ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

コレスポンダンス

2010-03-19 07:12:27 | 寓話集まで
万物は照応する

十一月の午前の太陽に光る海
標高二百三十四メートルの亀山から眺望する無数の波がきらきらと光る海
大島は右手に
田中浜小田の浜と弓なりの二つの砂浜が続き
左奥から唐桑半島が前方に向かって突き出す
その間
広々とした光る海
その中に
大前見島 小前見島 唐島と
無人の小島のシルエット
島影

島影とはこのことだ

陸の国計仙麻大島は
神社の創建された古代も
紀州や瀬戸内の海民が黒潮に乗る鰹を追いあるいは干した昆布や鮑を求めて渡ってきた中世も
良く晴れた秋の午前には
同じように
広々と波を輝かせていた

今日は
前日までの低気圧を避けて港に集結していた秋刀魚船が
両舷に翼のような集魚灯たちを装備して三艘 二艘 五艘と
我先に
波を立てて
はるか沖合の漁場に向かって
太陽の方向に
出航していく

万物は照応する

太陽は波を輝かせ
波は島影を浮かび上がらせ
島影は私を動かす

秋刀魚船は航波を立て
航波は旅客船を揺動させ
乗客たちを動かす

私たちは
島影に
波に
海に
太陽に動かされる

私たちは
秋刀魚に
鰹に
動かされる
海流に動かされる

全てのものは照らし合っている


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