2021年11月20日 永瀬ダム
永瀬ダムは左岸が高知県香美市香北町永瀬、右岸が同市物部町柳瀬の一級河川物部川本流にある高知県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
物部川は集水域の年間降水量が3000ミリ超と日本屈指の多雨地帯の一方、河川流量の季節変動が大きく洪水や渇水が頻発していました。
県は1934年(昭和9年)に物部川河水統制事業を採択しダム建設を軸とした河川開発事業に着手しますが、戦争激化により具体的な進展はありませんでした。
戦後、河水統制事業は『物部川総合開発事業』に衣替えし建設省直轄事業として1956年(昭和31年)に永瀬ダムが竣工、完成後に高知県に移管されました。
永瀬ダムは現在高知県土木部が管理し物部川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、高知県公営企業局永瀬発電所(最大出力2万2800キロワットでのダム水路式発電を目的として運用されています。
京都府の大野ダムや秋田県の皆瀬ダム、宮城県の大倉ダムとなどととも建設省施工ののち県に移管されたダムの一つですが、永瀬ダムの竣工は特定多目的ダム法施行前になるため、分類としては兼用工作物と言う括りになります。
永瀬ダム両岸を県道が走っていますが、湖岸はいずれも隘路のため下流から県道220号を北上するのが無難です。
ダムと正対するポイントはありませんが、右岸県道217号線から下流面を望めます。
洪水吐はクレストラジアルゲート5門だけ。
ピア上のゲート巻き上げ機は被覆されています。
左岸ダムサイト(向かって右手)の建屋が管理事務所。
ゲートをズームアップ
左右両端のゲートにはカバーがついています。
実は護岸のため両端のゲートは開けることがなく、放流設備としては実質3門となっています。
天端は車両通行可能
ゲート部分はクランク。
県管理のダムですが、施工は建設省
竣工銘板にも建設省中国四国地方建設局の名があります。
ダム銘板。
管理者にかかわらず四国では『〇〇堰堤』と記された銘板をよく目にします。
減勢工は緩やかに左にカーブしています。
河床は放流水の圧力がかかる右岸側が厚くなり、副ダムも右岸側が階段状に強化されています。
副ダムをズームアップ。
豪雪地帯以外では珍しくピアのゲート巻き上げ機は被覆されています。
この建屋は後付けのようです。
ダム湖は『奥物部湖』
総貯水容量は4909万000立米。
左岸から。
左岸堤体直上の浮桟橋と巡視艇。
左岸ダムサイト擁壁に嵌め込まれた銅板。
ダムの説明と諸元が記されています。
ダム湖右岸の柳瀬公園パーキングから湖畔に降りることができます。
上流面を遠望。
ゲートをズームアップ
両端のゲートにカバーがついているのがよくわかります。
取水設備を探しましたが見当たりません。
帰宅後調べたところ発電用の取水口はダムの南約1.6キロ、支流の舞川にあることがわかりました。
後の祭り…
(追記)
永瀬ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
2309 永瀬ダム(1748)
左岸 高知県香美市香北町永瀬
右岸 同市物部町柳瀬
物部川水系物部川
FNP
G
87メートル
207メートル
49090千㎥/41470千㎥
高知県土木部
1956年
◎治水協定が締結されたダム
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