2020年11月21日 木屋川ダム(元)
木屋川(こやがわ)ダム(元)は山口県下関市豊田町大河内の木屋川水系木屋川中流部にある山口県土木建築部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
日本の土木技術理論において大正期から昭和初期にかけて第一人者であった物部長穂は治水と利水を統合し河川を一貫して開発する『河水統制計画案』を提唱、これをもとに内務省は1935年(昭和10年)に『河水統制事業』を採択、全国七河川一湖沼で治水・利水を一貫した河川開発が実施されることとなり、戦後の河川総合開発事業のモデルとなりました。
山口県は『河水統制事業』を積極的に導入し、1940年(昭和15年)に木屋川河水統制事業に着手しますが、終戦後の人員・物資・予算不足により1947年(昭和22年)に建設工事は中断を余儀なくされました。
そこで県はダムの目的に発電と洪水調節を付加し建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムに変更、新たに木屋川総合開発事業として1950年(昭和25年)に事業を再開、1955年(昭和30年)に木屋川ダム(元)が竣工しました。
その後木屋川下流での農地干拓事業が中止になったことで、灌漑用利水容量は工業用水に振り替えられます。さらに高度成長を受けた水需要増加に対処するため木屋川下流に湯の原ダム が建設され新たに205万立米の利水容量が上乗せされました。
現在、木屋川ダム(元)は木屋川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権としての灌漑用水の補給、下関市への上水道用水・工業用水の供給、山口県企業局木屋川発電所での最大出力1850キロワットのダム式発電を目的としています。
しかし、もともと利水ダムとして建設された木屋川ダムの洪水調節容量は小さく、豪雨のたびに『異常洪水時防災操作』いわゆる緊急放流を余儀なくされています。
県は木屋川ダムの堤高を10メートル嵩上げし、有効貯水容量を現在の2108万立米から3730万立米に増大させる再開発事業を採択しましたが、現在は事業調査中の段階で具体的な再開発事業の着工は未定のようです。
木屋川ダム再開発事業完成予想図(山口県土木建築部HPより)
木屋川ダム(元)右岸を県道319号線が通りアプローチは簡単です。
ダム下から。
ダム下右岸(向かって左)に山口県企業局木屋川発電所があります。
クレストにラジアルゲートが3門
戦前の設計らしくゲート部分だけ天端が高くなっています。
左岸側(向かって右手)の導流部下部に排砂ゲートの穴が開いていますが、発電所停止中にここから河川維持放流が行われるようです。
ゲートをズームアップ
厚東川ダムと同じくゲート操作室は被覆されていますが、ピアの建屋は昭和末期に増設されたもののようです。
ダム直下の山口県企業局木屋川発電所
最大出力1805キロワット
訪問時は運転中で放流口から水が流れていました。
ダムサイトに上がります。陰影が付き露出が難しい絵になりました。
ゲート上の操作室はのちに増設されたもの
天端高欄からすぐにバケットカーブが始まっています。
天端は立ち入り禁止。
豊田湖と名付けられたダム湖は総貯水容量2108万立米。
上流からの眺め。
ゲートをズームアップ。
再開発事業の具体的な着工時期はいまだ不明です。
10年20年と言った時間軸で見るべきなのでしょう。
(追記)
木屋川ダム(元)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
2099 木屋川ダム(元)(1586)
山口県下関市豊田町大河内
木屋川水系木屋川
FNWIP
G
41メートル
175.3メートル
21750千㎥/21080千㎥
山口県土木建築部
1955年
◎治水協定が締結されたダム
--------------
3605 木屋川ダム(再)
山口県下関市豊田町大河内
木屋川水系木屋川
FNWIP
G
51メートル
237メートル
38350千㎥/37300千㎥
山口県土木建築部
2007年~
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