ご覧の通り備前焼の茶碗です。
私の持つ茶碗では唯一これが木箱付き。作者の名前も入っているのでいささかマシな部類でしょう。
※緋の入ったこの側が正面になります。
土肌は備前焼独特のザラザラした感触で手に持つと指先の感覚が鋭くなったように感じます。
片側に緋があってこの茶碗の目を引くポイントになっています。言ってみれば焼きムラなのですが、これを景色として楽しむのが茶の湯での慣わしとなっています。
※緋の入ったこの側が正面になります。
亭主はこの正面を客に向けて勧め、客はこの正面を避けて口を付けます。
実はこのやり取りには実にイヤらしい心根が秘められていて、亭主と客の間には丁々発止の心理戦が展開されているのです。
亭主『どうぞ(オマエ、これが分かるかな?)』
客『頂戴します(もちろん知ってますよ)』
亭主『ごゆっくり(見かけによらずナカナカやるな❗)』
客『よいお服加減でした(こんなの常識ですよ)』
さて、このようにお互いの知識や教養を競い合うのが茶道なのですが(いってみればオタク同士の会話ですね)、時には亭主の趣向がどうしても読めないときもあります。そんなときはどうするか?
実は素直に聞けばよろしい。亭主は内心(くっ、この客は、ワシを試すつもりだな)と思いつつも丁寧に由来を説明してくれます。それがルールなのです。
この茶碗は私が勝手に夕照と銘を付けましたが、この大きな丸い焼きムラを日輪に見立てて付けました(実は銘は本来テキトーなのでこれで充分です)。
亭主が銘を『夕照』と説明したら、客は『近江八景から取られましたか・・・』と応えると、亭主は(うんうん)とひとりごちる(こいつ、なかなかやるワイ)、なかなかに気の抜けない世界です。
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