☆ジョージ秋山原作の「人肉食い」などで話題になり、主人公の世を恨んだような立ち居振る舞いとともに問題作とされてきた作品。
残念ながら、そのマンガ作品を、私はタイムリーには知らない。
この「アシュラ」や「銭ゲバ」のはるか後に、私は小学生となりマンガを読み始めた。
だが、「花のよたろう」の頃は知っており、ほのぼの系の絵柄だったのに、主人公が殺人を犯してしまいそうになるストーリーに、小学校低学年だった私は、強迫観念に駆られ、異常な恐怖を感じた記憶がある。
だから、この「アシュラ」や「銭ゲバ」が、時代に与えた恐怖の片りんは感じとれる。
なお、「花のよたろう」と時を同じくして、中年誌で「浮浪雲」がはじまっており、当初はハードな展開で、小学校の高学年ごろに読んで、私は「フェラチオ(もちろん江戸が舞台なのでそんな言葉は出ない)」っちゅうのを初めて知った。
「いやはや、こんなんあるんだ。やらしいことってとてつもなく奥が深いな」と思った^^;
だが、さて、その後、「アシュラ」や「銭ゲバ」にしても「ザ・ムーン」にしても、問題作として身構えて読むので、それほどの衝撃が私には無く、
なによりもジョージ秋山の画風・作風が、余白を大事にして、行間を読ませるような形なので、私にはどうしても展開が希薄に思えた。
今回、その「アシュラ」がアニメ映画化された。
こじつければ理由はあろうが、私としては、どう考えても時代にそぐわない気がした。
それでも、私のいつもの映画行動範囲から距離を隔てた場所まで、この「アシュラ」を見に行ったかと言うと、
「断片的にしか知らない この話の全てを知りたい」と感じたからだ。
絵のグレードは凄まじく高く、中世の山間部の自然の描写は美しい。
法師の顔、その骨太な描線を動かす技術や、
アシュラの飢えた体と爛々と光る目の宿り、
美しく整い、飢えてなお愛らしく美しいヒロイン・若狭の、無力な気高さなど、とても素晴らしい。
飢饉が極まり、自分を食らおうとした母親から逃れることにはじまり、何とか生き延びていく、アシュラの動きのアクションもいい。
だが、テーマである「人間としての理性を手に入れての苦しみ」みたいなものは、当時は新鮮だったかも知れないが、現代では色んな作品で、もっと凝った状況の中で見られるものだ。
だから、私はもっぱら、例えば、まだ幼いアシュラが、大きな斧を、身体をふらつかせながら振り回すような描写の丁寧さに感心しつつ、
途中から、先が読めるようでいて読めない展開に目が離せなくなった。
う~ん、アシュラのことは誰にも責められない。
そうしないと生きてこれなかったし、他の道を示されずに生き抜いてきた。
だが、法師に遠く見守られ、若狭と出会い、「してはいけないこと」を知ってからは、アシュラは禁を犯していない。
だが、理性を知ったアシュラは、更に凄まじい苦悩にはまっていく。
・・・いや、私、結局、途中から、このテーマに夢中になっていった。
「生まれてこなければ良かったんギャ・・・」
「後から苦しくなるから食わないって、今はもっと苦しいギャ!」
そして、若狭にひたすらに愛を乞うアシュラの瞳・・・。
野沢・孫悟空・雅子が、辛く、そして可愛さも感じられるほどに演じきる。
この作品の監督は、同じく公開している映画『TIGER & BUNNY』のテレビ版の監督をしていた人らしい。
でも、映画版は監督してないようだ。
ヒット作の映画版を監督しないで、こちらを監督したんだね。
ちょっと感心!
(2012/09/30)
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見た目のおどろおどろしさと反比例するように真っ当な映画だったのがビックリしました。ありえない話をしだしちゃうと、この話を手塚治虫が引き継ぐと、高僧になった後のアシュラの過去の所業がばらされるって展開になる気がしてならないです。
若狭は、とても可愛いし。
私も、エンディングが、「火の鳥・鳳凰編」に繋がりそうな気がしましたよ^^
アシュラ=我王