徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

70年代(末)の青春/「ヒポクラテスたち」

2010-02-06 08:38:36 | Movie/Theater
ヒポクラテスたち
1980/ATG
監督・脚本:大森一樹 
出演:古尾谷雅人、伊藤蘭、光田昌弘、柄本明、小倉一郎、阿藤海、内藤剛志
<医学生グループが臨床実習という具体的な医療の現場で出くわす、さまざまな当惑や驚きや失敗や珍事の数々。そんな折、愛作(古尾谷雅人)はガールフレンドから妊娠を告げられる…。>(日本映画専門チャンネル

公開は80年だけれども、70年代の青春群像劇。それも70年代末だからできたであろう、時代の残滓。だからおもろくてやがて哀しく、切ない。そして痛ましい。
古尾谷雅人のイメージはこの映画のイメージのままで、彼があんな凄絶な最期を遂げてしまったときもこの映画を思い出した。同級生とは頭3つぐらい抜けている猛烈にひょろ長い体躯に繊細と凶暴を秘めていて、さらに運動の挫折感を滲ませる複雑骨折な70年代の青春。派手なアクションがあるわけではないけれども彼が優作フォロワーであったことはよくわかる。
学生たちはそれぞれがそれぞれのもどかしさを抱えつつ、忙しなく煙草を呑み続ける。呑まなきゃ(飲まなきゃ)やってられないという、脱臭されていない青春の空気がここにはまだ残っている。

手塚治虫、鈴木清順、北山修など、これでもかというぐらいのゲストが、いかにもゲスト然として登場したり、さらにいかにも効果音の類は、やはり現在では古臭さを感じざるを得ないが、小倉一郎、阿藤海、内藤剛志の若さと勢いはとても魅力的だし、千野秀一の音楽が70年代ぽくてとてもいい。
エンディングにあるほろ苦さや誠実さや愚直さのリアリティを80年代以降の日本は徐々に喪っていく。

それにしても、やはり古尾谷雅人は惜しい役者だったと思う。

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