ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

クチスボダム

2023-05-11 18:29:01 | 三重県
2023年4月22日 クチスボダム 

クチスボダムは三重県尾鷲市南浦の銚子川水 系又口川にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリート・フィル複合(フィルコンバインド) ダムです。
戦後の電力不足の中、日本有数の多雨地帯を水源とし包蔵電力豊富な新宮川水系では半官半民の電源開発(株)が発電事業を担い1950年代半ば(昭和20年代末)より電源開発に邁進します。
新宮川二次支流東ノ川では発電に供した水を流域変更して太平洋に放流する尾鷲分水が着手され1961年(昭和36年)にクチスボダムと尾鷲第二発電所が、翌1962年(昭和37年)に坂本ダムと尾鷲第一発電所が竣工しました。
東ノ川の坂本ダムで取水された水は約7キロの導水路で尾鷲第一発電所(最大出力4万キロワット)に送られ、放流水は流域変更して銚子川水系又口川に放流されます。
又口川のクチスボダムは第一発電所の逆調整池を兼ねており、ここで取水された水は尾鷲第二発電所(最大出力2万5000キロワット)を経て再び流域変更し、中川経由で太平洋に放流されます。
発電により流域変更されるケースはままありますが、2度の流域変更を伴うのはここだけじゃないでしょうか?

またクチスボダムは本州では珍しいカタカナ表記のダムとなっています。
クチスボは漢字で表記すると『口窄』となり文字通り狭隘な谷筋を示す地名です。

尾鷲市街から国道とは名ばかりの425号を西進、矢所橋からダムと正対できます。
クレスト越流頂にはローラーゲートを装備、右手にわずかにフィル部分が見えます。
放流は河川維持放流。


よく見える場所がないかと河原に下りてみたものの…
橋の方がよく見える。


ダム左岸を国道425号が通ります。
天端を含めダム構内は立ち入り禁止。


水利使用標識
坂本ダムの水利権は21立米/秒ですがここは25立米/秒
銚子川水系での取水分だけ多くなっています。


左岸のフィル部
さすが電源開発、手入れが万全で芝生状態。


天端。


上流面
フィル部分はロック材で護岸。


ダム湖(クチスボ貯水池)は総貯水容量196万立米
第二発電所の取水工は対岸の上流側にあります。


インクラインと巡視艇。


ダムの上流1.2キロにある尾鷲第一発電所
有効落差225.3メートル
発電用水の大半は新宮川水系東ノ川の坂本ダムから流域変更され導水されています。


山中のサージタンク
けっこうな高さにあります。


(追記)
クチスボダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1308 クチスボダム(1975) 
三重県尾鷲市南浦 
銚子川水系又口川 
 
GF 
35メートル 
98メートル 
1960千㎥/690千㎥ 
電源開発(株) 
1961年 
◎治水協定が締結されたダム 


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