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2つ違いの兄が、50を待たず独り身のまま他界したのはいつだったか。
「○○叔父さんの命日、分かりますか」
長崎の姪からの、突然のLINEはそれを尋ねるものだった。
「先日、父の墓参りに行き、墓石を見たら
叔父さんの命日だけが記されていないんですよ」
「えっ、おかしいな。ちゃんと刻まれていたはずなんだがね」
「それが、どう探してもないんです。
一人だけ、寂しいじゃありませんか。
命日が分かれば、お参りもしてあげようと……」
長崎にある当家の墓には、両親はもちろん、
姪の父親である長男、次女の姉、
それに三男のこの兄も入っているのだ。
姪は自分の父の墓参りに行き、墓石に刻まれた
それぞれの命日をなぞっていて叔父のだけがないのに気付き、
なぜだろうと思ったらしい。
「分かりますか。分かれば、ちゃんと
刻んであげたいと思っているんです」
だが、「ありがとう」と言ったきり次が出てこなかった。
「平成4年」だったことははっきり覚えている。
それなのに月日をどうしても思い出せないのである。
「年始め、1月か2月だったように思うんだけどね。
確か何かに控えていたはずだ。調べて分かり次第連絡するよ」
そう請け合ったのだが、探せどもそれが見つからないのである。
他に分かる人といえば、ただ一人、いちばん上の姉がいる。
だが、あいにく長年の闘病生活中だ。
兄の命日を聞くなんて、とても無理だろう。
何としても控えたものを探し出さなければ——
身内の、それも年が近く小さい頃からいつも
一緒に遊んでいた兄の命日を覚えていないなんて。
恥じ入り、情けない思いをしながら半月ほど経ってしまった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/8a/28c27cc2e08b38a23163cb7989e04e34.jpg)
「叔父さんの命日、刻んでありました。
雨風ですっかり痛み、消えかかっていたんですよ」
姪の今度のLINEは、私の心をほんの少し軽くしてくれた。
「平成四年に間違いありませんでした。
月日はよく分からなかったのですが、
今度業者さんにきれいにしてもらいますから、
大丈夫、分かるでしょう。また連絡します」
「ありがとう、ありがとう、ありがとう」
許せない自分をなだめつつ、震える指先で返信した。
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