THE METERS / LOOK-KA PY PY
フジロック予習特集第2弾、ファンキー・ミーターズです。
ファンキー・ミーターズについて語るには、一度解散し、メンバーも変わっているとはいえ、やはりオリジナルのミーターズまで遡らなければいけません。JB’Sと並び称されるインスト・ファンクのイコンであり、現在も配合と進化を続ける世界中の“ファンク”と名のつく音楽に量り知れない影響を与えたであろうニューオーリンズが生んだ奇跡の4人。アート・ネヴィル(kbd)、レオ・ノッセンテリ(g)、ジョージ・ポーター・ジュニア(b)、ジギー・モデリステ(ds)。
その前身、ネヴィル・サウンズが結成されたのが67年頃。メンバーは後にミーターズとなる4人と、アート・ネヴィルの弟アーロンにシリル、そしてゲイリー・ブラウン(sax)の7人編成。このメンバーで一年ほど地元をブイブイ言わした後、彼らに転機が訪れます。それはバーボン・ストリートの「アイヴァンホー」というクラブへのレギュラー出演。ですがそこの狭いステージには4人しか上がれない。そこでアートが下した決断は、本来なら旨味となる肉の部分をカットし、骨だけになること。つまり歌とホーンを外し、ドラムス、ベース、ギター、鍵盤という必要最小限のベーシックな編成になる。ミーターズの誕生です。
つまり、苦肉の策でメンバーを減らした結果、思いのほか上手く行ってしまった…、みたいな感じでしょうか? しかしアートは元々、ブッカーT&ザ・MG’Sのような、“間”を生かしたインストバンドをやりたいという願望を持っていたようで、MG’Sと同じ編成のバンドを率いることは必然的なことだったのかもしれません。
そしてアート曰く、「タイトで、間があって、悪魔のようにファンキーなサウンド」を鳴らしたミーターズはアイヴァンホーを熱狂させたました。時はアラン・トゥーサンが新しいニューオーリンズ・サウンドを模索している最中で、彼はアイヴァンホーでのミーターズの評判を知り彼らに接近します。そして両者の結びつきが、ニューオーリンズをこれまでのR&Bから、本格的なファンクの時代へ導いたのです。
そのニューオーリンズ・ファンクの牽引車となったミーターズのその後の活躍についてはもう有名なのであらためて書きませんが、とにかく彼らは陽に陰に新しいニューオーリンズ・サウンドの体現者となり、それはセカンドライン・ファンクと呼ばれ、ありとあらゆる土地に飛び火し、現代まで影響を与え続けているのです。
彼らのサウンドのユニークさは初期の作品に顕著です。必要最小限まで音を削り取り、ニューオーリンズ特有の“ビート感”と“間”を存分に活かしたそのファンクネスは、あまりにもシンプル&ルーズ故に、即効性こそ薄いものの、しかしジワジワと、恐るべき浸透率で蝕んでいきます。そのジワジワ感たるや、私などは初期ミーターズのファンクが分かるまでに数年かかりましたから! とにかくJBやスライなどの派手なファンクを聴きまくり、ネヴィル・ブラザーズから遡ってミーターズにたどりついた私にとって、彼らの泥臭く隙間だらけの緩~いファンクは圧倒的に物足りなかったのです。ですがその“緩さ”がいつしか“粘り”に変わり、粘着性を増した“泥臭さ”が五感に絡みつき、気が付けば“隙間”と言うスウィート・スポットにどっぷりと浸かっていたのでした。
そんなミーターズ流ファンクをまとめるのはもちろん最年長アート・ネヴィル。ご存知ネヴィル・ブラザーズの長兄です。彼のパーカッシヴなオルガンがミーターズのグルーヴに果たした役割は量り知れませんが、ミーターズがユニークだったのはむしろ残りの若き3人の個性によるものかもしれません。アート・ネヴィルが「MG’Sのスタイルをニューオーリンズ流儀で」という確信犯的なアイデアをどこまで具体的に描いていたかは分かりませんが、今になって思えば、そのアイデアを具現化するのにこれ以上ありえない運命的な3人が揃ったと言えるでしょうね。音楽界には稀にこういったマジカルな引力が発生するんですよね。
そんな奇跡的な磁場が起こすグルーヴの要は何と言ってもドラムスのジギー・モデリステ。強烈にシンコペイションしながら絶妙のタメで空間を切り刻むかのごとくスネアを打ち込んでいく、彼こそセカンドライン・ファンクの申し子。現在ニューオーリンズで活躍するファンク系のドラマーは、全て何らかの形でモデリステの影響下にあるといっても過言ではないでしょう。もちろん、ファンキー・ミーターズの現ドラマーであるラッセル・バティステ・ジュニアもその一人。
そしてミーターズを評するのに忘れてならないのが“もっちゃり”という言葉。そのもっちゃり感を一手に引き受けているのがベーシストのジョージ・ポーター・ジュニア。彼の弾く、決してソリッドではない団子っぽいベース・ラインがミーターズのファンクを、泥臭く、骨太で、もっちゃりとしたものに仕立て上げています。この“もっちゃり”ってどういう感じですか?と聞かれても、言葉では上手く説明でません。“もっちゃり”としか言いようがないんです…。感じてもらうしかありません。
そして最後に登場していただくのがギタリストのレオ・ノッセンテリ。この人のギター・カッティングも特徴的。決して譜面では現せない独特のビート感があり、ファンキーなんですけど、やっぱり“もっちゃり”してるんですよね。ニューオーリンズのギタリストというと、ブルース系には秀でた人が過去に沢山おりましたが、ファンキー系でメジャーな存在となるとレオが最初であり、その後続がなかなかみつからない印象です。もちろんファンキーなギタリストは沢山居ますよ。例えば元ネヴィル・ブラザーズのギタリストであり、レオの後釜としてファンキー・ミーターズに加入したブライアン・ストルツ(現在は既に脱退)もその代表格です。私も大好きなギタリストですが、やっぱり個性や存在感に物足りなさを感じてしまうのも事実。ニューオーリンズ・ファンクの世界で真にオリジナリティを持った存在はレオ・ノッセンテリ唯一人なのかもしれません。
でもそろそろニューオーリンズに新しいギター・ヒーローが現れても良いのでは?と思ったりもします。ギター・マガジン誌05年1月号掲載のレオのインタビューで、「最近注目しているギタリストはいますか?」という質問に対し、レオはこう答えています。「ニューオーリンズに限って言えば、私に似たプレイをする人が多すぎるが、ただひとり、すごく可能性を持ったギタリストがいる。イアン・ネヴィル。アートの息子だよ。彼はニューオーリンズのフレーバーを持ったギタリストのプレイを、違うレベルに持っていく力があると思う」と。
そのイアン・ネヴィルこそ、現在、ファンキー・ミーターズのギタリストなのです。
つづく。
THE METERS / THE METERS
69年の記念すべきデビュー・アルバム。まるでモデリステのドラムスを聴かせる為にあるような「Cissy Strut」から始まる全曲インスト・アルバム。ギターとベースがユニゾンでリフを引くスタイルも斬新。セカンドライン・ファンクの原点。
THE METERS / REJUVENATION
74年の5作目。初期のシンプルなサウンドから徐々にハードさを増した演奏と、インディアン・フレイヴァーや聴き易い歌物志向が奇跡的に結実した大傑作。「People Say」、「Just Kissed My Baby」、「Jungle Man」、「Hey Pocky A-way」、「Africa」など、ほとんど古典と言ってよい代表曲を多く収録。セカンドライン・ファンクの到達点。
THE METERS / UPTOWN RULERS! LIVE ON THE QUEEN MARY
5人目のメンバー、シリル・ネヴィル参加後の75年のライヴを収めた発掘盤。この頃ローリング・ストーンズのオープニング・アクトに起用された事実からも分かるとおり、彼らのライヴは相当な評判を呼んでいたらしい。このライヴ盤はポール&リンダ・マッカートニーがクイーン・メアリー号で行ったパーティーに招かれた際に録音されたもの。音質は良いとは言えないものの、強烈なモデリステのドラミングをはじめ、骨太なジョージのベース・ラインも含め、腰にきまくりのセカンドライン・グルーヴに圧倒されます。フロアではあのマイケル・ジャクソンが踊りまくっていたとか…。
THE METERS / NEW DIRECTIONS
オリジナル・ミーターズのラスト・アルバム。77年作。バンドとしての疲弊の中、ニューオーリンズ・ファンクの王者としての底力を感じさせる佳作。しかしいわゆるミーターズらしさは薄め。その原因は?ミーターズ自信がセカンドライン・ファンクをよりキャッチーなものに押し上げたのか?それともニューオーリンズ・ファンクが“商業的”なるものに飲み込まれたのか?この年、ミーターズを解散させ、ネヴィル・ブラザーズ結成へと歩を進めるアートですが、そのネヴィルズも結局“商業的”なるものに苦しめられることになる…。
フジロック予習特集第2弾、ファンキー・ミーターズです。
ファンキー・ミーターズについて語るには、一度解散し、メンバーも変わっているとはいえ、やはりオリジナルのミーターズまで遡らなければいけません。JB’Sと並び称されるインスト・ファンクのイコンであり、現在も配合と進化を続ける世界中の“ファンク”と名のつく音楽に量り知れない影響を与えたであろうニューオーリンズが生んだ奇跡の4人。アート・ネヴィル(kbd)、レオ・ノッセンテリ(g)、ジョージ・ポーター・ジュニア(b)、ジギー・モデリステ(ds)。
その前身、ネヴィル・サウンズが結成されたのが67年頃。メンバーは後にミーターズとなる4人と、アート・ネヴィルの弟アーロンにシリル、そしてゲイリー・ブラウン(sax)の7人編成。このメンバーで一年ほど地元をブイブイ言わした後、彼らに転機が訪れます。それはバーボン・ストリートの「アイヴァンホー」というクラブへのレギュラー出演。ですがそこの狭いステージには4人しか上がれない。そこでアートが下した決断は、本来なら旨味となる肉の部分をカットし、骨だけになること。つまり歌とホーンを外し、ドラムス、ベース、ギター、鍵盤という必要最小限のベーシックな編成になる。ミーターズの誕生です。
つまり、苦肉の策でメンバーを減らした結果、思いのほか上手く行ってしまった…、みたいな感じでしょうか? しかしアートは元々、ブッカーT&ザ・MG’Sのような、“間”を生かしたインストバンドをやりたいという願望を持っていたようで、MG’Sと同じ編成のバンドを率いることは必然的なことだったのかもしれません。
そしてアート曰く、「タイトで、間があって、悪魔のようにファンキーなサウンド」を鳴らしたミーターズはアイヴァンホーを熱狂させたました。時はアラン・トゥーサンが新しいニューオーリンズ・サウンドを模索している最中で、彼はアイヴァンホーでのミーターズの評判を知り彼らに接近します。そして両者の結びつきが、ニューオーリンズをこれまでのR&Bから、本格的なファンクの時代へ導いたのです。
そのニューオーリンズ・ファンクの牽引車となったミーターズのその後の活躍についてはもう有名なのであらためて書きませんが、とにかく彼らは陽に陰に新しいニューオーリンズ・サウンドの体現者となり、それはセカンドライン・ファンクと呼ばれ、ありとあらゆる土地に飛び火し、現代まで影響を与え続けているのです。
彼らのサウンドのユニークさは初期の作品に顕著です。必要最小限まで音を削り取り、ニューオーリンズ特有の“ビート感”と“間”を存分に活かしたそのファンクネスは、あまりにもシンプル&ルーズ故に、即効性こそ薄いものの、しかしジワジワと、恐るべき浸透率で蝕んでいきます。そのジワジワ感たるや、私などは初期ミーターズのファンクが分かるまでに数年かかりましたから! とにかくJBやスライなどの派手なファンクを聴きまくり、ネヴィル・ブラザーズから遡ってミーターズにたどりついた私にとって、彼らの泥臭く隙間だらけの緩~いファンクは圧倒的に物足りなかったのです。ですがその“緩さ”がいつしか“粘り”に変わり、粘着性を増した“泥臭さ”が五感に絡みつき、気が付けば“隙間”と言うスウィート・スポットにどっぷりと浸かっていたのでした。
そんなミーターズ流ファンクをまとめるのはもちろん最年長アート・ネヴィル。ご存知ネヴィル・ブラザーズの長兄です。彼のパーカッシヴなオルガンがミーターズのグルーヴに果たした役割は量り知れませんが、ミーターズがユニークだったのはむしろ残りの若き3人の個性によるものかもしれません。アート・ネヴィルが「MG’Sのスタイルをニューオーリンズ流儀で」という確信犯的なアイデアをどこまで具体的に描いていたかは分かりませんが、今になって思えば、そのアイデアを具現化するのにこれ以上ありえない運命的な3人が揃ったと言えるでしょうね。音楽界には稀にこういったマジカルな引力が発生するんですよね。
そんな奇跡的な磁場が起こすグルーヴの要は何と言ってもドラムスのジギー・モデリステ。強烈にシンコペイションしながら絶妙のタメで空間を切り刻むかのごとくスネアを打ち込んでいく、彼こそセカンドライン・ファンクの申し子。現在ニューオーリンズで活躍するファンク系のドラマーは、全て何らかの形でモデリステの影響下にあるといっても過言ではないでしょう。もちろん、ファンキー・ミーターズの現ドラマーであるラッセル・バティステ・ジュニアもその一人。
そしてミーターズを評するのに忘れてならないのが“もっちゃり”という言葉。そのもっちゃり感を一手に引き受けているのがベーシストのジョージ・ポーター・ジュニア。彼の弾く、決してソリッドではない団子っぽいベース・ラインがミーターズのファンクを、泥臭く、骨太で、もっちゃりとしたものに仕立て上げています。この“もっちゃり”ってどういう感じですか?と聞かれても、言葉では上手く説明でません。“もっちゃり”としか言いようがないんです…。感じてもらうしかありません。
そして最後に登場していただくのがギタリストのレオ・ノッセンテリ。この人のギター・カッティングも特徴的。決して譜面では現せない独特のビート感があり、ファンキーなんですけど、やっぱり“もっちゃり”してるんですよね。ニューオーリンズのギタリストというと、ブルース系には秀でた人が過去に沢山おりましたが、ファンキー系でメジャーな存在となるとレオが最初であり、その後続がなかなかみつからない印象です。もちろんファンキーなギタリストは沢山居ますよ。例えば元ネヴィル・ブラザーズのギタリストであり、レオの後釜としてファンキー・ミーターズに加入したブライアン・ストルツ(現在は既に脱退)もその代表格です。私も大好きなギタリストですが、やっぱり個性や存在感に物足りなさを感じてしまうのも事実。ニューオーリンズ・ファンクの世界で真にオリジナリティを持った存在はレオ・ノッセンテリ唯一人なのかもしれません。
でもそろそろニューオーリンズに新しいギター・ヒーローが現れても良いのでは?と思ったりもします。ギター・マガジン誌05年1月号掲載のレオのインタビューで、「最近注目しているギタリストはいますか?」という質問に対し、レオはこう答えています。「ニューオーリンズに限って言えば、私に似たプレイをする人が多すぎるが、ただひとり、すごく可能性を持ったギタリストがいる。イアン・ネヴィル。アートの息子だよ。彼はニューオーリンズのフレーバーを持ったギタリストのプレイを、違うレベルに持っていく力があると思う」と。
そのイアン・ネヴィルこそ、現在、ファンキー・ミーターズのギタリストなのです。
つづく。
THE METERS / THE METERS
69年の記念すべきデビュー・アルバム。まるでモデリステのドラムスを聴かせる為にあるような「Cissy Strut」から始まる全曲インスト・アルバム。ギターとベースがユニゾンでリフを引くスタイルも斬新。セカンドライン・ファンクの原点。
THE METERS / REJUVENATION
74年の5作目。初期のシンプルなサウンドから徐々にハードさを増した演奏と、インディアン・フレイヴァーや聴き易い歌物志向が奇跡的に結実した大傑作。「People Say」、「Just Kissed My Baby」、「Jungle Man」、「Hey Pocky A-way」、「Africa」など、ほとんど古典と言ってよい代表曲を多く収録。セカンドライン・ファンクの到達点。
THE METERS / UPTOWN RULERS! LIVE ON THE QUEEN MARY
5人目のメンバー、シリル・ネヴィル参加後の75年のライヴを収めた発掘盤。この頃ローリング・ストーンズのオープニング・アクトに起用された事実からも分かるとおり、彼らのライヴは相当な評判を呼んでいたらしい。このライヴ盤はポール&リンダ・マッカートニーがクイーン・メアリー号で行ったパーティーに招かれた際に録音されたもの。音質は良いとは言えないものの、強烈なモデリステのドラミングをはじめ、骨太なジョージのベース・ラインも含め、腰にきまくりのセカンドライン・グルーヴに圧倒されます。フロアではあのマイケル・ジャクソンが踊りまくっていたとか…。
THE METERS / NEW DIRECTIONS
オリジナル・ミーターズのラスト・アルバム。77年作。バンドとしての疲弊の中、ニューオーリンズ・ファンクの王者としての底力を感じさせる佳作。しかしいわゆるミーターズらしさは薄め。その原因は?ミーターズ自信がセカンドライン・ファンクをよりキャッチーなものに押し上げたのか?それともニューオーリンズ・ファンクが“商業的”なるものに飲み込まれたのか?この年、ミーターズを解散させ、ネヴィル・ブラザーズ結成へと歩を進めるアートですが、そのネヴィルズも結局“商業的”なるものに苦しめられることになる…。