まつお文庫からのご案内

仙台市若林区中倉3-16-8にある家庭文庫です。水・土の3時~6時(第2土は休み)どなたでも利用できます(無料)。

新しく買った本 2月

2023-02-16 15:08:07 | 文庫のページ
①『ぼくとお山と羊のセーター』  飯野和好 偕成社 2022.10
 秩父の山間の3軒しかない集落に生まれた飯野さんの小学生の頃の物語です。1947年生まれの飯野さんですから、今から70年近く前の話です。家族総出で家畜の世話をし、茶畑で働き、お蚕を育てる、そんな暮らしの様子が力強いタッチの絵で語られています。動物も人間もとてもいい表情です。生きるエネルギーにあふれた絵本です。
 羊の世話をする「ぼく」は、この羊の毛で来年は自分のセーターを作ってもらえるのです。それを楽しみに待つ「ぼく」の喜びが豊かに伝わります。
 福音館書店の月刊誌「こどものとも0.1.2」の12月号の折り込み付録で飯野さんが子ども時代のことに触れています。とても興味深く読んだのですが、この絵本が出ていることは知りませんでした。落合恵子さんがラジオ「絵本の時間」(1月29日)で紹介してくださって、タイミングよくこの絵本に出会うことができました。
②『とんでいったふうせんは』ジェシー・オリベロス/ダナ・ウルエコッテ 落合恵子訳 絵本塾出版 2019.9
 男の子とおじいちゃんが持つ色さまざまな風船が描かれた大判の白い表紙が印象的です。この風船にはその人の忘れられない思い出が詰まっているのです。だから長い年月を生きたおじいちゃんは男の子よりたくさんの風船を持っています。
 男の子はおじいちゃんの風船の話を聞くのが大好きです。おじいちゃんも男の子に語るのが大好きです。ところがいつからかおじいちゃんは語らなくなります。大事に握っていた風船も話してしまいます。男の子は悲しみますが、お母さんの一言に救われます。
 認知症になった祖父と孫のすてきな物語です。
③『海のアトリエ』 堀川理万子 偕成社 2021.5
 『きつねのスケート』(湯本香樹実 徳間書店1998)の絵を見た時からとても心惹かれている堀川理万子さんのすてきな絵本です。この絵本で小学館児童出版文化賞、講談社絵本賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞の3つを受賞しました。
 おばあちゃんの部屋に飾ってある女の子の絵を見つめて尋ねる孫娘。その絵を描いてもらった頃、海のそばのアトリエで、絵描きのおばさんと一緒に過ごした一週間について語り始めるおばあちゃん。祖母と孫とのすてきな時間が流れる物語です。
 子どもを子ども扱いせず、しっかり向き合う画家の生き方が魅力的です。窓の向こうに広がる海、時間によって姿を変える海、そんなアトリエでひたすら絵を描き続ける画家の後ろ姿、そして確かな生活スタイル、そんな一人の女性と過ごした濃密な時間が絵を通して豊かに語られます。
 群青の海の色が美しいです。絵の中に流れる時間がいとおしくなります。
④『私のことば体験』 松居 直 福音館書店 2022.9
 月刊誌「母の友」2009年4月号から2011年3月号に連載された「わたしのことば体験」をまとめたものです。福音館書店の創立70周年を記念して美しい装丁で出版されました。表紙が美しいです。安野光雅さんのさし絵もうれしいです。
 福音館書店で編集者として長く子どもの本に関わってきた松居さんの興味深い自伝です。幼少の頃のことば体験では、お母さんが語った「絹ごしの雨」という言葉が印象に残ります。大学卒業後のこと、月刊誌「こどものとも」の発行のこと、たくさんのロングセラーの絵本を出版してきた松居さんの絵本に対する深い思いに改めて触れることができる貴重な本です。
 この本が出版されて2か月後、11月2日に松居さんはお亡くなりになりました。96歳でした。感謝の思いを込めて、心よりご冥福をお祈りします。
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寄贈本 2月

2023-02-16 10:33:45 | 文庫のページ
寄贈本  ありがとうございます。
◆足利の須長和子さんからいただきました。
『障害とバリアフリー いっしょに生きる 子どもガイドブック」 障害と本の研究会 かもがわ出版 2022.11
障害とバリアフリーについて考えることのできるⅠ44冊の本を紹介した貴重なガイドブックです。8つの項目に分けて絵本から児童文学までを網羅し、カラーの表紙と丁寧なコメントで紹介しています。<新しく買った本>で紹介した『とんでいったふうせんは』は3つ目の項目「自分らしく生きる」の中の<いっしょに歩もう>で紹介されている絵本です。
◆青葉区にお住いの伊達凛太郎(ペンネーム)さんからいただきました。
①『愛の沈丁花』 文芸社 2008.9
②『青の軌跡』 文芸社 2012.11
③『東日本大震災 涙の彼方に虹がある』 株式会社ヒロエンタープライズ 2014.3
3冊とも一般書で、作者は伊達凛太郎さんです。
1月15日の読売新聞の文庫の記事を見て、雪の中、水曜日の文庫の日、わざわざ届けてくださいました。75歳で初めて小説にチャレンジして出版した作品が『愛の沈丁花』です。どの作品もひたむきに誠実に生きる登場人物の姿が心に残ります。現在90歳になられますが、まだまだ書きたいことがいっぱいあるとおっしゃっています。
◆広野多珂子さんからいただきました。
『はなやさん』 広野多珂子 かがくのとも3月号 福音館書店2023.3
花屋さんを描いた絵本です。表紙はもちろん、どのページもたくさんの花でいっぱいです。まだ寒い日が続きますが、一気に春が来たようでうれしくなる絵本です。花びらも葉っぱも一枚一枚、心を込めて丁寧に描かれ、どの花も生きています。広野さんだからこそ描けた花屋さんの絵本です。
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