ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

宮川ダム

2023-05-09 18:08:58 | 三重県
2023年4月22日 宮川ダム 

宮川ダムは三重県多気郡大台町久豆の一級河川宮川本流にある三重県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
日本一の降水量を誇る大台ヶ原を水源とする宮川は東海有数の暴れ川で、宮川自身が形成した下流の広大なデルタ地帯では洪水被害が絶えませんでした。
一方戦後の電力不足を受け、包蔵電力豊富な宮川での電源開発が喫緊の課題となっていました。
1951年(昭和26年)に三重県は宮川上流部への多目的ダム建設を軸とした宮川総合開発事業を採択、これに発電事業者として三重県企業庁が事業参加し1956年(昭和31年)に竣工したのが宮川ダムです。
宮川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムで、洪水時には最大1000立米/秒をカットすることで宮川の洪水調節を行うほか、安定した河川流量の維持及び不特定灌漑用水への補給、三重県企業庁(2015年に中部電力に移管)宮川第一および第二発電所でのダム水路式発電(計最大出力5万4200キロワット)を目的としています。
なお宮川第一・第二ダムの放流水は流域変更されそのまま太平洋に放流されます。
また宮川総合開発事業の一環として農林省(現農水省)による国営農業水利事業宮川用水地区が着手され、宮川ダムの不特定利水容量により用水不足が生じた場合に約5000ヘクタールの水田に補給を行います。
さらに2003年(平成15年)には河川維持放流を利用した宮川ダム発電所(最大出力316キロワット)が増設されました。

三瀬谷ダムから宮川沿いを約20キロ、30分ほどのドライブで宮川ダムに到着します。
ダムの下流、大杉簡易浄水場から定入滝の道標に従って堤防上の歩道を200メートルほど歩くとダムの下流に飛び出します。
このアングルからの写真はダム便覧や各種訪問記等でも皆無です。ちょっと地図を見て調べればすぐにアプローチできる場所なのに?

堤高88.6メートル、堤頂長231メートルは昭和20年代着手のダムとしてはかなり大規模。
非常用洪水吐としてクレストに深紅のローラーゲート3門を備えるほか、常用洪水吐となるハウエルバンガーバルブ、不特定利水放流用ジェットフローゲート、河川維持放流用コーンバルブを備えています。
訪問時はすでに灌漑期で、宮川用水土地改良区向け不特定利水放流が行われていました。


ゲートをズームアップ。
昨年ゲートの改修工事が竣工、再塗装された深紅のゲートが鮮やか。
導流壁は中段で両側に膨らむ独特の形状。
また東海地方のダムでは珍しくゲートハウスが被覆されています。


左岸から。


上流面。
手前は2006年(平成18年)に新設された多段式選択取水設備。
従来の取水口は低水部にあり冷濁水取水のみであったため、河川環境に悪影響を及ぼすとともに、灌漑用水には不適でした。


天端から
副ダムの形状も独特。


ダム湖は大杉湖
総貯水容量7050万立米と補助ダムとしてはかなりの規模。
今年の春は少雨で、水位は低め。


右岸から
対岸に管理事務所があります。


放流設備をズームアップ
4月11日から灌漑期となり、ジェットフローゲートから宮川用水土地改良区向け不特定利水放流が行われています。
その左手は常用洪水吐となるハウエルバンガーバブルブ、最下段に小水力発電を行う宮川ダム発電所があります。


下流面
堤体に並ぶ正方形の白い部分は、昨年まで行われていたゲート改修工事の足場跡をモルタルで埋めたもの。

天端は車両通行可能
ゲート部分だけ下流側にクランクしています。


艇庫とインクライン。


上流面
ゲートは下流の赤とは対照的な青の塗装
こちらも昨年塗り替えられたばかりで色鮮やか。


(追記)
宮川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1306 宮川ダム(1974)
三重県多気郡大台町久豆
宮川水系宮川
FNP
88.5メートル
231メートル
70500千㎥/56500千㎥
三重県県土整備部
1956年
◎治水協定が締結されたダム 


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