ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

当別ダム

2018-09-28 22:36:18 | 北海道
2018年9月21日 当別ダム
 
当別ダムは北海道石狩郡当別町青山の石狩川水系当別川中流部にある北海道建設部が管理する多目的台形CSGダムです。
当別ダム建設事業は1980年(昭和55年)に着手されましたが、水没農地面積が広大なうえに折からの公共事業再検討の風潮の中、反対運動が激化しダム建設事業は一時凍結となります。
しかし、受益地である札幌市と小樽市がダム建設継続を求めたことや、当初計画の重力式コンクリートダムからより建設費が削減できる台形CSGへの型式変更などにより、2005年(平成17年)に『ダム建設妥当』の判断が下され、2012年(平成24年)にようやく竣工に至りました。
当別ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、当別川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、当別地区3194ヘクタールの農地への灌漑用水の供給、当別町・札幌市・石狩市・小樽市で構成される石狩西部広域水道企業団への上水道用水の供給を目的としています。
また当別ダムは日本で初めて台形CSG形式を採用して着工、竣工したダムとなっています。
 
当別ダムを水源とする石狩西部広域水道事業団の概要図
 
ダム下左岸側はダム公園として整備されています。
 
堤高52メートルに対し堤頂長432メートルの横長ダムです。
堤体右岸寄りに自由越流式の非常用洪水吐が6門、中央部に同じく自由越流式の常用洪水吐装備されています。
常用洪水吐の導流面は階段状になっており訪問時は美しい越流を見ることができました。
 
放流をズームアップ
導流面が階段状になっているので、激しい放流よりも薄い放流の方が似合っているかと思います。
 
右岸の道道28号線から。
 
 
上流面
台形CSG型式のため上流面にも傾斜がついており、洪水吐も独特の形状となっています。
また取水設備が2基あるのもこのダムの特徴です。
右手は石狩西部広域水道企業団向けの斜樋でダム下流にある当別浄水場に送られます。
奥は灌漑用水及び放流用バルブ向けの取水設備です。
 
竣工記念碑も台形。
 
台形CSG独特の堤体表面。
 
ダム下には減勢工がありません
カスケード状の導流面が減勢工の役割を担っているのでしょうか?
手前の建屋は低位放流設備、奥は灌漑用水のポンプ室。
 
常用洪水吐には溝があります
試験湛水時にここに板を填め込みサーチャージまで水位を上げました。
 
左岸から俯瞰
上から見下ろすと台形であることがよくわかります。
 
ダム湖の当別ふくろう湖
総貯水容量7450万立米と道営ダムの中では屈指の貯水量です。
当別川上流は豊かな自然が残り『道民の森』として環境整備が進められています。
 
河川法上のダム本堤としては初めて目にする台形CSGダムでした。
まるでスーパー堤防のような横長でおおらかなフォルム、カスケードを下る美しい越流と素晴らしい天気、時間が許せば日が沈むまで眺めていたい、そんな当別ダムでした。
 
(追記)
当別ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0171 当別ダム(1367)
北海道石狩郡当別町青山
石狩川水系当別川
FNAW
CSG
52メートル
432メートル
74500千㎥/66500千㎥
北海道建設部
2012年
◎治水協定が締結されたダム


コメントを投稿