80にもなる爺さんが、若い男性歌手に魅かれる。
そう公言すれば、「なんとまあ」とあきれられるに決まっている。
僕だって、同じ年配の知人がそんなことを言おうものなら、
大声上げて笑い倒すかもしれない。
でも、人を好きになるのに何の理屈が要るだろうか。
そんなもの何もないはずだ。
男女を問わず、年齢がどうであろうともだ。
と、こう書けば「少しおかしくなってきたのではないか。心配だな」
と気を遣わせかねない。そうだろうと思う。だが、心配ご無用。
どこかの宗教団体みたいに
全財産をはたいて(と言ってもはたくほどのものはないが)、
入れ込むようなことはしない。
それほどの分別はまだ持ち合わせている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/94/7a3a6a96c259ed613f16fb0bcd716832.png)
さて、その男性歌手だが藤井風という。
いわゆるシンガーソングライターで、岡山県出身の25歳。
実は、彼を知ったのはつい最近、年末のことだ。
さして興味を引く番組がなく、テレビのチャンネルをあっち回し、
こっち回ししていたらNHKの特番に行き当たった。
『死ぬのがいいわ』なんて妙な、そしてドキッとするような
タイトルをつけた曲が世界的にヒットしているとかで、
「へぇー」とそのまま見ていたら、ぐぐっーと来てしまった。
あまり聞きなれない斬新なメロディに、ユニークな歌詞。
ピアノもうまい。
さらに、その容姿。背丈があり、スマートで顔も良い。
着ているものは作務衣みたいな、あるいはパジャマかと
見紛うようなものをゆったりと着けている。
話し方がまた面白い。
自分のことを「わし」と言ったり、方言丸出しなのだ。
とにかく、何から何まで個性的で、
似たり寄ったりのアイドル系グループが
〝占拠〟しているかのような紅白歌合戦において、
その存在感は圧倒的だった。ひいき目に見ての話だが。
そんな他愛ない思いが、頭の中をぐるぐると巡っている時、
50を過ぎた長女がやって来て
「あら、お父さんもなの」なんて言うものだから、ぎくっとなった。
「そんなお爺ちゃんがみっともない。やめなさいよ」
てっきりそう言われるものだとばかり思っていたら違った。
「私も大好きなのよ。風君 いいわよねー」と言うではないか。
「そうだろう。そうだよね。いいよね」と気分を良くしたら、
続けて「うちの○○君に姿かたちはもちろん雰囲気まで、
何から何までそっくりなんだもん。いとおしくなっちゃう」
と自分の長男(言うまでもなく僕の孫)の名を出しながら、
「この歌もいいでしょう」スマホをこちらに向ける。
突然「はっ」となった。
あるいは僕の頭の中も孫息子と風君のイメージが
ごっちゃに重なり合って駆け巡っているのではないか。
きっとそうに違いない。
まさに、その時、当の孫息子が
「こんにちは」と軽やかにやって来た。
思わず「よお 風君」と声をかけてしまった。
すると、彼はにっと笑って応えたのである。
やっぱり好きだなあ。可愛いなあ。
で風君を見る日々です。