ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

山神ダム

2023-06-14 19:01:31 | 福岡県
2017年9月20日 山神ダム
2023年5月20日
 
山神ダムは福岡県筑紫野市山口の筑後川水系宝満川右支流山口川上流部にある福岡県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリート・フィル複合ダムです。
福岡都市圏南部の筑紫野市周辺は高度成長期より利便性の良さから福岡のベッドタウンとしてして人口が急増、宝満川や山口川の氾濫原が宅地開発される一方、上水道需要の増加が著しく、治水や水源確保が大きな課題となってきました。
これを受け福岡県は1963年(昭和38年)に山口川上流部への多目的ダム建設事業に着手、1979年(昭和54年)に竣工したのが山神ダムです。
山神ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで山口川および宝満川の洪水調節(最大120立米/秒)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、山神水道企業団を通じた筑紫野市・太宰府市・小郡市への上水道用水の供給を目的としています。
山神ダム完成後も筑紫野市周辺の水需要の増加はとどまらず、山神ダム上流への平等寺ダム建設や山神ダムの嵩上げ再開発などが検討されました。
しかし、バブル崩壊以降の社会情勢の変化により水需要は安定し、また公共工事への世論の厳しい姿勢もあり両事業は中止に至っています。

山神ダムと山神水道企業団の給水概略図(山神水道企業団HPより)
福岡市のベッドタウンとして急速に発展した筑紫野市・太宰府市・小郡市の上水道水源となっています。


山神ダムには2017年(平成29年)9月に初訪、2023年(令和5年)5月に水呑ダム訪問に合わせて再訪しました。
日付のない写真はすべて再訪時のものです。
ダム下から
堤体は右岸側が屈曲しカドになっています。
非常用洪水吐のクレストラジアルゲート2門、常用洪水吐のコンジット高圧ラジアルゲート1門のほか、利水放流設備としてジェットフローゲートを装備。
昭和50年代のダムらしく、コンジットのケートハウスは前面に張り出しています。


堤頂部をズームアップ
堤頂には山神ダムの文字。


右岸ダムサイトに上がります。
ダムサイトには『山神ダム前』バス停。


堤体は右岸側が緩やかに屈曲しカドに。
右岸接岸地点に脆弱地盤があるため、右岸側がフィル堤体となっています。
(2017年9月20日) 


天端は徒歩のみ開放
取水設備が2棟並びますが、手前は山神水道企業団向け取水設備、奥は低水放流用取水設備。


天端からの眺め
眼下は山神集落で小規模ながら棚田が美しい山村です。


総貯水容量298万立米の貯水池。
補助多目的ダムとしては小ぶりなダム湖。


山神水道企業団の水利使用標識。


洪水吐導流部と減勢工。(2017年9月20日) 


減勢工と放流設備
ダム下に調圧水槽があり上水道用水は専用管で山神浄水場に送られます。
ジェットフローゲートから不特定灌漑用水及び河川維持放流が行われています。


ダム右岸に草が刈られた地山があります。
フィルコンバインドダムということで、初めて見たときはこれをフィル堤体と勘違いしました。


左岸天端のクレーン
かつてはこのクレーンで巡視艇の昇降を行っていましたが、今はインクラインが増設され用無し。


上流面
手前が後付けのインクライン。
取水塔の手前にコンジット予備ゲートが見えます。


右岸のフィル堤体。
見た目はわずかですが、実際には右岸屈曲地点から先がフィル堤体となります。


(追記)
山神ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2433 山神ダム(1137)
福岡県筑紫野市山口
筑後川水系山口川
FNW
GF
59メートル
307.5メートル
2980千㎥/2800千㎥
福岡県県土整備部
1979年
◎治水協定が締結されたダム 


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