2024年3月19日 丸山ダム・丸山浄水場見学
3月中旬よりプライベートな事情で奈良の実家に帰省することになり、そのついでに近隣のダムを見学できないか?いくつか候補を思案していました。
その中で心に引っかかったのが兵庫県西宮市にある丸山ダムです。
このダムには2017年(平成29年)3月に訪問していましたが、ダム下や天端は立入禁止となっており貯水池上流側から遠望するのみでした。
そこで、事前にダムを管理する西宮市上下水道局にダム及び隣接する丸山浄水場の取材を申し込んだところ特別のご配慮で見学させていただけることになりました。
また兵庫県営水道を通じて西宮市に上水道用水を供給している兵庫県川西市の水資源機構が管理する一庫ダムについても同日での内部見学が叶い、3月19日は午前に丸山ダム・丸山浄水場、午後に一庫ダムをそれぞれ職員様同行で見学するという贅沢な一日となりました。
本稿では丸山ダム及び丸山浄水場の見学について記載したいと思います。
丸山ダムの概要については『丸山ダム』の項をご覧ください。
西宮市北部地区では1974年(昭和49年)の中国自動車道完成を機に宅地開発が急展開し、これに対処するために西宮市水道局(現上下水道局)は1975年(昭和50年)に丸山浄水場を、1977年に(昭和52年)に丸山ダムを建設します。
しかし、その後も人口の増加がとどまらず1994年(平成6年)より水資源機構一庫ダムを水源とする兵庫県営水道多田浄水場からの受水が開始されました。
現在では西宮市北部への上水道用水の給水の9割は兵庫県営水道が担っており、丸山ダム及び丸山浄水場はサブ的存在となっています。
西宮市水道事業の概要図(西宮市水道ビジョンより)
これを踏まえたうえでダムと浄水場の見学をすることにします。
こちらは丸山浄水場入口。
当然のことながら関係者以外の立入りは禁止されています。
完成当時の西宮市水道局が改組され上下水道局になったため、門扉のプレートはまだピカピカ。
浄水場管理棟内に置かれたダム・浄水場の模型。
まずはダムへと向かいます。
丸山ダムの売りである紫のゲートが見えてきました。
減勢工の副ダム
切欠きの下流にさらに小さな導流堤があります。
右手の穴はダム湖に隣接するゴルフ場からの水路。
ゴルフ場では除草剤を多用するため、飲料水の水源であるダム湖をバイパスしてダム下流に流下させます。
副ダムをズームアップすると小さなゲートがあります。
これは減勢池内の土砂を排出するゲートです。
こちらの細いパイプはかつて貯水池に隣接していたプールの排水用。
プールは廃止になったため、こちらは今は使われていません。
ゲートを開けてダムの構内へ。
ダムと正対
堤高31メートル、堤頂長71メートル
手前の水路橋は取水設備から浄水場への水管。
ゲートをズームアップ。
これほど鮮やかな紫のゲートはほかには思い浮かびません。
想起できるのは山形の月山ダムのコンジットゲートくらいか?
ついつい同じような写真を何枚も撮ってしまいます。
水路橋から
右手の建屋は放流設備で、下流域の利水需要に合わせて3本の放流管があります。
さらに奥には水位低下用のホロージェットバルブを装備。
もう一度ゲートをズームアップ。
放流設備をズームアップ。
導流部の下部には穴を塞いだような跡
建設時の堤体内仮排水路の跡になります。
3本の放流管
今後下流域での田起こしや田植えが始まるとさらに放流量を増やすそうです。
水路橋から見た減勢池。
水路橋を渡りダムの右岸へ移動
これは取水設備からの管路
この後水路橋を経て浄水場へと続きます。
右岸のフーチングを登ります。
堤高31メートルは基礎岩盤からの高さで、実際に上るのは20メートルほどか?
斜めの管は上記プールからの排水管。
今は使われていません。
フーチングからの下流面。
天端に到着
完成当初は天端は開放されていたそうで、上下流面にフェンスが設けられています。
今も湖岸沿いに道路が通じていますが途中に門扉が設けられ一般の立入りは禁止。
奥の建屋はゲート操作室で止まっている車はメンテナンスの業者さん。
取水設備は3段の多段式。
ゲート巻き上げ機。
天端から減勢工を見下ろす。
ゲート操作室
台風や豪雨の際には職員さんはここに籠ってゲート操作を行い『水道屋がダム屋にならなければいけない』。
下流面。
上流面
奥が上水用取水設備
手前は放流用の取水設備。
ちょっと見づらいが竣工記念碑。
諸元の銅板。
ダムから浄水場に戻ります。
こちらは高架水槽。
急速濾過池の逆洗用の水を貯めています。
横にあるのは分割式の予備ゲート
主ゲートに比べて随分色あせています。
着水井
ダムから送られた原水が流入します。
フロック形成池
薬品を投入した水をかくはん機でかき混ぜ不純物の固まり(フロック)を作ります。
薬品を投入した水をかくはん機でかき混ぜ不純物の固まり(フロック)を作ります。
水中の羽根のようなものが撹拌機。
沈殿池
原水からフロックを自重で沈めます。
沈殿したフロックはガントリーで定期的に排出されます。
正面の山上には丸山配水池があり、ここで浄水された水および兵庫県営水道から受水した水をブレンドして給水しています。
急速濾過池
水を砂と砂利の層に通し、細かい汚れをろ過して透明できれいな水にします。
水を砂と砂利の層に通し、細かい汚れをろ過して透明できれいな水にします。
濾過池の模型。
こちらは濃縮槽
排出したフロックをここで脱水して濃縮します。
丸山浄水場には天日乾燥床はなく、濃縮されたフロックは産業廃棄物として処理されます。
これにて丸山ダム及び浄水場の見学は終了
現在、丸山配水池から西宮市北部地区に給水する上水道用水の約9割は兵庫県営水道からの受水により、丸山ダム及び浄水場は事実上のサブ扱いです。
兵庫県営水道については従来は一庫ダムを水源とする多田浄水場からの受水に依っていましたが、青野ダムを水源とする三田浄水場からの送水管が新たに接続されより柔軟な水運用が可能となりました。
とはいえ、今年は一庫ダムが記録的な渇水に見舞われ取水制限が実施されました。
主役の座を兵庫県営水道に譲ったとはいえ、当面はセイフティーネットとして自己水源を維持する必要性は大きいように思われます。
一方で、人口減少時代となりいずれ水需要が大きく縮小するような事態に備え、中長期的には水道事業のさらなる合理化・広域化は不可避です。
その際、丸山ダム及び浄水場の立ち位置がどうなるのか?ダム愛好家としての立場から非常に気になるところです。
最後に、案内していただいた職員さんの見送りを受けて浄水場を後にしました。
この後午後2時からは水資源機構一庫ダムの内部見学となります。
西宮市上下水道局では一般個人の見学対応はされておりません。
今回はダムマイスターとしての取材要請に対し特別のご配慮で見学の許可を頂けました。
改めて西宮市上下水道局および丸山浄水場の職員の皆様には厚く御礼申し上げます。
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