ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

夜の霧

2009-02-14 22:07:18 | 寓話集まで
港に
霧が深い

夜霧よ
今夜も有難う
今夜も有り難く存ずる
今宵は存在の困難を深く思い患う
ふたりの恋を全うする困難を
忍びあう恋を抱擁するやさしさ
目隠しする思い遣りよ
夜霧よ

瓦斯灯のほの暗さ
波止場の沖の霧笛

島へ渡る連絡船の
最終便が出たあとの
うら淋しい
夜の波止場

瓦斯灯のほの暗さ
遙かな灯台の霧笛

夜の霧
マッチ擦る暇なく
うらぶれたホテルのドアを押すと
ベースが唸りドラムが地を叩く
ピアノが泣きサックスが咽ぶ
ヴォーカルは物語る

瓦斯灯のほの暗さ
波止場の霧の深さ


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1 コメント

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裕次郎、寺山… ()
2009-04-05 00:23:51
 石原裕次郎の「夜霧よ今夜も有り難う」なんて言っても、当然の前提ではなくなっているかもしれない。
 寺山修司のかの短歌「マッチ擦るつかのま海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや」(表記いい加減)も。
 鮎川信夫の「繋船ホテルの朝の歌」も遠くで響いているつもり。
 横浜に気仙沼を重ねるということでもある。
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