ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

小俣ダム

2022-08-31 10:00:00 | 富山県
2022年7月29日 小俣ダム
 
小俣ダムは左岸が富山県富山市才覚寺、右岸が同市中地山の一級河川常願寺川水系小口川にある北陸電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した北陸電力は、朝鮮戦争特需を契機とした電力需要急増に対処するために、戦況悪化で工事が中断したまま放置されていた有峰ダムに着目、1956年(昭和31年)に『常願寺川有峰開発計画(JAP)』に着手します。
そして3年後の1959年(昭和34年)に有峰ダムおよび和田川第一発電所(最大出力2万7000キロワット)、和田川第二発電所(最大出力12万2000キロワット)、新中地山発電所(最大出力7万3000キロワット)の運用が開始されます。
さらに翌1960年(昭和35年)に新中地山発電所の逆調整池兼小俣ダム発電所(最大出力3200キロワット)および小俣発電所(最大出力3万2700キロワット⇒3万3600キロワット)の取水ダムとして完成したのが小俣ダムです。
 
県道43号富山上滝立山線を南に折れ、有峰林道小口川線方面に進むと左手に小俣ダムが姿を見せます。
クレストローラーゲート2門を装備、ゲート部分が前面に張り出しています。
またゲート周辺は改修があったようで、コンクリートが白くなっています。


さらに右岸側に『カド』があります。
左奥は建設時の作業員宿泊施設跡。


左岸にはプラントの遺構。


ダムに併設された小俣ダム発電所。
皆さん指摘されていますが、一般にダム式発電所はダムの下流側にあるという印象なんですが、ここは上流側にあります。
発電されたあとの放流水は足元のトンネルから小俣発電所に送られます。


ダム下の様子
左手に調圧水槽があり川沿いの既得灌漑用水路に放流され、一部は河川維持放流されます。


調圧水槽をズームアップ。
金属板で蓋をしてあるのが灌漑用水路。


ゲート部分は下流側にクランク
石灰成分が染み出したコンクリートが60年の時間と風雪の厳しさを示しています。


毎度おなじみ
右岸側の『カド』。


右岸から上流面
ゲートの向こうに取水用スクリーン
こちらから見るとあの位置に小俣ダム発電所が置かれた理由がよくわかります。
小俣発電所への水路トンネルに平行になるようになってるんですね。

総貯水容量76万1000立米のダム湖。


ダム湖越しの新中地山発電所・小口川第一発電所 
一つの建屋に二つの発電所が入っています。 
小口川発電所は1924年(大正13年)に小口川水系で初めて稼働した発電所ですが、小俣ダムにより旧建屋が水没するため、新設された新中地山発電所内に移設されました。
見学中に発電所が運転を開始し、湖面が放流のため渦巻いています。 


(追記)
小俣ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0844 小俣ダム(1877)
左岸 富山県富山市才覚寺
右岸     同市中地山
常願寺川水系小口川
 
 
37メートル 
131.5メートル 
761千㎥/587千㎥ 
北陸電力(株) 
1960年
◎治水協定が締結されたダム


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