ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

偽説 鼎の浦嶋の子伝説 その2

2010-03-13 21:41:40 | 寓話集まで
 浦嶋の子と乙姫と、夫婦の契りを成しき。
 巌井崎は、その奇怪なる景観からもと地獄崎と称うが、仙台藩第四代藩主伊達吉村公巡回の際、対岸の大嶋竜舞崎を望みて、浦嶋の子と乙姫が古の物語に感(たけ)りて言祝ぎ、祝崎と改むと言ふ。
 そのまま、うとうとと眠りたるが、目ざむるに、乙姫。浦嶋の子を誘ひて、窟の奥、波の寄せる方に進みぬ。海水に入り、まさに窟を出たるとき、身は軽々と中空を飛び、見知らぬ港に着きたり。
 この港には、四〇〇トンクラスの大いなる遠洋漁船数多係留され、行き交うひとびとにて賑わひたり。岸壁は、石山修武なる建築家のデザインによる「海の道」と曰ひ、ニセアカシヤの並木に波と小石の浜を装ひたる透水舗装の舗道と斬新なる意匠の見送りデッキ兼トイレ、マストにウミネコのとまる姿となむ曰ひたる照明燈あり。恵比寿様が釣り竿で自ら釣り上げたるマグロに乗った世界一のマグロの貯金箱も面白し。新しく整備されたる魚市場北桟橋には「海鮮市場・海の市」オープンし、世界に稀なる鮫の博物館「リアス・シャーク・ミュージアム」などあり。
 このあたりにてマグロの丼など食べたるに値段も手頃なるが、その美味さ絶品なり。フカヒレラーメンもまた精妙滋味なり。
 山に向かえば、これも石山が設計なる「リアス・アーク美術館」なるものあり。宇宙から着地して海に迫り出さんとする大いなる宝箱なり。開けてみれば三百歳も若返りたる心もちやすなるらむ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿