語り 男人の中年の男が、すっかりフランスの紳士のかたちをして、ぴかぴかするペンを持って、白い紙の大きな束を抱えて、だいぶ奥深い湾の、大きな漁船の立ち並ぶあたりを歩いておりました。
男 ぜんたい、ここらのまちは、怪しからんね。旅人も、まちのひともひとりもいやがらん。だれでもいいから、早く捕まえて、タンタアーンと、言葉でスケッチしてやりたいもんだ。
語り そのとき、ふと、前を見ると、立派な大きなビルがありました。そして玄関には、
文字 宮城県詩人会
朗読の午後
詩を真ん中に置いたコラボレーション
語り と書いてありました。
男 おや、ちょうどいい。ここには、たくさんひとがいるに違いない。とにかく、入ってみよう。
文字 どなたさまもどうかお入り下さい。けっしてご遠慮はありません。
語り 男はひどく喜びました。
男 こいつは、どうだ、やっぱり世の中はうまくできているねえ。今日一日誰にも会えないかと思ったが、けっしてご遠慮はありませんと来た。
語り 男は戸を押して中に入りました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。
文字 ことに、ペンをもって、白い紙の束を抱えた方は大歓迎いたします。
語り 男は大歓迎というので、もう大喜びです。
男 そうか、おれは大歓迎に当たっているのだ。
語り ずんずん、建物の中に進んでいきますと、また扉ががありました。その扉には、緑色の字で
文字 当会は、何も難しい注文はありませんから、どうかそこはご承知下さい。ペンも持たず、紙の束も持たないかたがたも、注意深い耳と、ちょっとばかりの好奇心さえあればたいへん結構です。
さあさあなかに、お入り下さい。
語り と書いてありました。
さあ、皆さん、宮城県詩人会 朗読の午後の始まり、始まり。
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