今週末開催される『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』、その看板アーティストの一人ジョン・クリアリー。初日の土曜日にはジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンというバンド名義でトリを務め、日曜日にはソロで出演するという、両日に渡って違った魅力を体験させてくれそうなイギリス生まれのニューオーリンズ・ピアニスト。という訳で、前回の「LIVE MAGIC! 予習」に引き続き、今回は外伝的にジョン・クリアリーを取り上げてみたいと思います。
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JON CLEARY / ALLIGATOR LIPS AND DIRTY RICE
ジョン・クリアリーのデビュー・アルバム「ALLIGATOR LIPS AND DIRTY RICE」。94年の作品。イギリス生まれで17歳の時に渡米したというジョン・クリアリー。1962年生まれですから、32歳ぐらいの作品ですね。デビュー作としては決して若くはないかもしれませんが、それ故に、彼らしいソウル・フィーリングは既に確立されてる感じですね。もちろん、その後にライヴ盤「MO HIPPA」で再演される自作曲「C'mon Second Line」など、ニューオーリンズ・フレイヴァー満載。ベースにはジョージ・ポーター・ジュニアも参加。
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TAJI MAHAL / PHANTOM BLUES
ソロ作をリリースしていたとは言え、90年代のジョン・クリアリーは、まだまだ知る人ぞ知る存在だったんだと思います。セッション・プレイヤーとして徐々に名が浸透してくるなかで、飛躍のきっかけは、やはりタジ・マハールの作品だったのでしょうか。写真は96年の「PHANTOM BLUES」。ジョン・クリアリーはリズム・セクションの一員として全面的に参加するばかりでなく、2曲の楽曲提供も行っています。ピアノを中心に、時にウーリッツァー、クラビネット、ギターと、多彩なプレイでタジ独特のルーツ指向なブルースを彩っています。ジェシー・ヒルやファッツ・ドミノのカヴァーも有り。タジはジョンを含むほぼ同じ布陣で次作「SENOR BLUES」も製作しています。
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BONNIE RAITT / SILVER LINING
ジョン・クリアリーと言えば、ボニー・レイットのバックを務めていたことも有名ですね。こちらはボニー・レイットの02年作「SILVER LINING」。ジョン・クリアリーはリッキー・ファター(ds)、ジェイムス“ハッチ”ハッチンソン(b)と共にパーソナル・メンバーとしてクレジットされています。しかもジョン・クリアリー作のニューオーリンズ・ファンク曲「Fool's Game」が1曲目を飾り、もう1曲のジョン・クリアリー作「Monkey Business」ではボニー・レイットとデュエットをしていたりと、なかなかの活躍ぶり。ジョン・クリアリーはボニーの次作「SOULS ALIKE」にも参加していますし、ノラ・ジョーンズやベン・ハーパーなど豪華ゲストを招いた06年のライヴDVD作品「BONNIE RAITT & FRIENDS」でも良い仕事していますので、そちらもお薦めです。
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JON CLEARY AND THE ABSOLUTE MONSTER GENTLEMEN / JON CLEARY AND THE ABSOLUTE MONSTER GENTLEMEN
WIKIによりますと、ジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンが結成されたのは1992年だそう。つまりジョンが1stソロ作を制作した頃には既にバンドで活動していたことになりますが、そのバンド名義でアルバムがリリースされたのは、02年のこちらが初めてでした。ちなみに95年の時点で山岸潤史さんが「今ニューオーリンズで一番ホットなのは、ジョン・クリアリーのバンド!」と発言していたそうですから、まさに満を持してという感じ。してそのバンド・メンバーとはもちろん、ジョン・クリアリー(p,vo)、ダーウィン"Big D" パーキンス(g)、コーネル・ウィリアムズ(b)、ジェフリー“ジェリービーン”アレクサンダー(ds)。オリジナル曲を中心に、ミーターズのカヴァーも交えながら、必ずしもニューオーリンズに捕われない、彼らならではのファンクネスを聴かせてくれます。ジョン・クリアリーらしいお洒落なセンスと言いますか、都会的なクールネスはこの頃から際立ってますね。
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JOHN SCOFIELD / PIETY STREET
ジャズ/フュージョン界のレジェンド級ギタリストではありますが、MM&Wと共演するなどジャム・バンド・シーンに接近したり、アーロン・ネヴィルやドクター・ジョンを招いてレイ・チャールズのトリビュート作を作ったりと、興味深い製作活動を続けてきたジョン・スコフィールドが、ニューオーリンズ色の強いバンドを結成した09年作「PIETY STREET」。主要メンバーはジョージ・ポーター・ジュニア(b)、リッキー・ファター(ds)、そしてジョン・クリアリー(p,vo)。ゲスト的な扱いでシャノン・パウエルやジョン・ブッテも参加しています。ジョン・ブッテの歌唱が素晴らしいのは自明のことですが、ジョン・クリアリーも鍵盤はもちろん、リード・シンガーとしてもブッテ以上に存在感を発揮してるんです。また、ここにボ二ー・レイット時代の同僚リッキー・ファター(ds)が含まれている辺りにもこのプロジェクトにおけるジョン・クリアリーの役割の重みが感じられますね。ゴスペル曲を多く取り上げているためか、ジョン・クリアリーがオルガンを多く弾いているところにも注目です。ちなみにこの作品がリリースされた09年、ジョン・スコフィールドはジョン・クリアリーを伴い、ジョン・スコフィールド AND THE PIETY STREET BANDとして東京JAZZに出演しました。
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SNOOKS EAGLIN / THE WAY IT IS
ここで紹介した以外にも、B.B.キング、マリア・マルダー、エリック・バードン、ケブ・モ、アナ・ポポヴィッチなどなど、数々のアーティストへ客演しているジョン・クリアリーですが、もちろん彼のお膝元ニューオーリンズでも引く手数多な活躍ぶりなのは言わずもがな。中でも個人的に印象的なのは、かの地が生んだ愛すべき個性派ギタリスト、スヌークス・イーグリンの「THE WAY IT IS」です。2000年の録音でジョン・クリアリーは全14曲中7曲に参加。しかも彼はアソシエイト・プロデューサーとしてもクレジットされています。さらにジョンが参加した曲には、ビッグ・D、コーネル・ウィリアムズ、ジェリービーンも参加したりしていて、まるでスヌークス・イーグリンのバックをジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンが付けてるような編成になっていたりと、なかなかそそられます。スヌークスにとってはこれがラスト・アルバムになってしまいましたが、最後に新進気鋭のニューオーリンズ・グループと繰り広げた、心温まるファンキー・ソウル。
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JON CLEARY / OCCAPELLA!
そして、ジョン・クリアリーにとって現在のところ最新作となるソロ名義作「OCCAPELLA!」。2012年の作品。一人多重録音を中心に制作されたアラン・トゥーサンのソング集なんですが、彼のマルチ・プレイヤー振りもさることながら、トゥーサン楽曲のジョン・クリアリー流の解釈と言いますか、新鮮味を持たせつつ楽曲を良さを際立たせるようなアレンジ・センスは流石としか言いようがありません。アブソリュート・モンスター・ジェントルメンも意外な形で一部参加していますし、ドクター・ジョン&ボニー・レイットといったゲスト起用など、スパイスの効かせ方も秀逸。これまでライヴ主体なイメージの強かったジョン・クリアリーが魅せた、技ありの一枚。
さて、目前に迫った「LIVE MAGIC!」、ジョン・クリアリーはどんな音楽マジックを見せてくれるのか? 楽しみですね!
『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』オフィシャルサイト→http://livemagic.jp
~関連過去ブログ~
14.10.19 Peter Barakan's LIVE MAGIC! 予習
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JON CLEARY / ALLIGATOR LIPS AND DIRTY RICE
ジョン・クリアリーのデビュー・アルバム「ALLIGATOR LIPS AND DIRTY RICE」。94年の作品。イギリス生まれで17歳の時に渡米したというジョン・クリアリー。1962年生まれですから、32歳ぐらいの作品ですね。デビュー作としては決して若くはないかもしれませんが、それ故に、彼らしいソウル・フィーリングは既に確立されてる感じですね。もちろん、その後にライヴ盤「MO HIPPA」で再演される自作曲「C'mon Second Line」など、ニューオーリンズ・フレイヴァー満載。ベースにはジョージ・ポーター・ジュニアも参加。
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TAJI MAHAL / PHANTOM BLUES
ソロ作をリリースしていたとは言え、90年代のジョン・クリアリーは、まだまだ知る人ぞ知る存在だったんだと思います。セッション・プレイヤーとして徐々に名が浸透してくるなかで、飛躍のきっかけは、やはりタジ・マハールの作品だったのでしょうか。写真は96年の「PHANTOM BLUES」。ジョン・クリアリーはリズム・セクションの一員として全面的に参加するばかりでなく、2曲の楽曲提供も行っています。ピアノを中心に、時にウーリッツァー、クラビネット、ギターと、多彩なプレイでタジ独特のルーツ指向なブルースを彩っています。ジェシー・ヒルやファッツ・ドミノのカヴァーも有り。タジはジョンを含むほぼ同じ布陣で次作「SENOR BLUES」も製作しています。
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BONNIE RAITT / SILVER LINING
ジョン・クリアリーと言えば、ボニー・レイットのバックを務めていたことも有名ですね。こちらはボニー・レイットの02年作「SILVER LINING」。ジョン・クリアリーはリッキー・ファター(ds)、ジェイムス“ハッチ”ハッチンソン(b)と共にパーソナル・メンバーとしてクレジットされています。しかもジョン・クリアリー作のニューオーリンズ・ファンク曲「Fool's Game」が1曲目を飾り、もう1曲のジョン・クリアリー作「Monkey Business」ではボニー・レイットとデュエットをしていたりと、なかなかの活躍ぶり。ジョン・クリアリーはボニーの次作「SOULS ALIKE」にも参加していますし、ノラ・ジョーンズやベン・ハーパーなど豪華ゲストを招いた06年のライヴDVD作品「BONNIE RAITT & FRIENDS」でも良い仕事していますので、そちらもお薦めです。
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JON CLEARY AND THE ABSOLUTE MONSTER GENTLEMEN / JON CLEARY AND THE ABSOLUTE MONSTER GENTLEMEN
WIKIによりますと、ジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンが結成されたのは1992年だそう。つまりジョンが1stソロ作を制作した頃には既にバンドで活動していたことになりますが、そのバンド名義でアルバムがリリースされたのは、02年のこちらが初めてでした。ちなみに95年の時点で山岸潤史さんが「今ニューオーリンズで一番ホットなのは、ジョン・クリアリーのバンド!」と発言していたそうですから、まさに満を持してという感じ。してそのバンド・メンバーとはもちろん、ジョン・クリアリー(p,vo)、ダーウィン"Big D" パーキンス(g)、コーネル・ウィリアムズ(b)、ジェフリー“ジェリービーン”アレクサンダー(ds)。オリジナル曲を中心に、ミーターズのカヴァーも交えながら、必ずしもニューオーリンズに捕われない、彼らならではのファンクネスを聴かせてくれます。ジョン・クリアリーらしいお洒落なセンスと言いますか、都会的なクールネスはこの頃から際立ってますね。
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JOHN SCOFIELD / PIETY STREET
ジャズ/フュージョン界のレジェンド級ギタリストではありますが、MM&Wと共演するなどジャム・バンド・シーンに接近したり、アーロン・ネヴィルやドクター・ジョンを招いてレイ・チャールズのトリビュート作を作ったりと、興味深い製作活動を続けてきたジョン・スコフィールドが、ニューオーリンズ色の強いバンドを結成した09年作「PIETY STREET」。主要メンバーはジョージ・ポーター・ジュニア(b)、リッキー・ファター(ds)、そしてジョン・クリアリー(p,vo)。ゲスト的な扱いでシャノン・パウエルやジョン・ブッテも参加しています。ジョン・ブッテの歌唱が素晴らしいのは自明のことですが、ジョン・クリアリーも鍵盤はもちろん、リード・シンガーとしてもブッテ以上に存在感を発揮してるんです。また、ここにボ二ー・レイット時代の同僚リッキー・ファター(ds)が含まれている辺りにもこのプロジェクトにおけるジョン・クリアリーの役割の重みが感じられますね。ゴスペル曲を多く取り上げているためか、ジョン・クリアリーがオルガンを多く弾いているところにも注目です。ちなみにこの作品がリリースされた09年、ジョン・スコフィールドはジョン・クリアリーを伴い、ジョン・スコフィールド AND THE PIETY STREET BANDとして東京JAZZに出演しました。
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SNOOKS EAGLIN / THE WAY IT IS
ここで紹介した以外にも、B.B.キング、マリア・マルダー、エリック・バードン、ケブ・モ、アナ・ポポヴィッチなどなど、数々のアーティストへ客演しているジョン・クリアリーですが、もちろん彼のお膝元ニューオーリンズでも引く手数多な活躍ぶりなのは言わずもがな。中でも個人的に印象的なのは、かの地が生んだ愛すべき個性派ギタリスト、スヌークス・イーグリンの「THE WAY IT IS」です。2000年の録音でジョン・クリアリーは全14曲中7曲に参加。しかも彼はアソシエイト・プロデューサーとしてもクレジットされています。さらにジョンが参加した曲には、ビッグ・D、コーネル・ウィリアムズ、ジェリービーンも参加したりしていて、まるでスヌークス・イーグリンのバックをジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンが付けてるような編成になっていたりと、なかなかそそられます。スヌークスにとってはこれがラスト・アルバムになってしまいましたが、最後に新進気鋭のニューオーリンズ・グループと繰り広げた、心温まるファンキー・ソウル。
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JON CLEARY / OCCAPELLA!
そして、ジョン・クリアリーにとって現在のところ最新作となるソロ名義作「OCCAPELLA!」。2012年の作品。一人多重録音を中心に制作されたアラン・トゥーサンのソング集なんですが、彼のマルチ・プレイヤー振りもさることながら、トゥーサン楽曲のジョン・クリアリー流の解釈と言いますか、新鮮味を持たせつつ楽曲を良さを際立たせるようなアレンジ・センスは流石としか言いようがありません。アブソリュート・モンスター・ジェントルメンも意外な形で一部参加していますし、ドクター・ジョン&ボニー・レイットといったゲスト起用など、スパイスの効かせ方も秀逸。これまでライヴ主体なイメージの強かったジョン・クリアリーが魅せた、技ありの一枚。
さて、目前に迫った「LIVE MAGIC!」、ジョン・クリアリーはどんな音楽マジックを見せてくれるのか? 楽しみですね!
『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』オフィシャルサイト→http://livemagic.jp
~関連過去ブログ~
14.10.19 Peter Barakan's LIVE MAGIC! 予習