ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

われのあかし

2018-06-04 04:19:30 | 短歌





着重ねて 見えぬとしたき おもひでの われのあかしを わが影に見る





*記憶の中に消したいものがある人間というのは、たくさんいることでしょう。

人生とは失敗の連続ですから、馬鹿なことを全くしたことのないものなどいない。何も知らなかった子供の時にしたことすら、一生忘れられないことがある。

馬鹿なことをしたのが自分であることが苦しい。それなら、それをとりもどすためにそれなりのことをすればよいのだが、サボリ癖のある人間はそんなことすらせずに、怠惰な忘却の中に逃げる。

酒でも飲んで憂さを晴らせばいいなどとね。しかしそれで記憶は消えはしない。ことあるごとによみがえってきて自分を苦しめる。そのたびに酒が深くなり、人生がどんどん暗い方に流れていく。

いろいろなものを自分に着せ重ねて、見えないものにしたい記憶の中にある、それが自分のしたことだというあかしを、人はいつも自分の影に見る。

それは永遠に消えはしないのだ。

まじめにやっていればいいものを、ついいやなことをして自分にいい目を見さそうとして、みっともない失敗をしてしまったなどということは、たいていの人が経験しているものだ。しかしそれから逃げて自分をごまかし始めると、長い苦しみが始まる。

自分が悪いのではない、他の誰かが悪いのだにしてしまい、人に嫌なことばかりするようになり、どんどん嫌な記憶が増殖していく。そしてしまいには、悪いことをする方が正しいのだにしたくなる。逃げている限り延々と続いていく負のスパイラル。

何もかもは、自分がいやなものになるのがいやだ、から始まったのだ。神のように真っ白でありたい。それなら何も苦しまずに済む。そのために、自分の影を見るあらゆるものを馬鹿にする。とりもどすための痛い苦労などしたくはない。

人間の闇は深いが、根底にあるものはいかにも簡単だ。

何もしたくはない、という、凡庸と怠惰の、自分の癖なのです。






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