今回はミソサザイ。以前キクイタダキ、エナガとともに、「小さな3きょうだい」として一度紹介したことがあるが(2020.04.10 公開 )、それから2年ほど過ぎて、この間にミソサザイに出会う機会も増え、写真もたまってきたので、改めて紹介しようと思う。
ほとんど雲場池周辺での観察になるが、冬から春にかけてよく見かける。冬の間は地鳴きのティ、ティという声で気がつくことが多いが、春が近くなると複雑で長くよく通る声でさえずるようになり、鳴き声のする方を見ていると、雲場池の周辺や別荘地の池周辺の石組みの間を、いそがしく動き回りながら、時々石の上や周囲の枝などにとまって、さえずる姿を見ることができる。
名前の由来が、ミソ色のササイな鳥という(俗)説もあるくらいで、地味な色で、しかも小さく目立たないので、一般に目にする機会はそれほど多くないと思われるが、体の大きさの割にはとても大きな声でさえずるので、この声の主がミソサザイだと知ると、見つけるのはやや難しいが、存在そのものはすぐに確認できる。
いつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育社発行)によると、
「ごく小型でかっ色。尾は短かい。嘴峰10~13mm、翼長45~54mm、尾長27~38mm、跗蹠16~19mm。上面は茶褐色で背以下尾に至るまで黒色の小さな横しまがある。眉はんは黄かっ色で不明瞭。下面は上面よりやや淡く下胸部以下には上面と同様の横しまが密在する。
夏期亜高山帯の森林中に多いが、低山帯で繁殖するものもある。登山道や谷川に沿って生息するものが多い。短い尾を立てて岩角や切株の上に止まりチョㇿㇿㇿッと高らかに美声でなく。冬期には山すそ地方に漂行し小川沿いのやぶや人家の生垣などにも飛来し、チョッ、チョッとなきながらやぶを潜行する。
分布は、北海道・本州・伊豆七島(大島)・四国に生息繁殖する。」とある。
この本には亜種として、伊豆七島のモスケミソサザイ、九州から壱岐・対馬に生息するツシマミソサザイ、種子島・屋久島のオガワミソサザイが紹介されているが、別の図鑑(野鳥観察図鑑 成美堂出版発行)には、南大東島の亜種ダイトウミソサザイは環境庁の調査で絶滅したことが記されている。
さて、そのミソサザイ。最近撮影した動画から見ていただく。前述のとおりなかなかの美声である。
ミソサザイの囀り(2022.3.15 撮影)
この時は、1回だけのさえずりで終わっているが、何度も繰り返し鳴き続けることもある。雲場池の散歩を始めた頃は、この鳴き声の主が判らないでいたが、ある時すぐ目の前でミソサザイが大きく口を開いてさえずるところに出会ってからは、特徴ある鳴き声を覚えてしまった。
それからというもの、鳴き声を頼りに辺りを探して、声の主を撮影できるようになった。以下こうして撮影した写真を見ていただく。
はじめに大きく口を開けてさえずる様子から。

橋の欄干の支柱の上でさえずる雲場池のミソサザイ、この時は片足立ちになっていた(2022.3.10 撮影)

切株の上でさえずる雲場池のミソサザイ(2022.3.8 撮影)

さえずる雲場池のミソサザイ(2022.3.8 撮影)
次は、北軽井沢の魚返しの滝周辺で撮影したもの。周囲に響き渡る大きな声で鳴いていた。

さえずる北軽井沢のミソサザイ(2021.6.23 撮影)

さえずる北軽井沢のミソサザイ(2021.6.23 撮影)
さえずる場所は、岩の上、樹上、杭や切り株の上などであるが、雲場池ではお気に入りの場所があるようで、同じ場所に止まるのを見かける。

杭の上に止まる雲場池のミソサザイ(2022.3.10 撮影)

杭の上から飛び立つ雲場池のミソサザイ(2022.3.10 撮影)

雲場池の樹上のミソサザイ(2022.3.15 撮影)

雲場池の樹上のミソサザイ(2022.3.15 撮影)
別荘地内の池周辺の石組みで、いそがしく動き回るが、昆虫やクモなどの餌を探しているのだとされる。

別荘地内の池周辺の石組みで、昆虫やクモなどの餌を探すミソサザイ(2022.2.9 撮影)

別荘地内の池周辺の石組みで、餌を探すミソサザイ(2022.2.9 撮影)

別荘地内の池周辺の石組みで、餌

地上で背伸びをして辺りを窺うミソサザイ(2020.4.29 撮影)
ミソサザイの繁殖期は5-8月で、森の中のがけ地や大木の根元などにコケ類 や 獣毛 等を使って壷型の巣を作るとされる。オスは自分の縄張りの中に2個以上の巣を作るが、作るのは巣の外側のみで、実際の繁殖に使用されるものは、作られた巣の内の1個のみであり、巣の内側はオスとつがいになったメスが完成させるという。
まだ、こうしたミソサザイの巣を雲場池周辺で見た事はないが、次の写真はその巣の材料を集めている所だと思われる。
ミソサザイの巣には特徴があり、通常の壷巣は出入口が1つのみであるが、ミソサザイの場合は、入口と出口の双方がそれぞれ反対側に設計されているのだという。抱卵・育雛中の親鳥が外敵から襲われると、中にいる親鳥は入り口とは反対側の出口から脱出することができるといわれているが、ぜひこうした構造の巣を見てみたいものである。

巣作り用の材料を咥えるミソサザイ(2020.4.25 撮影)
小鳥の飛翔する様子を撮影するのは難しいが、ミソサザイの場合も同様で、飛翔している姿を捉えることができたのは今のところ次の1枚だけである。

飛ぶミソサザイ(2022.3.8 撮影)
日本では話題になることの少ないミソサザイであるが、ヨーロッパの陶磁器類やガラス器の絵柄として結構用いられており、妻がミソサザイ好きという事情もあって、我が家には前回紹介したカップ&ソーサーの他にもミソサザイを描いたマグカップやゴブレットなどがいくつかあって次のようである。

ミソサザイの描かれているマグカップ 1/3

ミソサザイの描かれているマグカップ 2/3

ミソサザイの描かれているマグカップ 3/3

ミソサザイの描かれているミルク・ピッチャー

ミソサザイが彫刻(エングレーヴィング)されたウォーターゴブレット