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徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

欲求不満のナビゲーター/「ブラインドネス」

2011-01-13 03:32:23 | Movie/Theater
ブラインドネス
Blindness
2008年/カナダ=ブラジル=日本
監督:フェルナンド・メイレ
出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、伊勢谷友介、木村佳乃
<突然、視界が真っ白になって失明する伝染性の奇病が世界中で蔓延。一切の介護もなく精神病院に強制隔離された患者たちは…。F・メイレレス監督による震撼サバイバル・パニック・サスペンス!ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの寓意に満ちた傑作小説『白の闇』を「シティ・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」の俊英監督が映画化、極限状況下に置かれた人間たちが本性をむき出しにする熾烈なサバイバル模様を描いた衝撃作。>(シネフィルイマジカ

と、解説を読んでしまうとパンデミックネタのパニック・エンタテイメントのようにも見える。事実、ネット上のレビューはこの手の宣伝文句に釣られて観てしまったであろうレビュワーの恨み節の嵐。賛否両論は当たり前、それだけ物語の設定がキャッチーなんだと思う。前提として<謎>の解明やヒーロー、ヒロインの活躍で<奇病>が解決するような展開を望んでいると完璧に肩透かしを食らう。
しかしそれは主題ではないので仕方がない。作品では誰もが<謎>から逃れることができないのだ。むしろ、観る者を終始イラつかせる<唯一目が見える主人公>はストーリーを判り易くするためにナビゲーターとして設定されたのかとも思える。彼女は<世界>を救う神ではなく、愛する旦那に寄り添う人間でしかない。ということで、彼女の何がイラつかせるかといえば、<唯一目が見える>くせに、憤りながらも感染者の凌辱や暴力をただ受け入れてしまうから。しかし彼女は結局何もできないのだ。<唯一目が見える>からこそ、彼女はこの暴力に溢れた<世界>では、圧倒的に孤独で、ヒロインにもなれずに、無力感を味わうだけのナビゲーターになるしかない。
それは結局観客と同じ視点なのだ。何もできない彼女は、<目が見えない>感染者だらけの<世界>でイライラし続ける。

前半は理不尽に隔離された施設での陰湿で破滅的、エゴ剥き出しの密室(隔離)劇がこれでもかと描かれる。そして後半、<解放>された感染者は、既に破滅してしまっていた本当の世界でゾンビのように廃墟の町を徘徊する。そのまんま、誰もが思い浮かべるであろうロメロ的なゾンビ描写。
描かれるのは破壊と再生。オレは、解放までぐいぐいストレスを溜めた挙句の、唐突な再生のラストシーンで鳥肌が立ってしまったクチなので全然オッケー。ジュリアン・ムーアと同化しました。
ただし最初に再生するのがあの人というのは何だかなあとは思うがw
あと木村佳乃の脱ぎっぷりの悪さを批判していた人がいたけど、完全に同意です。

原作も読んでみたい。

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