☆・・・これは素晴らしい出来だった。
新海誠監督の作品は初めてで、私は「同人アニメ監督」程度にしか思っていなかった。
もちろん、「食わず嫌い」だった。
見終えて、「こりゃ、もう、ジブリ不在でも邦画アニメ界は平気じゃん」と思った。
とてつもなく、端正に、手の行き届いた作品であった。
東京と田舎に住む少年と少女の心が、睡眠を経て、たびたび入れ替わる。
繰り返され、両者は現状を認識し始める。
田舎の自然と退屈は、女子高生の可愛らしさとともに描かれ、
東京の幾何学と雑踏は、少年の純粋さとともに描かれる。
入れ替わる男女は、それぞれの周囲に新たな魅力を振りまく、
いつしか、会ったこともないのに、お互いに恋している二人。
お互いの「現実」を求めた時、お話はとてつもない時間と空間を広げた世界に突入していく。
凄い!
情感を描く箇所が散漫のように思えて、後からそこに無駄のなかったことに気づかされる脚本。
ちゃんとアニメであることを忘れていない、されど緻密な絵柄。
ヒロイン三葉の、まだまだ小さい身体、特に胸^^
物語の整合性で一番重要であったテッシーが、三葉の非現実的な話を信じられたのは、・・・そうか! 『月刊ムー』を愛読していたからか!^^
奥寺先輩の、メチャ魅力的だが、5年後の再会の輝きのいまいちも演出だろう。
枚挙にいとまがないが、計算され尽くしているのがわかる。
そして、悲劇に突っ走っていく話が、ハッピーエンドを迎えるのが、最高に良かった。
世の中には希望が必要で、だからこそ、新たな「旗手(新海監督)」には希望を語って欲しかった。
一か所だけ不満がある。
三葉は、田舎の村の代々伝わる神職の巫女でもある。
毎年、神事を行う。
巫女の三葉がコメをクチャクチャと噛み、それを吐き出し、発酵したものを酒として神社のお供えとする「口噛み酒」の儀式があるのだが、それを恥ずかしがる三葉に、小学生の妹が「女子高生巫女の口噛み酒として売ればバカ売れよ」とか言うのだが、
それは、小学生の女の子の発想とは思えない。
作り手の年代の妄想を挿入しないで欲しい・・・。
(2018/08/28)