ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

横瀬川ダム

2021-12-03 10:00:00 | 高知県
2018年 3月27日  横瀬川ダム
2021年11月21日
 
横瀬川ダムは高知県宿毛市山奈町山田の渡川水系中筋川左支流横瀬川にある国交省四国地方政局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
中筋川の治水・利水を目的として中筋川本流および支流の横瀬川への多目的ダム建設事業が着手され、まず1998年(平成10年)に中筋川ダムが完成します。
しかし経済情勢の変化による利水需要の低減や公共事業に対する世論の厳しい目を受けて横瀬川ダム建設事業は当初計画から規模を縮小し、2016年(平成28年)にようやく本体工事に着手し2019年(平成31年)に竣工しました。
横瀬川ダムは国交省渡川ダム統合管理事務所により直轄管理される特定多目的ダムで、最大毎秒140立米の洪水をカットし中筋川ダムと併せて中筋川下流基準地点で最大毎秒350立米の洪水調節を行います。
また安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、四万十市への上水道用水の供給を目的としています。 
横瀬川ダム建設に際して、ダム建設予定地直下の水神が宿るとされる滝や雨乞いの祠、照葉樹林を保護するためにダム下に減勢工は置かず、世界で初めてダム中段の側水路で減勢を行う『側水路減勢方式』が採用されました。

横瀬川ダムにはまだ建設中の2018年(平成30年)3月に初訪、2021年(令和3年)11月に再訪しました。
2018年(平成30年)はまだ建設工事中の為、ダム右岸上流の見学所からの見学に留まりました。
タワークレーンを使って絶賛打設中。
 
ズームアップ。
 
ここから先はダム完成後の2021年(令和3年)11月訪問時の写真となります。
県道60号線からダムまで立派な取り付け道路ができており、一か所だけダムを望めるポイントがあります。
クレスト自由越流頂6門、自然調節式オリフィス2門装備のゲートレスダムです。
 
横瀬川沿いの旧道を遡上するとダム直下近くまで接近できます。
右手は仮排水路
この奥に保護された滝と雨乞いの祠がありますが、関係者以外は立ち入りできません。
 
取付道路は右岸ダムサイトにある管理事務所へつながります。
堤体は右岸側が緩やかに湾曲しています。
ダム湖の総貯水容量は730万立米と国交省直轄ダムとしては比較的小規模なダム湖。
 
下流面
超広角で撮ったためデフォルメされていますが、クレスト及びオリフィスを越流した水はいったん中段の側水路で減勢し、側水路にある子穴から導流壁のカスケードを伝って流下します。
カスケードで垂直方向の減勢を、ぎざぎざの堤趾導流壁で水平方向の減勢を行います。
 
中段の側水路。
 
導流部最下部
河川維持放流を活用した小水力発電所が行われています。
 
堤体右岸にクライミングウォールがあります。
慈善に観光協会への予約が必要。
 
天端から
超広角のためデフォルメされていますが、二つの細長い穴がオリフィス。
カスケードに合わせてギザギザに作られた導流壁も当ダムならでは。
本来減勢工がある位置にそれがないため、ダムからいきなり河川となります。
 
左岸から
とにかく角度のないところからの撮影なので超広角の出番が増えます。
 
左岸から見た側水路。
 
天端は車両通行可能。
簡略な建屋がいかにもアフターミレニミアムのダム。
 
上流面
右から右岸クレスト3門、オリフィス取水口、選択取水設備、左岸クレストと並びます。
 
世界初の側水路減勢方式採用のため、事前の実証実験から建設に至るまで多くの苦労や紆余曲折があったようです。
ちょっと他所では見ることのない異形のダム、越流の際の水の流れや減勢方法を想像するだけでも楽しくなる横瀬川ダムです。
 
(追記)
横瀬川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
3060 横瀬川ダム(1328) 
高知県宿毛市山奈町山田 
渡川水系横瀬川 
FNW 
 
72.1メートル 
188.5メートル 
7300千㎥/7000千㎥ 
国交省四国地方整備局 
2019年竣工 
◎治水協定が締結されたダム