ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

七曲溜池

2023-06-27 17:12:13 | 佐賀県
2023年5月21日 七曲溜池

七曲溜池は佐賀県鹿島市飯田にある鹿島市多良岳土地改良区が管理を受託する灌漑目的のアースフィルダムです。
佐賀県の有明海沿岸では温暖な気候と地味豊かな地質を活かし昭和30年代より丘陵地でのミカン樹園地開発が進められます。
鹿島市から太良町にかけての多良岳北東山麓では1964年(昭和39年)に約630ヘクタールの樹園地開発・収穫量9000トンを目的とした『国営多良岳農地開発事業』が着手されその灌漑・防除用調整池として1969年(昭和44年)に竣工したのが花取溜池です。
事業全体も1981年(昭和56年)に竣工し、当池のほか花取溜池笹原溜池万才溜池が築造されるとともに延長123キロの配分水路網が整備され、当地域は佐賀県屈指のミカン生産地となりました。
しかし1991年(平成2年)のオレンジ輸入自由化により、ジュース向け原液がほぼ輸入品にとって代わったことで汎用ミカン価格が急落し全国のミカン農家は大打撃を受けます。
当地域でも離農や耕作放棄などが相次ぎましたが、現在は最高級品質の『祐徳ミカン』のブランド化に成功したほかレモン等への品種転換などにより生き残りを図っています。
なお、名称に『溜池』がついていますが国営事業で建設された農業用調整池ということで『農業ダム』の扱いとなりため池データベースにも記載がありません。

左岸から
堤体中段上部に犬走があり、ドレーン水路管が埋設されています。


天端は車両通行可能。


総貯水容量は6万9000立米で国営多良岳農地開発事業で建設された4つの溜池の中で最少。
七曲水槽から導水された水がいったん当池に貯留されたのち配分水路で受益農地に補給されます。


親柱の『七曲調整池』の銘板。


上流面
左岸に越流式の洪水吐があります。


洪水吐導流部。


アングルを変えて。


天端からは有明海が遠望できる『海が見えるダム』。


堤体上流中央にある取水設備と流入管。


右岸から。


上流面。

右岸の機械室
建屋の横に調圧水槽があります。


ダム下はルートが見つからなかったので下りませんでした。

2532 七曲溜池(1997)                           
佐賀県鹿島市飯田
飯田川水系飯田日当川
15.3メートル
133メートル
69千㎥/66千㎥
鹿島市多良岳土地改良区
1972年


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
海が見えるダム (tibineko)
2023-06-27 18:30:11
今日の七曲溜池で、有明海が遠望できるダムという描写を、
「ああ、こんな風に見る事が出来るんだと」と実感しました。

実際に自分の目で見る、はるか遠くの有明海は、また格別のものが有るのだろうと思いながら。
返信する
ミカンの丘は (まっち)
2023-06-27 20:34:30
ここもミカン樹園地向け水源。
ミカン樹園地は気候温暖な海に面した丘陵地が多いですから、必然的に海が見える確率は高くなります。
ただ、もう少しすっきりした晴れならば海もきれいに見えたのですが、この日は黄砂。
目では海が見えてもカメラがそれを視認してくれない。
この写真もあれやこれや画像をいじくって何とか海を浮かび上がらせた苦労の作品です。笑
返信する

コメントを投稿