蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演「ISHIN version.2024」

NPO法人劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演
タイトル 『ISHIN ~狼たちは最果てに~ version.2024』
脚本・演出 青木由里
出演 青木賢治/栗生みな/村松沙理亜/清水まなぶ/井田亜彩実/導星ゆな 他

日時 2022年9月8日(日)11:00~/15:30~
会場 飯山市文化交流館 なちゅら 大ホール
チケット予約フォーム:https://www.quartet-online.net/ticket/ishin2024

皆さまへ感謝を込めて晴れやかに開催‼
どうぞお楽しみに‼

新生“夢幻工房”に向けて

2015年12月09日 23時15分21秒 | 日記
今月末、劇団員・塚田健太郎君が退団する運びとなった。

彼は私の次に古株。
もっちゃんも同時期に入団したけど
一度退団して再入団したので
健太郎君が一番の古株である。

入団したのは13年前の秋―
彼は、オープンエアシアター2002「KAGUYA」に
一般参加者として出演し
野外の規模の大きさに感動して入団。

入団当初は、私とはあまり話す機会がなかった。

うーん…というか…
どちらかというと劇団員と
距離を置いていた気がするな~
稽古が終わるとさーっと消えると言う感じ。
雑談すらあまりした覚えがない。
なので、他の団員にとっても
どんな人なのか何を考えているか
わからない存在だった(笑)

2007年頃、健太郎君と同期のメンバーが退団し
一時的に団員が減った時期があり
ようやくポツリポツリと話すようになった。

役者としては、2008年の「IHSIN」では準主役
それ以降は、準主役か主役というポジション。

 オレには下積みがない
 下積み経験は必要だ

と、ある時期からよく言うようになった。

あ、最初っから思っていたのかもしれないけど
何しろ喋ったことが殆どなかったので(笑)

私は、下積み経験あり。

16歳から2年間、劇団東俳の舞台稽古の時
端役だっため、ひたすら体育座りで
稽古見学をし続けた。
そして3年目に主役に抜擢していただき
以降、劇団の中核として劇団を盛り上げ
後輩の指導も行うようになった。

東俳の4年間は、私の演劇人生の
土台作りだったように思う。

稽古後は必ず演出の先生と一緒に
お茶をしたりお酒を飲みに行って
女優になるために必要なことを聞いたり
読むべき本のタイトルやジャンルを伺って
それを片っ端から読み漁った。
演劇も出来るだけ上質な舞台を見るように心がけ…
貧乏生活だったので、チケット料金の
工面がすっごく大変だったけど
当時観劇した舞台は、今でもよく覚えている。

劇団仲間とは演技論・演劇論を戦わせ
時には大げんかをすることもあった。

一晩中、飲んで語って、朝寝ずに
アルバイトに行く生活―

東京の演劇人は今でもそんな感じ?

長野市はみんな車移動なので
お酒を飲むのは一年に数回?

環境が違うから―と思うものの
もっとコミュニケーションを取れる環境が整えば
もっと凄い何かが出来そうな気がするんだよね―

と思いつつ、今に至る。

健太郎君の話に戻そう。

2007年頃から健太郎君は大道具チーフになったが
当時は舞台屋さんに叱られることもシバシバだった。

舞台を踏むたびに仕事を覚えていき
3年を過ぎる頃から徐々に板に付き始め
今では頼りになる大道具担当となった。

裏方面は、他に劇団の要である制作を担当。
パソコンが苦手で、相当大変だったようだが
今では書類作成もサクサクできるようになった。
二カ月に1度発行する会報「夢幻」も担当。
会報発行当初は、全ての原稿チェックをしていたが
健太郎君に「任せてほしい」と言われ
それ以降は、全て一任。
会報は、今年4月からもっちゃんが担当している。

一任=放置

ではないはずだが、報告・相談・連絡が
上手くいかないと一任と言う名の
“無責任”になってしまう場合もある。

「ほうれんそう」の難しさを痛感。

人を育てるとは?と自問自答しながら
自分とは異なる考えや価値観を
持った人たちを観察しながら考え続けた。

今の時点での結論は2つ。

①教え過ぎない
②やる気エネルギー量の増加

①は教える側の問題

良い加減というのがある。
これも人によって違い
全員一律とはいかないので
一人一人よく観察し
状態を見極める必要がある。

②は教えを乞う側の問題

本人が

 成長したい
 上を目指したい
 目標を達成したい

という気持ちや目標・ビジョンが有る人であれば
どんなことでも、自分の肥やしにして
どんどん成長していくということ。

教え方の問題以前に
教えを乞う側の心持ち次第であることは
どうやら間違いなさそうだ。

要するに―

自分がやりたいと思えば
いくらでもエネルギーが出るが
そうでなければ、義務となり
億劫になり、やる気も失せる。

この世の中さぁ
やりたいことだけをやっている人なんて
そんなにいないんじゃないかな~

仕事というものは、どちらかというと任務。
任務は、やりたかろうがやりたくなかろうが
きちんとやらねばなりませぬ。

だとしたらその任務の中に、自分がやりたいことや
興味があることを発見してみたらどうだろう。
きっと俄然やる気が湧いてきて
大いに成長すること間違いなし♪

これ誰でも出来そうに思うんだけど
どうかな.。o○

健太郎君の場合、ある時期から
どちらかというと、この任務の感覚で
活動を継続してきたように思う。
もちろん、興味のあることを見つけながら―
副理事長という責任ある立場でもあるから
当然と言えば当然だが。

その彼がようやく自分のやりたいことを
見つけたという。
これは喜ぶべきことだ。

で、何度も話し合い、夢幻の劇団員として
彼のやりたいことをやれる道はないかと探したが
現状それは厳しくその他の道も模索するも
最終的に退団を選択することとなった。

残念だけど、これまで苦楽を共にしてきた
健太郎君の旅立ちを祝福したいと思う。

今後、良き関係を築けるように
私も努力していきたいと考えている。

有難いことに劇団員たちはやる気十分。

これは、もしかしたら良い転換期かもしれない。

明年は、新生“夢幻工房”として
もう一段階高いステージを目指して
精一杯取り組んでいきたいと思っている。

そして今、あることを密かに検討中―
更に別件で、一つの企画も思案しているところ―
いずれBlogに綴りますので、それまでお待ちください(^^)

合同公演の稽古も始まり、またまた
タイトなスケジュールになりつつある。

けど、全部やりきる!

今を精一杯大切に生きることが
今の私に出来ること―

観劇2本♪ ~in 東京~

2015年12月09日 14時51分33秒 | 日記
結婚式が終わり、新小岩の妹の家に宿泊させてもらった。
私のために新しい寝具を用意してくれた妹に感謝(^^)
寝心地が良く、朝までぐっすり眠れた。

朝食も妹が用意してくれて
上げ膳据え膳♪
久しぶりにのんびりしたひと時♪♪
ありがとう~~

妹も一緒に観劇したいというので
お昼前に出発し、総武線で錦糸町へ向かう。

先々週から何を観劇しようか悩み
最終的に決めたのは下記の2本。

 劇団桟敷童子「泳ぐ機関車」
 ナイロン100℃「消失」

マチネは桟敷童子。

「泳ぐ機関車」は劇団の代表作のようだ。

演出の東憲司氏の原点である炭鉱三部作の最終章とのこと。

この劇団、以前から気になっていた。

なぜ気になっていたかというと
桟敷童子さんのプロフィールをお読みになれば
ご理解いただけるかと思う。

劇団桟敷童子プロフィール
 1999年秋に結成。
 劇団名「桟敷童子」は、日本に古くから伝わる魔物
 「ざしきわらし」から命名。
 子供にしか見えないという「ざしきわらし」だが
 大人でも純粋な心を持った者は遭遇する事ができるのだという。
 しかし、劇団桟敷童子では、何より
 自分達自身が純粋な信念で芝居をつくり
 「劇場を訪れる全ての人々に見え、そして
 全ての人々の心に存在すること」を目指す。
 劇団桟敷童子では、自分達の追い求める風景を
 実現させるために空間を選び
 更に一週間から半月ほどの時間を費やし
 劇団員が舞台セットをつくる。
 その舞台・音響・照明の三位一体となった美しさ
 そしてパワー溢れる役者陣の演技には定評がある
 〈以上、劇団桟敷童子HPより〉

結成年が夢幻工房と同じで
活動理念・展開も似ているのだ。
異なるのは、数々の賞を受賞しているところ〈汗〉

この炭鉱三部作も下記の賞を受賞している。

第20回 読売演劇大賞・優秀演出家賞受賞
第47回 紀伊國屋演劇賞・個人賞受賞
第16回 鶴屋南北戯曲賞受賞
第1回 すみだパーク演劇賞受賞

ということで、夢幻工房の原点を振り返る意味でも
一度は見ておきたいと思い、観劇することにした。

劇場は「すみだパークスタジオ」
倉庫会社が作ったスタジオのようで
まるで空き倉庫のような雰囲気。

空き倉庫に、ステージや客席を組み込むのは
非常に大変だけど、ここは既に客席はあり
ある程度の設備があるようで
何もないところから組み込むよりは
はるかに楽だよね。

JRの駅から徒歩圏内で
スタジオの客席は167席
スタジオに隣接しているロビーは
木がふんだんに使われレトロな雰囲気で
カフェも兼ねている。

いいよね~こういう空間…

メイクをした役者陣が受付スタッフをしていて
声が通るせいか、賑やかな雰囲気♪

劇場でケンジも合流し、3人で観劇した。

想像どおり、舞台セットが凄かった~
こだわりをヒシヒシと感じる。
特に最後に現れたホリゾントいっぱいの向日葵と
超特大の蒸気機関車には驚いた。

ステージを全て埋めつくすほどの大きさの機関車!
いったいどこに隠してあったのか…

役者陣も鍛え抜かれていて達者な演技。
全員が一定のテンションを保ち
言葉も感情も観客に伝わってくる。

東さんは、新宿梁山泊で9年間活動し
一度色々なことを精算しないとダメだな…
と思った時に、同様の考えを持った仲間がいて
その仲間と梁山泊を退団して
先に退団し、唐組に移籍した元団員たちと共に
劇団桟敷童子を結成したとか。

やっぱり10年って節目だよね。
見直すには良い時期。

けど、母体の梁山泊は大変だったかもね…

東さん曰く―
当時は落ちこぼれが集まった集団だったとか。
中心者を支える役割を担ったメンバーが
集まったんじゃないかと、勝手に想像。
下積みを経験した人たちは
ちょっとしたことではヘコタレナイ根性がある。
しかも演劇が好き、表現したい舞台人の集まりだ。
死に物狂いのパワーは底知れない。

脚本は、劇団員全員で考え
東さんが3分の1程度を執筆し
全員で書き上げると言う形態。
それは今でも続行中のようだ。

なので脚本家名は「サジキドウジ」と記載されている。
 
にしても…

椿組の芝居とやたら似ているなぁ…

と思い、観劇後に確認して知ったのだが
昨夏観劇した花園神社で上演された野外劇
椿組の「廃墟のくじら」の作・演出も東さんだった。

アホか、私…
全く認識せずに観てしまった。。

あまりにも構造と脚本、演出が似ていたので

 ???

となって、作・演出を確認して分かったという…
とんだ落ち度(^_^;)

けど、昨夏の感動を思い出したー
空間に飛び散る役者のエネルギー
舞台美術から放たれる念のような空気
舞台に関わる人々の思いが凝縮された舞台―

生活は大変なはず。
それでも劇団員として15名が在席し
真摯に誠実に舞台を製作している。

それが凄いことだと心から思う。

夢幻も同様の志を持って旗揚げし
社会性のある劇団になるべく法人化

私自身も劇団員もまだまだ発展途上
だからこそノビシロがあるし
もっと面白い何かが出来る!

桟敷童子さんは、この炭鉱三部作を一区切りにして
来年から更に上のステージを目指していくそうだ。

夢幻も今年を一区切りにして
新たな展開をしていきたいと思っている。

やはり観に来て良かった―

私にとって観劇はリフレッシュでもあり
自分と夢幻工房を振り返る機会でもある。
しっかりと原点回帰が出来たので
新たな気持ちで明年に向かうことが出来そうだ。

終演後、3人でご飯を食べて、妹と別れ
ケンジと私は下北沢へ向かった。

夜の部は、ナイロン100℃の「消失」
会場は本多劇場。

主宰・作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の作品は
DVDで何本か観たことがあるものの、生で見るのは初めて。

今年に入ってDVDで「わが闇」を観て感動。
近いうちに劇場で観たいと思っていた。

その『わが闇』と並んで、KERA最高傑作との
呼び声が高い芝居を観劇できるということで
ワクワクしながら小劇場の代名詞「下北沢」へ向かう。

私自身、東京時代はアングラ系があまり好きでなくて
下北沢ブームに乗り損ね、下北沢にも
一度しか足を運んだことがない。

なぜ好きじゃなかったかというと…

最初に観たアングラ芝居があまりにも自己満の舞台だったので
二度と観たくないと思っちゃったんだよね。

あの時、唐組や寺山さんの舞台を観ていたら
もしかしたらアングラにはまっていたかも…

長野に来てから唐組のテント芝居を観て衝撃を受け
もっと早く観ておくべきだったと後悔したっけ。

最初に観る芝居は選んだほうがいいね(^_^;)

本多劇場は1983年に杮落しをして今年で33年目。
この8月に初めて改装工事を行い
会場内の座席・床面すべてを新調したそうだ。

座席は中央の後ろから二列目だったが。
傾斜角度があるため、どこにいても見易い。
ステージも近く感じる。

傾斜角度って大事だよね。
長野市芸術館はどうなっているのか…
先日新聞記事で大ホールの二階席に
見づらい席があるというのを読んだ。

これだけホールが乱立していて
検証済みなはずなのに
なぜそんなことが起きるのか
私には理解しかねる。。

ホールの目的はなんぞや??

目的を忘れていたとしか思えんね。

話を戻そう(^_^;)

ケラ氏の最高傑作の一つだと言う「消失」

なんというか…飛び方が凄かった。
ケラさんの才能があちらこちらに煌めいていて
役者陣も当然のことながら演技力があり
見応えがあった………はずなんだ………

ラストの演出も面白かった!
アレを考えつくケラ氏は流石だ。

けど…なんだろう、このもやもや感……

救いようがない芝居という意味では
野田秀樹氏の「THE BEE」もそうだったが
あの作品とは後味が違う。

「なぜ」と思う部分は観客の想像に
委ねているということなのか…

観終わって、たくさんの疑問が残った。

桟敷童子の芝居とは真逆かも。

うーむ…

「わが闇」を観た時は胸にストンと落ちたんだよね。
けど、今回はそれを感じられなかった。

どうしようもない消失感でも良かったんだけど…

役者は良いし、演出も面白い。
だとすると、戯曲か…

うーん…演技がパターン化してるように感じたせい?
それとも、私が疲れていたせい?

………

芝居は生モノであり生き物だ。
演じる側の状態、観る側の状態によっても変化する。

これは戯曲を読んで検証したほうが良いかな…

観客の想像に委ねるというのは
非常に大切なことの一つで
執筆する時に悩む部分でもある。

引っかかっているのは、多分そこ…

観客に何を想像してもらいたいか…
想像することがどこへ繋がるのか…

そう思う私自身が、既に
ケラさんの術中にはまっているのかも〈笑〉

終演後、大宮に駐車してある車を取りに行き
ラーメンを食べて、途中で仮眠して
長野に帰ったのは明け方―

実に中身の濃い2日間でした(^^)