ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

一庫ダム

2024-04-24 08:00:00 | 兵庫県
2024年3月18日 一庫ダム
     3月19日 
 
一庫(ひとくら)ダムは兵庫県川西市一庫の一級河川淀川水系猪名川左支流一庫大路次川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
淀川主要右支流の猪名川は大阪・兵庫の住宅密集地や阪神工業地帯を貫流するため戦前よりその治水・利水は重要視され『河水統制事業』の対象にもなっていました。
戦後の水道需要増大に対処するため1962年(昭和37年)の「水資源開発促進法」により淀川水系では水資源開発公団(現水資源機構)により河川総合開発が進められることになりました。
淀川右支流の猪名川でも、流域での都市化の進展が著しく治水に加え急激に増大する利水需要に対応するため同公団により多目的ダム建設が進められ1983年(昭和58年)に竣工したのが一庫ダムです。
一庫ダムは一庫大路次川や猪名川の洪水調節(最大毎秒700立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定用水への補給、大阪広域水道企業団及び兵庫県営水道を通じ大阪府及び兵庫県下7市2町への上水道用水の供給を目的としています。
また河川維持放流を利用して一庫発電所で最大1900キロワットの小水力発電を行っています。

一庫ダムは平日・事前予約限定ですが職員様案内による内部見学が可能です。
今回は3月19日に内部見学の予約をしましたが、前日の18日に時間の余裕があったので事前にダム全体を見学、翌19日に内部見学と2日連続での訪問となりました。
3月19日の記載のない写真はすべて3月18日のものとなります。
また見学の詳細については『一庫ダム 内部見学』の項をご覧ください。

川西市街から国道173号線を北上すると一庫ダムの標識があり、これに従うとダムに到着します。
まずはダム下から
堤高75メートル、堤頂長285メートル
減勢工のすぐ下流で一庫大路次川は右手に大きく蛇行します。


下流からの展望ポイントは多く、正面のほか左右両岸からダムを望めます。
非常用洪水吐のクレストラジアルゲート2門、常用洪水吐のコンジットラジアルゲート2門のほか、主管ゲート1条、分岐菅バルブ1条、維持放流バルブ1条、フラッシュ放流用として利水補助バルブを2条と多彩な放流設備を備えています。
昭和50年代のダムらしくコンジットゲートハウスはダムから前面に張り出しています。


こちらはクレストゲート直下の『赤橋』と呼ばれる管理橋からの写真。
これは内部見学での写真となります。
(2024年3月19日)


右岸からラジアルゲートをズームアップ
天端には巻き上げ機はなく、ゲートハウスはゲート横に位置します。


減勢工の副ダム。
減勢池からの放流用ゲートが2門あります。
副ダム堤頂に伸びるパイプはゲート開閉の際の空気管。


天端に上がります。
右岸ダムサイトの管理所裏手にある建設の碑。


天端は県道604号線
亀岡方面への抜け道になっておりそこそこの交通量があります。
親柱には『一庫ダム』の銘板、その上にはダム湖百選のプレート。


右岸湖畔にある艇庫
屋上は展望台になっています。
さすが兵庫、すごい落書きだと思ったら安食慎太郎という洋画家による壁画でした。


展望台から見た上流面
クレストラジアルゲート両側にはグリーンのコンジット予備ゲート
奥は選択取水設備
注目すべきはラジアルゲート上流側の溝
予備ゲート嵌め込み用の溝ですが、嵌め込みやすくするためか傾斜がついています。


天端を徒歩で往復します。
減勢工左岸手前側の建屋は放流設備
その先の白い建屋は管理用発電所
最大出力1900キロワットと一般水力並みの発電能力があります。

ダム湖は知明湖で総貯水容量は3330万立米
知明は貯水池奥の知明山から命名されました。
湖畔各所にキャンプ場や親水公園が整備されダム湖百選に選ばれています。
一庫ダムはこの冬以来記録的な渇水となっており、訪問時も貯水率40%割れでした。


左岸天端から
右手は取水設備


左岸から
対岸のエンジの建物が管理所。


左岸から上流面
グリーンのコンジット予備ゲートが鮮やか。
(2024年3月19日)


管理事務所と艇庫とインクライン。
(2024年3月19日)


上流から遠望
(2024年3月19日)


さすが水資源機構のダム
環境整備も素晴らしく事前予約ながら個人での内部見学も可能。
ただ、今期の一庫ダムは記録的な渇水に見舞われ一時貯水率は20%台まで落ち込みました。
訪問時も40%前後と厳しい運用は続いており、発災しない程度のまとまった雨が欲しいところです。

(追記)
一庫ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1511 一庫ダム(2032)
兵庫県川西市一庫
淀川水系一庫大路次川
FNW
75メートル
285メートル
33300千㎥/30800千㎥
水資源機構
1983年
◎治水協定が締結されたダム


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