎川への上水用ダム建設を企図し、のちに県が河川総合開発事業として1970年(昭和45年)に竣工したのが蔵王ダムです。
建設に際してはコンクリートの節約が見込め、県として木地山ダムでの実績のあった中空重力式が採用されました。
蔵王ダムは建設省(現国土交通省)の補助を受けた補助多目的ダムで、馬見ヶ崎川の洪水調節(最大毎秒385立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、山形市への上水道用水の供給を目的としているほか、利水放流を利用した蔵王ダム発電所(最大出力484キロワット)で小水力発電を行います。
蔵王ダムには2017年(平成29年)5月に初訪、ダムマイスターとして最初の見学会を開催した2023年(令和5年)11月に再訪しました。
国道286号の蔵王インター入り口から県道272号経由で蔵王ダムまで約9キロ、車で15分ほどの行程です。
ダムの写真の前に県ホームページ内の蔵王ダム平面図ここでダムの平面図。
中空ダムといっても堤体内部がすべて空洞というわけではありません。
いわゆるダイヤモンドヘッドでブロックごとに空洞空間が仕切られています。
中空ダムといっても堤体内部がすべて空洞というわけではありません。
いわゆるダイヤモンドヘッドでブロックごとに空洞空間が仕切られています。
それを踏まえたうえでまずは初回訪問時の写真から
ダム下や天端は立ち入り禁止で見学ポイントは限られます。
左岸下流から
中空ダムらしく襟がなく堤頂部からスロープが始まります。
利水放流設備であるジェットフローゲートから放流中。
水位が高く中空ダム特有のダイヤモンドヘッド、いわゆるたこ足は見れません。
ダム手前のプラント遺構。
通常ですと目にできるのはこれくらい、見学ポイントが非常に少ないダムです。
ここから先は2023年(令和5年)11月の再訪時の記事となります。
なお、見学会の詳細については蔵王ダム『ダム研見学会』をご覧ください。
まずは初回訪問時と同じアングルで
あれ?電線が消えた??
上流面
水位が低くダイヤモンドヘッドの先端がはっきり見えます。
手前は艇庫でクレーンで船を昇降させます。
奥の赤いゲートはコンジット予備ゲート。
蔵王ダムには取水設備は2基あります。
左岸側は山形市向け上水用で専用水路で浄水場まで送水されます。
ダム湖は蔵王湖
総貯水容量730万立米。
紅葉は見ごろですが、曇天且つ薄く霞がかかるあいにくのお天気。
取水設備はヒンジ式。
右手はワイヤーの案内滑車でワイヤーの巻き上げにより黒いガイドレールに沿ってヒンジが動きゲートを開閉します。
同タイプの取水設備は新潟県佐渡市の大大野川ダムにも設置されています。
こちらはコンジット予備ゲート
蔵王ダムは上流側からの展望ポイントはなく、予備ゲートの全景は見れません。
クレストゲート導流部と減勢工
左手の白い管は利水放流用水路管で、奥に管理用の蔵王ダム発電所があります。
利水放流は放流量によりジェットフローゲートと発電所の兼用もしくは使い分けとなります。
右岸から下流面。
利水放流用のジェットフローゲート。
中空ダムではおなじみ、空気孔からの眺め
まるでキツツキになった気分。
常用洪水吐であるコンジットラジアルゲート。
中空部、上部監査廊から
左手のパイプはプラムライン
プラムラインが露出しているのも中空ダムならでは。
上部監査廊を左岸まで戻り管理事務所へ
こちらはダムコン。
管理事務所からのダムの眺めが素晴らしい。
紅葉と相まって堤体の直線が際立ちます。
今度はダム下へ
堤高66メートル、堤頂長273.8メートル
ゲートは堤体右岸側に寄っています。
非常用区クレストラジアルゲート2門、常用コンジットラジアルゲート1門
利水放流設備としてジェットフローゲート1門
右手の水路管は利水放流用
コンジットゲート上方の大きな穴が先ほど覗いた空気孔。
再び堤体内に入り中空部を見上げます。
まるでダイヤモンドのような美しさ。
基礎岩盤が堤体内に露出しているのも中空ダムだからこそ。
ちなみに岩盤は花崗閃緑岩。日本では普通に花崗岩と呼ばれます。
プラムラインを見上げます。
上の歩廊で16枚目の写真を撮りました。
最後に管理用発電所へ
最近塗装が塗り替えられたようで、青が鮮やか。
上記のように、見学会の詳細については別項で紹介しますが、改めて対応していただいた山形県県土整備部山形統合ダム管理課の皆様には厚く御礼申し上げます。
(追記)
蔵王ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
0435 蔵王ダム(1006)
山形県山形市上宝沢
最上川水系馬見ヶ崎川
FNW
HG
66メートル
273.8メートル
7300千㎥/5200千㎥
山形県県土整備部
1969年
◎治水協定が締結されたダム
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