徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

7日間連続

2009-10-14 21:47:43 | Movie/Theater


7日間連続 映画『ドキュメンタリー 頭脳警察』公開記念イベント
会場:渋谷・シアターN(連日18:30の回上映後)

●11月7日(土)重信メイ(ジャーナリスト)×宮台真司(社会学者)×瀬々敬久(『ドキュメンタリー頭脳警察』監督)
●11月8日(日)足立正生(映画監督)×瀬々敬久
●11月9日(月)井土紀州(映画監督)×瀬々敬久
●11月10日(火)PANTA×スペシャルゲスト
●11月11日(水)PANTA×鈴木慶一(ムーンライダーズ)
●11月12日(木)PANTA×鈴木邦男(「一水会」顧問)×木村三浩(「一水会」代表)
●11月13日(金)頭脳警察(PANTA・TOSHI)×瀬々敬久
※11/10のゲストは公式サイトにて後日発表。

ナカス的にもご縁があって登場していただいた方が数多く登壇される模様。森達也さんは出られないのだろうか…。
さらに老舗のフライングパブリッシャーズからも続々リリース攻勢。

頭脳警察40th記念リリース
●最新アルバム「俺たちに明日はない」
90年、再結成頭脳警察三部作リマスタリング
●『頭脳警察7』『LIVE IN CAMP DRAKE』『歓喜の歌』
同再結成頭脳警察のファイナルライブの初DVD化
●『1991 2.27 最終指令自爆せよ!頭脳警察』
さらに絶版だった自伝をリイシュー(89年パワステの未発表ライブDVD付)
●『PANTA自伝-歴史からとびだせ』

現在、渋谷・シアターNで上映中の『あがた森魚 ややデラックス』(10月号)、『ドキュメンタリー 頭脳警察』(11月号)を特集した中洲通信も同劇場で販売予定です。

8月の野音、しみんぐスーン

2009-07-26 02:45:20 | Movie/Theater
またもや清水宏さんが野音でライブをやるらしい。野音の開放感をまるで無視したとしか思えないスズナリサイズの自爆芸。それがまたいい。
前回も程よく満員でいい雰囲気だったので、夏の夜にビールでも呑みながら観るのもいいですよ。
ちなみに翌日の野音はSIONさんなんだがね…。

<清水宏の炎の演劇部!~夏だ!野音だ!しみんぐスーン!!>
日時:8月7日(金)
OPEN18:00/START19:00(当日券は15:00から受付)
会場:日比谷野外大音楽堂
料金;全席自由2000円
問い合わせ;ツインビート(03-3325-7565※平日11時~17時)
清水宏のやる気マンマン男

少年という希望/「リリア 4-ever」

2009-07-24 02:11:29 | Movie/Theater
リリア 4-ever
Lilya 4-ever/2002/スウェーデン
監督:ルーカス・ムーディソン
出演:オクサナ・アキンシナ、アルチオン・ボグチャルスキー
<旧ソ連のどこかの町。母親に捨てられた少女リリアは、シンナー遊び、酒、生活のための売春と、悲惨な生活を送っていた。そんなある日、ハンサムで優しいアンドレイが、スウェーデンでの新しい生活にリリアを誘う。しかしそこで彼女を待っていたのは、あまりにも過酷な運命だった…。>(シネフィル・イマジカ

4歳違いだがブリトニー・スピアーズと同じ誕生日に生まれた少女。
かたやアメリカ、こなた旧ソ連のどこかの町。
恋人と共にアメリカに行ってしまった母に捨てられた少女の身に、貧困が救いようのない不幸の連鎖を引き起こす。貧困がさらに苛烈な差別と暴力、不理解、不寛容を生み、弱いものがさらに弱いものを叩く、大なり小なりどこの国でも起こり得るの図。遠い昔の雄大なる赤い物語と現在の経済発展は、そんな絶望的な人たちに何の救いももたらさない。さらに終盤、監督のルーカス・ムーディソンは、スウェーデンに送られ、監禁状態で売春させられるリリア目線で、暴力(買春)シーンを繰り返し描き、救いようのない物語を駄目押しする。
かなり重い。全編を通してずっしりと重いが、ラストのシークエンスは<希望>に見えたけどね。
リリアはもう一度、目を開いたじゃないか。
リリアはもう一度、自分の人生を生き直すのだ。清々しい表情で、おばあちゃんがアパートの階段に落としたポテトを拾ってあげて、訳のわからない怪しい男の誘いなんてきっぱり断る。もう一度、自分の人生があったなら、きっとリリアはそうしていたはずだから。そして絶望の町で、唯一の希望であり、未来である少年と一緒にバスケットボールをする。ふたりとも背中に天使の羽をつけながら。
少年はやっぱり遥かな未来であって、微かな希望なんである。

14歳でリリアを演じたというオクサナ・アキンシナという女の子は物凄いと思う。

ピナ

2009-07-01 07:30:34 | Movie/Theater
<ピナ・バウシュさん(ドイツのバレエダンサー・振付師)30日、ドイツ西部ブッパータールで死去、68歳。がんを患っていた。 現代舞踊の担い手で、米国のバレエ団で活動後、73年にブッパータール舞踊団の芸術監督に就任。04年には埼玉県で公演した。アカデミー脚本賞に輝いたスペイン映画「トーク・トゥ・ハー」(02年)で踊りを披露。07年に優れた芸術家に贈られる京都賞を受賞した。>(時事通信 7月1日付

格好いい女というのは実在する。
5年前にヴッパタール舞踊団の「バンド・ネオン」を観た。ピナ・バウシュは格好良かった。そのとき買ったポスターはもちろん部屋にある。シャープで美しいピナである。
先月21日まで舞台に立ち、5日前に癌を宣告され、昨日亡くなったという。
やっぱり、強くて格好いいなあ……。



ビム・ベンダース×ピナ・バウシュ。夢のコラボで世界初3Dダンス映画製作(eiga.com)

何か、最近はこんなニュースばかりだな。20年前もそうだった。

男だらけのロシアンルーレット大会/「13ザメッティ」

2009-07-01 06:09:53 | Movie/Theater
13/ザメッティ
13 Tzameti/2005/フランス=グルジア=ドイツ
監督:ゲラ・バブルアニ
出演:ギオルギ・バブルアニ、オーレリアン・ルコワン、パスカル・ボンガール、フィリップ・パッソン
<仕事先で偶然、パリ行き列車の切符を入手した22歳のグルジア移民セバスチャン(ギオルギ・バブルアニ)は、次々と現れる“13”という数字に導かれ、不気味な屋敷に辿り付く。そこは大金を賭けられた13人のプレイヤーが一斉に銃の引き金を引いて生死を競う邪悪なゲーム“集団ロシアン・ルーレット”を行う賭場だった。そのゲームに強制参加させられた彼は…。>(シネフィル・イマジカ

これほどあらすじを簡潔にまとめやすい映画というのもないだろう。意味ありげにプレイヤーの控え室にジム・モリスンのポスターが貼ってあったりするのだけれども、もう、まったくあらすじのまんまのオフビートな設定勝負。
何かに似ているなあ…と思ったら、要するに、これカイジの世界である。しかもカイジでさえ(福本先生でさえ)物語に風俗や人物の背景を(ベタに)織り込んでいくのに、ゲームの緊張感を強調させるモノクロームの映像はそんなベタな装飾はまったくなし。ほぼ序盤以外は女優も出てこない、男だらけのロシアンルーレット大会。
ここまで徹底していると、監督は本当にロシアンルーレットだけを描きたかったんだろうとしか思えない。実際に、<業界に何のコネもない彼がまず資金集めのため私財をはたいて撮ったのが、本作のハイライトとなるロシアンルーレット・シーンだ。>(「13/ザメッティ」新人監督らしからぬ腰の据わった語り口)というのだからさもありなん。故に、シンプルで緊迫したストーリー、濃密な映像共にこのロシアンルーレット映画の完成度は実に高い。
そしてハリウッドでのリメイクは蛇足になる可能性が高い、かも。
人は金がないとき、シンプルで純度の高い作品を作る。

7月のシネフィルは、なかなかいいタイトルが並んでいるよ。

ロック観/「少年メリケンサック」

2008-12-19 00:04:24 | Movie/Theater
10時から東映で「少年メリケンサック」の試写会。最終試写(?)なので補助席も出るほどの盛況ぶり。正直10時スタートというのは結構辛かったのだが、物語はとっても単純なのですんなりクドカンの世界に入り込めた(ということでバンドネタやら風俗ネタやら、小ネタが非常に多いのだ)。端々にクドカンのロック観が出ていてかなり笑える。メガネ男子バンドへの描き方は特に共感した。
狂気に振り回される常識人というのはコメディの定石だけれども、その難しい役どころを演じた宮崎あおいも、さすがに勢いを感じさせる快演で、永作博美みたいな息の長いアイドル女優になるかも。
少年メリケンサックの「ニューヨーク・マラソン」のオチもクドカンらしくて見事。クドカン作詞の挿入歌はどれもかなり出来がよくてサントラが楽しみだ。
来週にかけていろいろと取材予定(“話題作”なんで動いてもらっている映画班に申し訳ないんだが……)。

このあと、リザードのモモヨさん取材というのも、わかる人にはとってもよくわかると思うけれども変な感じではある。リアル「少年メリケンサック」だよ。

有楽町駅前の大黒天で年末ジャンボを買ってから渋谷へ。

三者三様/「40歳問題」

2008-11-27 20:42:15 | Movie/Theater
中江裕司監督の『40歳問題』を観る。内容が内容だけに興味深く、面白い。ファン目線で観るのもありだろうけれども(でも本当は、それだけでは観ていてもつまらないと思うが)、40代という年代と、自分と音楽との関係を考える上では触発される一本。浜崎貴司、大沢伸一、桜井秀俊、三者三様のスタンスが鮮やかに描かれている。とにかく映画の中で常に緊張感をもたらす大沢伸一の挑発的な発言、そして衝撃のラストシーンはかなり響いた。あのひりひりするような緊張感というのは一体何なんだろうか。彼はやはりホンモンですな。

暗黒の20代のときよりも、今はロックに限らず音楽がとてもリアルに響いている。
もう後戻りできないもんね。行くとこまで行くしかない。

明日は中江監督の取材。

原点/ジャガーの眼2008

2008-10-13 02:41:03 | Movie/Theater
三鷹の森ジブリ美術館横の木もれ日原っぱで、唐組公演「ジャガーの眼2008」。
80年代半ば、オレが初めて唐十郎の芝居を観たのは、NHKで放送された状況劇場の「ジャガーの眼」だった。舞台中継とはいえ鮮烈なイメージを残して、オラ東京さ行って芝居観るべ! と決意したのは言うまでもない。上京してから下北沢で観たのは新宿梁山泊と(当時の)WAHAHA本舗だったのだが。
今回は「2008」と銘打ち、あの頃とはすっかりキャストも(もちろん唐さんも)変わっているけれども、全編に溢れるテラヤマへのオマージュ、あのときを呼び覚ますようなイメージはそのままに感動的な舞台でありました。
ストーリーや意味だけを追ってもたぶん無駄に疲れるだけだ。テラヤマの戯曲は書籍で読んでも面白いけれども、やはり唐さんの戯曲は読むよりも舞台で観たら数千倍は面白い。
このあと同所では18日、19日と公演が行われ、10月24日~26日にかけて雑司ケ谷・鬼子母神へ公演は続く。これは観ておいた方がいいです。

もう7、8年前だったと思うけれども、ある公演が出演者の急病で急遽中止になったことがあった。そんなことも知らずに新宿西口の原っぱに建てられた赤テントへ行くと、唐さん自らが雨の中、先頭に立って来場者に謝罪をしていた。あの姿が忘れられない。身体を張った表現者ってのはそういうもんだよね。
近々にナカスでもオファーしてみたいと思いますです。

終演後、酒が呑みたくなったので久々にgate oneにでも行こう…と思ったら今日はクローズだったので、スケジュールを確認してみたら中野で梶原まり子さんと大口純一郎さんがライブをやっているようなので顔を出す。痺れた足を引きずって中野のセロニアス。結局気がつけば信二さんを始めgate oneファミリーが店に集まっていて、これじゃあgate oneで呑んでるのと変わんないのであった…終電まで。

唐さんの芝居を観て、大口さんたちのJAZZを聴くと、まあ人間いろいろあるんだけれども、昨日と今日は違うし、今日と明日はやはり違うのだと前向きに信じられたりするのであった。

キープオン/「世界最速のインディアン」

2008-07-10 06:06:08 | Movie/Theater
世界最速のインディアン
The World's Fastest Indian/2005/ニュージーランド=アメリカ
監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、クリス・ローフォード、アーロン・マーフィー。クリス・ウィリアムズ
<ニュージーランドで年金生活を送る63歳のバートは、21歳のときに出会ったバイク“1920年型インディアン・スカウト”を心底愛していた。手作りで改良を重ねた愛車で、アメリカのユタ州、ボンヌヴィルの大会に出場し、世界最速記録を樹立することがバートの夢だった。苦労の末、旅の資金を調達し、周囲の人々に助けられながら、競技会場に到着した。ところが、インディアンは前代未聞のポンコツ車だと笑われ、出場資格なしと宣告されてしまう…。>
シネフィルイマジカ

シネフィルイマジカで『世界最速のインディアン』。齢63にして、愛車の1920年製インディアンで1000cc以下のオートバイ陸上速度記録を樹立したバート・マンローを熱く描いた作品。
ニュージーランドからスピードの聖地を目指しアメリカを横断するバート。初めてボンヌヴィル塩平原(ボンネビル・ソルトフラッツ/Bonneville Salt Flats)に立ったバートはひとり語り始める。

「デカいことをしたかった。ほかの奴らに出来ないことを。それでここに来た。ここはデカいことが起こる場所だ。陸上のスピード記録はここで作られた。この場所でね。“ブルーバード”を駆ったマルコム・キャンベル、人類初時速483キロ突破。息子のドナルドは563キロで潰れたが、無事生き残った。ジョン・コップもここで時速643キロを達成。偉大な連中だ。ジョージ・イーストンと“サンダーボルト”、ミッキー・トンプソンと“チャレンジャー”……ここは神聖な土地なのだ。その聖地に今立ってる」

雄々しく語られるべき栄光の物語、そして人間がいる場所というのが聖地なのである。バイクとスピード(インディアン)への妄信とも言える深い愛情を、平原の風景と熱い言葉で描くこのシーンは実に美しい。
そしていつの間にか、トラブルに遭いながらも飄々とひとつの夢に向かって突き進むバートを演じるアンソニー・ホプキンスがオシム爺さんのように見えてくる(ナリも似ている)。

「整備不良だ」
「43年乗って俺は生きてる」
「年齢オーバーだ」
「バカ言え。顔にしわはあっても心はまだ18歳だ。走りを見りゃわかる」

残り時間を後ろから数え始めた途端、熱に浮かされたように少年の心を持つ中高年というのはいまどき少なくないが、バートはおそらく何ひとつ変わらないまま少年の心をキープオンし続けた。そして彼は自分の夢と信念を雄々しく(時々説教臭く)語るだけではなく、その夢を実現する優秀なエンジニアでもあった。オシム爺さんぽいでしょ。アンソニー・ホプキンスが脚本に惚れて出演を決めたというのもよくわかる。やっぱり深い愛情と熱い夢は持ち続けておいた方がいい。そのためのちょっとした努力と運さえあれば、変り者だろうが、貧乏だろうが、何とか生きていけるものだろう。

人間の価値は 誰がいつ決めるのだろう
どう生きたなのか どう生きてくのか?(仲井戸麗市

ということで。

そして参考資料。
「バート・マンロー スピードの神に恋した男」(ジョージ・ベッグ/中俣真知子他・訳)

朝から/「グラマーエンジェル危機一発」

2008-06-28 08:05:34 | Movie/Theater
グラマーエンジェル危機一発
1986年/アメリカ
監督:アンディ・シダリス
出演:ロン・モス、ドナ・スピア
<グラマー美女ばかりを集めたハワイの麻薬捜査班、通称"グラマー・エンジェル"が巨大麻薬シンジケート撲滅のために大暴れするアクション映画。>(ムービープラス

今日からJ再開ってのに朝生を見てしまった上に、寝ずにこんな映画観るんじゃなかった……ということで、ムービープラスで録画しておいた、80年代を代表するバカ映画「グラマーエンジェル危機一発」。ストーリーは上記の解説にある通り、あとはほぼ10分おきにひたすらセックス&バイオレンス。プレイメイトのドナ・スピアを始め、揃いも揃ってファラ・フォーセットのようなヘアスタイルのグラマー・エンジェル軍団は見事な巨乳を(まったく)惜しげもなく晒す(むしろ積極的に)。
殺人フリスビーで敵を惨殺したり、ダッチワイフをわざわざバズーカで爆破したり、おっちょこちょいな麻薬シンジゲート撲滅のためだけに、ただでさえ無駄なアクションと演出が多いのだが、さらにここに一匹の毒蛇が賑やかしのために出てくる。この毒蛇が凄い。何が凄いのかというと<ガンにかかったネズミの毒素に汚染され、出会った動物を皆殺しにする>という、ほとんど意味不明に凶暴でアンタッチャブルな毒蛇なのである。この毒蛇も危険だが、どう考えても<ガンにかかったネズミ>の方がアウトブレイク的に危険じゃないか。
まあ、その、そんなこんなでポルノ男優と見紛うようなスマイルを絶やさない野郎どもと共に巨乳天使軍団が大活躍してアメリカンにいろんな出来事は解決するわけですが。

無理にお勧めしません。観ても観なくても、どっちでもいいです。

これから日本平へ出撃ですよ……。
観ちゃったもんは仕方がない。

敵か?味方か?/「ソ満国境2号作戰 消えた中隊」

2008-06-04 01:28:10 | Movie/Theater
ソ満国境2号作戰 消えた中隊
1955年/日活
監督:三村明
脚本:菊島隆三、黒澤明
出演:辰巳柳太郎、河村憲一郎、石山健二郎、島田正吾、島崎雪子
原作:井手雅人(「池の塩」)
<ソ連と国境を挟む北満州の小村を舞台に、偶発的な発砲事件によって悲劇が引き起こされる。昭和16年、黒竜江を挟んでソ連領と対峠する関東軍の国境監視部隊に香川大尉(辰巳)が赴任する。上層部が対ソ開戦を誘発しようと密談するのを聞いた香川は、その企てに引き込まれる。そんな中、国境で発砲事件が起き…。>
日本映画専門チャンネル

「敵か?」
「味方だ!」
満ソ国境を監視する国境監視部隊に関東軍の砲弾が撃ち込まれる。“反逆罪”に問われた岸中尉が目を見開いて望遠鏡を覘いていた監視台にも、ギャグ漫画のように砲弾が直撃する。こうして部隊はあっさり“消されてしまう”。
彼らはなぜ消えなければならなかったのか?

日本映画専門チャンネルの<没後10年特別企画 脚本家 黒澤明の仕事>、「ソ満国境2号作戰 消えた中隊」。満ソ国境を監視する関東軍国境監視部隊に赴任してきた、生真面目な香川大尉(辰巳柳太郎)。香川大尉は、現地の人々とゆるーく交流する岸中尉(河村憲一郎)と国境監視部隊を苦々しく思いながら、あるとき独ソ開戦の報を聞いた関東軍(の一部)上層部の密談を聞いてしまう。彼らは「独断専行あるのみ、責任を問われたら腹を切るべし」と、満ソ国境でノモンハン再現の絵図を描く。このとき昭和16年6月、まだまだイケイケなのである。
関東軍の冷徹な現実と、中隊と現地民の交流、慰安婦たちの(楽天的な?絶望的な?)逞しさが、対照的に描かれる(特に前半はゆるい国境監視部隊と生真面目な香川大尉のやりとりがユーモラスに描かれる)。
悲劇は中間管理職のように苦悩する香川大尉。そして……。

「敵か?」
「味方か?」
ふたつの現実に挟まれた生真面目な理想主義者は、廃人のようになるしかない。
この映画で描かれる、彼の、そのエレジィが感じ取れない人は不幸だ。
そういう人って、
「敵か?」
「味方か?」
って問われたときに、きっと平気でいられる人なんだよネ。

満州浪人の島田正吾が香川大尉の辰己柳太郎に自決を促すシーンが見所か。

<6月放送作品>
戦国無頼(1952年)
ソ満国境2号作戰 消えた中隊(1955年)
あすなろ物語(1955年)
日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(1957年)
殺陣師段平(1962年)
ジャコ萬と鉄(1964年)
姿三四郎(1965年)
雨あがる(2000年)
海は見ていた(2002年)
ジャコ萬と鉄(1949年)
殺陣師段平(1950年)
どら平太(2000年)

80年代の青春/「ブレックファスト・クラブ」

2008-05-01 20:29:42 | Movie/Theater
ブレックファスト・クラブ
The Breakfast Club/1985/アメリカ
監督:ジョン・ヒューズ
出演:エミリオ・エステヴェス、モリー・リングウォルド、アリー・シーディ、ジャ
ド・ネルソン
<5人の高校生はヴァーノン先生に命じられて、土曜日だというのに学校の図書館で課題に取り組んでいた。それぞれが起こした問題の罰として、「自分は何であるか?」という作文を書かされていたのだ。(中略)これまで全く接点のなかった5人は、お互いの身の上話を交わし始め、次第に心を開いて行く。>
シネフィル・イマジカ
goo映画

80年代に登場したアメリカの青春スター軍団を総称するブラット・パック。彼らのボス(監督)がジョン・ヒューズで、彼と彼らの代表作で、だからなのか、80年代青春映画の傑作と言われている作品、らしい。
学校の図書館という空間の中で、登場人物も5人の高校生と2人の大人(教師と用務員)。舞台のように、限られた空間の中でテンポよく展開する会話劇。教師たちが類型によって学生を分類(秀才、アスリート、お嬢様、不思議ちゃん、不良)することに反発しながらも、分類しているのは教師だけではなくて学生同士も分類しあったりして、お互いのキモチをぶつけ合いながら最後には理解し合ってカップル誕生という展開は恥ずかしげもなく思いっきりベタ。ヤッピー映画風にセックス、ドラッグ&ロックンロール(ただし80年代)なのも、さらにベタ。それだけに、これ以上わかりやすい“青春映画”もないんじゃないかということで80年代の青春映画の傑作というもの頷ける。80年代の青春って何なんだ。
不思議ちゃん(アリー・シーディー)がソフィストケートされて変身して万事丸く収まるのもなあ……そこはもっと情念だろう。

80年代という時代に、確実に“そこ”にいながら“ある部分”に入り込めない自分を再発見したりして。嫌なら観るなと言われても、観てしまったものは仕方がない。この世界はディラン&キャサリンで十分っす。

没後10年/「翼の凱歌」「地獄の貴婦人」

2008-04-10 02:12:05 | Movie/Theater
翼の凱歌
1942/東宝映画
監督:山本薩夫
脚本:外山凡平、黒澤明
出演:岡譲二、月田一郎、入江たか子、花井蘭子
<新鋭戦闘機「隼」の誕生を描いたアクション作。夫とともに戦死した野田機関士の息子・喬を引き取った伸子(入江)は、我が子・雄吉と共に大切に育てた。やがて成長した雄吉(岡)は大尉となり活躍する。一方、喬(月田)は、航空機製作所でテストパイロットとして「隼」の開発に命を懸けていた。>
日本映画専門チャンネル

地獄の貴婦人
1949/東宝
監督:小田基義
脚本:黒澤明、西亀元貞
出演:木暮実千代、小沢栄太郎、高田稔、志村喬
<終戦から3年半後の日本、インフレ対策として当局は脱税摘発組織「Tメン」を結成し、藤村産業の社長(小沢)を調べる。しかし藤村は中央党の幹部・南郷とつながりがあり、二人は元伯爵壬生夫人(木暮)をめぐる恋敵でもあった。>
日本映画専門チャンネル
goo映画

日本映画専門チャンネルで放送中の<没後10年特別企画 脚本家黒澤明の仕事>。
今日は「翼の凱歌」と「地獄の貴婦人」。
「翼の凱歌」は陸軍協力・製作の戦意発揚映画で、飛行シーンはかなりの迫力。モノクロで、テレビの小さな画面で観ていても迫力あるんだからスクリーンで観たら、そら戦意も発揚されるわな。兄は撃墜王、弟はテストパイロットという、血はつながっていないが健全なココロを持つ兄弟を主人公に、大日本帝国が生んだ名戦闘機・の開発を描く。もちろん登場人物はオール善玉のみ。これ、ホントの昭和のプロジェクトⅩ(リアルで開発に関わる描写はもちろんないけれども、気分の問題です)。
一方「地獄の貴婦人」は、経済的混乱が続く敗戦直後の東京を舞台に「女には茶箪笥型と扇風機型の2種類しかない」と言い放ち、惚れた美女(木暮実千代→入浴シーン有!)にねちねち詰め寄る悪漢・小沢栄太郎が魅力的なピカレスクな小品。時代が変われば国も変わる。それもほんの2、3年で。
それにしても昭和の映画女優というのは本当に美しいのことよ。

<3ヶ月連続特集 没後10年特別企画 脚本家 黒澤明の仕事>
4月その他の放送作品
青春の気流(1942)
土俵祭(1944)
天晴れ一心太助(1945)
四つの恋の物語(1947)
銀嶺の果て(1947)

5月放送作品
ジャコ萬と鉄(1949)
暁の脱走(1950)
殺陣師段平(1950)
荒木又右ヱ門 決闘鍵屋の辻(1952)
吹けよ春風(1953)
どら平太(2000)

6月放送作品
戦国無頼(1952)
ソ満国境2号作戦 消えた中隊(1955)
あすなろ物語(1955)
日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(1957)
殺陣師段平(1962)
ジャコ萬と鉄(1964)
姿三四郎(1965)
海は見ていた(2002)他