5月4日、新木場スタジオコーストにて、『WORLDWIDE SESSION 2016』を観てまいりました! こちら、「世界で最も影響力のある DJ、ジャイルス・ピーターソンが日本でローンチする大人のための都市型音楽フェスティバル」とのことで、出演アーティストは、サン・ラ・アーケストラ、ミゲル・アトウッド・ファーガソン・アンサンブル、日野皓正、ソイル・アンド・ピンプ・セッションズ、そしてDJにはジャイルス・ピーターソンと、彼と共に今イベントをプロデュースする松浦俊夫さんという、かなり刺激的な面々。
まずはミゲル・アトウッド・ファーガソン・アンサンブル!!
カルロス・ニーニョと共に、Jディラ関連の楽曲をオーケストラ編成でトリビュートした「SUITE FOR MA DUKES」で名を馳せ、フライング・ロータス、サンダーキャット達とも親交を深めるなど、ロサンゼルス音楽シーンのキーパーソンの一人と目されるヴァイオリン/ヴィオラ奏者にしてアレンジャー、プロデューサーのミゲル・アトウッド・ファーガソン。YouTubeを検索すると、ミゲル・アトウッド・ファーガソン・アンサンブル名義により彼の元にフライング・ロータス、サンダーキャット、カマシ・ワシントン、ブランドン・コールマン、クリス・デイヴ等々、蒼々たるメンバーが揃ったライヴ映像が出てきたりするので、かく言う私も楽しみにしていたんです。とは言え、今回のアンサンブルはそこまで豪華ではないんですけどね。ですがそれ故に彼の意思が細部まで行き届いた緻密なステージが展開されたと言えるのではないでしょうか。それは思いのほかクールでメロディアス。もちろん現行ジャズらしい先鋭さを孕みながらも、それ以上に叙情的かつ芸術的な印象を受けました。メンバーは以下の6人編成。
Miguel Atwood-Ferguson – 5 String Violin
Jamire Williams – Drums
Gabe Noel – Bass
Marcel Camargo – Guitar
Josh Nelson – Piano, Keys
Walter Smith III – Tenor Sax
注目はロバート・グラスパー・トリオやエリマージで知られるヒップ・ホップ世代のジャズ・ドラマー、ジャマイア・ウィリアムス。細かく刻みつつも、キレとニュアンスを刻々と変化させ、大きなグルーヴを生み出すような彼のドラミングは終始冴えまくってましたね。やはり彼の存在が、このアンサンブルを一つ次元の違うところへ導いていたと言っても過言ではなかったと思います。そして低音を支えるゲイブ・ノエル。ブランドン・コールマン達と共にクアンティック作品に参加していたのも記憶に新しいベーシストですね。決して派手ではありませんでしたが、ジャマイア・ウィリアムスのビートに溶け込むように独特の浮遊感を醸すベースラインは特筆物でした。そんな二人が繰り出すリズムの上で、柔らかさと鋭さが溶け込むような音色及び旋律を奏でるミゲル・アトウッド・ファーガソンのエレクトリックなヴァイオリンを中心に、ギター、サックス、ピアノが絡み合っていく。ニューヨークの俊英ウォルター・スミスIIIのサックスも素晴らしかったですが、ジョシュ・ネルソンのピアノがまた美しかった!! この人は、私も大好きな女性ジャズシンガー、サラ・ガザレクとの活動でも知られる鍵盤奏者。私も何度かサラのライヴで彼の演奏を観てるので、今回も楽しみにしていたのですが、サラの時とはまた違う艶っぽさがあってとても良かったです。緩急織り交ぜたセットによるおよそ1時間のステージ。今最も注目されるヴァイオリン奏者ミゲル・アトウッド・ファーガソンのプレイを存分に楽しめたのはもちろん、彼が統べるアンサンブルによる現行最新ジャズの粋をたっぷりと味わえました!
そして松浦俊夫さんのDJを挟み、いよいよサン・ラ・アーケストラ!!
今年92歳になるというマーシャル・アレン率いるサン・ラ・アーケストラ。オフィシャルサイトで発表されている今回の来日メンバーは以下の13人。
MARSHALL ALLEN - Alto saxophone, flute, clarinet, EVI, Kora
KNOEL SCOTT - Alto saxophone, Vocals, Percussion, Dance
DANNY RAY THOMPSON - Flute, Baritone Sax
JAMES STEWART – Tenor Saxophone
CECIL BROOKS - Trumpet
MICHAEL RAY - Trumpet
DAVE DAVIS - Trombone
TYLER MITCHELL – Bass
FRANCIS MIDDLETON – Electric Guitar
GEORGE BURTON - Piano
WAYNE ANTHONY SMITH, JR. - Drums
ELSON NASCIMENTO - Surdo Percussion
TARA MIDDLETON – Vocals
正直な話、マーシャル・アレン以外はお顔を拝見しても名前と一致しない私ですが、ダニー・レイ・トンプソンやマイケル・レイ辺りは60年代、70年代からサン・ラと供に活躍してきた古株です。ノエル・スコットもサン・ラ存命中からグループのメンバーでした。そんな彼らを含む大所帯が、みんなラメラメ、ギラギラな衣装に身を包み、まるで宇宙からやってきたかのような佇まいでリズムとブラスを撒き散らす。それは各々が各々のタイム感でビートを刻み、各々のフィーリングでメロディーを吹き上げるようでありながら、それでいてある意味ポップと思える程、統制が取れている。それはまるでポリリズミックなビッグ・バンドとでも形容したい異次元ジャズ。オーケストラのサウンドだけでも刺激的ですが、そこにマーシャル・アレンがEVI(金管楽器版シンセサイザーのようなもの?)でウニョウニョと宇宙的サウンドを泳がし始めるから堪らない。
個人的には「Sometimes I'm Happy」「When You Wish Upon A Star」「Everyday I Have The Blues」などスタンダードを立て続けに演奏した中盤に痺れましたね。ナット・キング・コールで有名な「Sometimes I'm Happy」では、バンドのスイング感、タラ・ミドルトンのスキャット、それに呼応するブラス隊、全てに愛嬌と毒気があり最高でした。「When You Wish Upon A Star」は「星に願いを」の邦題で知られる映画「ピノキオ」のあの曲ですが、これはもうマーシャル・アレンの独壇場。彼の吹くアルト・サックスはめちゃくちゃフリーキーでアヴァンギャルドなのに、何故か堪らなくスイートに響くという、これはホント聴き惚れました。そして「Everyday I Have The Blues」。B.B.キングですよ!まさかこんなド真ん中なブルースを演るとは思わなかったので驚きました。これがまた紛れもないブルースでありながら、サン・ラ・アーケストラ流という、何ともギラついた酩酊感にクラクラしました。
最後は「We Travel The Spaceways」。メンバーがステージを降り、フロアを練り歩く。観客達は大喜び。もちろん私のすぐ横も通って行きましたし、フロアの奥の方まで分け入っていく。演奏者も笑顔、観客達も笑顔。何とも言えない祝祭感と幸福感に満たされていく。およそ1時間20分程の圧倒的なステージ。いやはや、ディープでした!!
それにしてもマーシャル・アレンは元気でしたね。ステージ狭しと動き回り、はち切れんばかりにブロウしてましたし、EVIを吹けばそのコズミック感は半端ありませんでした。また楽器を操るだけではなく、両手を大きく振り回して楽団の指揮もする。その芸術が爆発しているような姿も格好良かったです!!あっぱれでした!!
そしてサン・ラが終わると同時に真打ちジャイルズ・ピーターソンのDJが始まる。こういう流れこそこのイベントの醍醐味ですよね。エギゾチック&グルーヴィーな選曲に踊りまくりました。ジャイルズ関連のCDはそこそこ聴いてますけど、彼のプレイを生で体感するのはこの日が始めてだったので、感無量でした! そして最後はソイル・アンド・ピンプ・セッションズに日野皓正さんがジョイント。やっぱり日野さんのトランペットは一味違うなと思いつつ、彼のエンターテイナー振りも流石。もちろんソイル・アンド・ピンプ・セッションズも大トリらしく上げに上げてくれました!
なるほど、大人のための都市型音楽フェスティバル。これはぜひ、来年以降も続けていって欲しいものです。
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サン・ラのCDを買って、アーケストラのサイン色紙を頂きました!!
まずはミゲル・アトウッド・ファーガソン・アンサンブル!!
カルロス・ニーニョと共に、Jディラ関連の楽曲をオーケストラ編成でトリビュートした「SUITE FOR MA DUKES」で名を馳せ、フライング・ロータス、サンダーキャット達とも親交を深めるなど、ロサンゼルス音楽シーンのキーパーソンの一人と目されるヴァイオリン/ヴィオラ奏者にしてアレンジャー、プロデューサーのミゲル・アトウッド・ファーガソン。YouTubeを検索すると、ミゲル・アトウッド・ファーガソン・アンサンブル名義により彼の元にフライング・ロータス、サンダーキャット、カマシ・ワシントン、ブランドン・コールマン、クリス・デイヴ等々、蒼々たるメンバーが揃ったライヴ映像が出てきたりするので、かく言う私も楽しみにしていたんです。とは言え、今回のアンサンブルはそこまで豪華ではないんですけどね。ですがそれ故に彼の意思が細部まで行き届いた緻密なステージが展開されたと言えるのではないでしょうか。それは思いのほかクールでメロディアス。もちろん現行ジャズらしい先鋭さを孕みながらも、それ以上に叙情的かつ芸術的な印象を受けました。メンバーは以下の6人編成。
Miguel Atwood-Ferguson – 5 String Violin
Jamire Williams – Drums
Gabe Noel – Bass
Marcel Camargo – Guitar
Josh Nelson – Piano, Keys
Walter Smith III – Tenor Sax
注目はロバート・グラスパー・トリオやエリマージで知られるヒップ・ホップ世代のジャズ・ドラマー、ジャマイア・ウィリアムス。細かく刻みつつも、キレとニュアンスを刻々と変化させ、大きなグルーヴを生み出すような彼のドラミングは終始冴えまくってましたね。やはり彼の存在が、このアンサンブルを一つ次元の違うところへ導いていたと言っても過言ではなかったと思います。そして低音を支えるゲイブ・ノエル。ブランドン・コールマン達と共にクアンティック作品に参加していたのも記憶に新しいベーシストですね。決して派手ではありませんでしたが、ジャマイア・ウィリアムスのビートに溶け込むように独特の浮遊感を醸すベースラインは特筆物でした。そんな二人が繰り出すリズムの上で、柔らかさと鋭さが溶け込むような音色及び旋律を奏でるミゲル・アトウッド・ファーガソンのエレクトリックなヴァイオリンを中心に、ギター、サックス、ピアノが絡み合っていく。ニューヨークの俊英ウォルター・スミスIIIのサックスも素晴らしかったですが、ジョシュ・ネルソンのピアノがまた美しかった!! この人は、私も大好きな女性ジャズシンガー、サラ・ガザレクとの活動でも知られる鍵盤奏者。私も何度かサラのライヴで彼の演奏を観てるので、今回も楽しみにしていたのですが、サラの時とはまた違う艶っぽさがあってとても良かったです。緩急織り交ぜたセットによるおよそ1時間のステージ。今最も注目されるヴァイオリン奏者ミゲル・アトウッド・ファーガソンのプレイを存分に楽しめたのはもちろん、彼が統べるアンサンブルによる現行最新ジャズの粋をたっぷりと味わえました!
そして松浦俊夫さんのDJを挟み、いよいよサン・ラ・アーケストラ!!
今年92歳になるというマーシャル・アレン率いるサン・ラ・アーケストラ。オフィシャルサイトで発表されている今回の来日メンバーは以下の13人。
MARSHALL ALLEN - Alto saxophone, flute, clarinet, EVI, Kora
KNOEL SCOTT - Alto saxophone, Vocals, Percussion, Dance
DANNY RAY THOMPSON - Flute, Baritone Sax
JAMES STEWART – Tenor Saxophone
CECIL BROOKS - Trumpet
MICHAEL RAY - Trumpet
DAVE DAVIS - Trombone
TYLER MITCHELL – Bass
FRANCIS MIDDLETON – Electric Guitar
GEORGE BURTON - Piano
WAYNE ANTHONY SMITH, JR. - Drums
ELSON NASCIMENTO - Surdo Percussion
TARA MIDDLETON – Vocals
正直な話、マーシャル・アレン以外はお顔を拝見しても名前と一致しない私ですが、ダニー・レイ・トンプソンやマイケル・レイ辺りは60年代、70年代からサン・ラと供に活躍してきた古株です。ノエル・スコットもサン・ラ存命中からグループのメンバーでした。そんな彼らを含む大所帯が、みんなラメラメ、ギラギラな衣装に身を包み、まるで宇宙からやってきたかのような佇まいでリズムとブラスを撒き散らす。それは各々が各々のタイム感でビートを刻み、各々のフィーリングでメロディーを吹き上げるようでありながら、それでいてある意味ポップと思える程、統制が取れている。それはまるでポリリズミックなビッグ・バンドとでも形容したい異次元ジャズ。オーケストラのサウンドだけでも刺激的ですが、そこにマーシャル・アレンがEVI(金管楽器版シンセサイザーのようなもの?)でウニョウニョと宇宙的サウンドを泳がし始めるから堪らない。
個人的には「Sometimes I'm Happy」「When You Wish Upon A Star」「Everyday I Have The Blues」などスタンダードを立て続けに演奏した中盤に痺れましたね。ナット・キング・コールで有名な「Sometimes I'm Happy」では、バンドのスイング感、タラ・ミドルトンのスキャット、それに呼応するブラス隊、全てに愛嬌と毒気があり最高でした。「When You Wish Upon A Star」は「星に願いを」の邦題で知られる映画「ピノキオ」のあの曲ですが、これはもうマーシャル・アレンの独壇場。彼の吹くアルト・サックスはめちゃくちゃフリーキーでアヴァンギャルドなのに、何故か堪らなくスイートに響くという、これはホント聴き惚れました。そして「Everyday I Have The Blues」。B.B.キングですよ!まさかこんなド真ん中なブルースを演るとは思わなかったので驚きました。これがまた紛れもないブルースでありながら、サン・ラ・アーケストラ流という、何ともギラついた酩酊感にクラクラしました。
最後は「We Travel The Spaceways」。メンバーがステージを降り、フロアを練り歩く。観客達は大喜び。もちろん私のすぐ横も通って行きましたし、フロアの奥の方まで分け入っていく。演奏者も笑顔、観客達も笑顔。何とも言えない祝祭感と幸福感に満たされていく。およそ1時間20分程の圧倒的なステージ。いやはや、ディープでした!!
それにしてもマーシャル・アレンは元気でしたね。ステージ狭しと動き回り、はち切れんばかりにブロウしてましたし、EVIを吹けばそのコズミック感は半端ありませんでした。また楽器を操るだけではなく、両手を大きく振り回して楽団の指揮もする。その芸術が爆発しているような姿も格好良かったです!!あっぱれでした!!
そしてサン・ラが終わると同時に真打ちジャイルズ・ピーターソンのDJが始まる。こういう流れこそこのイベントの醍醐味ですよね。エギゾチック&グルーヴィーな選曲に踊りまくりました。ジャイルズ関連のCDはそこそこ聴いてますけど、彼のプレイを生で体感するのはこの日が始めてだったので、感無量でした! そして最後はソイル・アンド・ピンプ・セッションズに日野皓正さんがジョイント。やっぱり日野さんのトランペットは一味違うなと思いつつ、彼のエンターテイナー振りも流石。もちろんソイル・アンド・ピンプ・セッションズも大トリらしく上げに上げてくれました!
なるほど、大人のための都市型音楽フェスティバル。これはぜひ、来年以降も続けていって欲しいものです。
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サン・ラのCDを買って、アーケストラのサイン色紙を頂きました!!