横尾忠則は回想の作家である。
そういう思いを強くしました。
作者の横尾忠則は突発性難聴を発症して以降、病や老いをテーマに取り込んだ作品を発表しています。更に利き腕である右手が腱鞘炎になり、マトモな筆運びができなくなったのを逆手にとり、チューブから直接絵の具を筆で取り出してキャンバスに打ち付ける技法に転向して、(何が描かれているか判然としない)自らの新画風を『朦朧体』だとうそぶく大胆さは凄い(笑)。
題材は自らの記憶の中の表象を自在に組み合わせて独特の世界を形造っています。
今回は曽我蕭白の寒山拾得図にインスピレーションを得て自在にアレンジした作品を中心にした展覧会です。
※寒山拾得を題材にしたシリーズ。
寒山拾得の手にしている経典はトイレットペーパーに、箒は電気掃除機に変化している点がさすが横尾忠則。
繰り返し姿を変えて現れる寒山と拾得の姿に思わず笑みがこぼれます。
この美術館自体が横尾忠則の作品なので通路や小部屋も作品と化してます。これも見どころのひとつです。
※キュミラスム・トゥ・アオタニと名付けられた休憩スペース
キュミラスムはキュビスム(立体派)とミラー(鏡)を合成した造語です。
※鏡と窓が組み合わされ現実の風景と過去の風景(写真)が混ざり合う情景が作り上げられています。
※時間感覚がオカシくなったような不思議な世界です。
※通路の壁にも眼がいっぱい‼️
作品は幼少期の思い出から始まり、だんだんと宗教色を帯びてきます。
※『来迎図』という作品・・・中の仕掛けから鐘の音が響きます。
拡大してみると、オモチャの部品やら鶏手羽元の骨なんかが貼りつけられているのが分かります。
※『ガーディアン・エンジェル』電飾が派手に光っています
※寒山拾得の様々なバリエーション
今回の展示室内には常に『荒野の用心棒のテーマ(さすらいの口笛)』が流れています。横尾忠則にとっては『寒山拾得』と『さすらいの口笛』は分かち難く結びついているのだそうです。
※お聴きください『荒野の用心棒のテーマ』
PVに登場する『首吊り縄』も繰り返し絵画の中に出てきます。
見て回って楽しい展示会でした。